いかにもものものしいタイトルが付けられているが、東海道物の一つで、斎藤英笑という人の作である。
この作品は他の東海道物のように宿駅ごとを一枚に描くのではなく、数駅をまとめて一枚の中に収めた全十二図からなる一種の絵巻物のような連続画になっていて、そのため一枚の図柄は通常の二枚分を横につなげた細長い画になっている。これは見開きの状態で一図を見られるためだから、通常の袋とじ和本のように糸で綴じたのではなく絵を内側に折って貼り合わせたもののようである。従って豆本でもこの本だけは糸は一切使っていない、私としては初めての作品である。
図は第一図の日本橋から戸塚までの画で、画には各宿駅を詠みこんだ数種の狂歌が記されている。
例えば、左下の駕籠に乗った旅人のところでは
乗り心地よき ほどが谷 の棒ばなに
転ばぬ先 とつか す息杖
戸塚はいささか苦しいが、保土谷と戸塚が詠み込まれている。