シリーズになっている錦絵は、もちろん枚数はいろいろであるから、豆本一冊に一つのシリーズとはかぎらず、二、三作品の物は結構ある。
以前にも述べた厚さと丁数の関係から、私の豆本の場合、本文は40ページ3丁の物が最も薄いもので、これまででは一冊しかない。次の物で4丁56ページ以上だから「○○十景」「○○三十六景」などという作品ではどうしても他の作品と組み合わせる必要があるからである。北斎の「富嶽三十六景」は実際には裏富士などの景が入って四十六景であるもののやはり少し足りないので、作品まるまるではないが「富嶽百景」から10図足してページ合わせをしている。だから私の錦絵関係の豆本は現在70冊ほどだが、個々の作品としては百作品余になっている。
いきなり本筋からそれてしまったが、この「旧跡尽し」もそんなページ合わせの作品の一つであって、10図ほどの小さな作品である。江戸の名所風景というより、地名の由来や、ゆかりの伝説の光景を描いたものである。
「伊勢物語」業平東下り、都鳥の歌の話と、太田道灌、山吹の歌の話である。