この豆本には標記二作品のほかに、「賢女八景」という作品も収めてある。古今名婦伝は豊国、賢女二作は国芳である。
いずれも、静御前とか、清少納言、加賀の千代など有名な女性、優れた才女をあつめたもので、いずれの作にもとりあげられている上記のような著名な者も当然いる。
ところで上の女性もその一人で「下女お初」・豊国、「婢お初」・国芳という。もちろん私はしらなかったのだが、歌舞伎の好きな方ならすぐにおわかりで、上記のような女性にまじって取り上げられるくらいだから、当時はよほど有名だったらしい。
その話が実話なのか創作なのかわたしは分らないが、その芝居「加賀見山旧錦絵」というのは、自分の仕える尾上というお局が岩藤という朋輩から辱めを受けて自害したので、その仇を討って潔く自首したことが、却って藩侯のお褒めにあずかり、その尾上の名跡を授けられるという筋である。おんな忠臣蔵として女の闘争、女の仇討の著名な出し物だそうである。江戸の人達は、このような話はよほど好きだったらしい。