これも、今後絶対に纏まった形での出版は考えられない書である。
なにしろ現在では考えられない、遊女三十六人の評判記なのだから。
遊女花魁とはいっても多くは、人格、詩歌俳諧などの教養にすぐれていて、ある者はは老母のために親孝行を怠らないとか、身体障害の人達に寄進をするなどといった美談などが述べられている。
ただ分らないのは、自分の情人のために嫌いな金持ちの客を騙して金を巻き上げ、結果として自分も愛人も殺されてしまうというようなのは、和歌に堪能であろうとほかがどうだろうとたんなる悪女にすぎないと思うのだが、江戸人にとっては名妓なのだろうかということである。右図は、その八橋なる花魁。