オーケストラの語源から始まるこの本、オーケストラが貴族・教会から離れて市民のものになっていく過程が描かれている。
18世紀、19世紀初頭のオーケストラは、宮廷のカペレのように宮廷のための音楽を演奏するのが一般的。この状況を変えるきっかけが、ベートーヴェンという。
もともと、オペラの序曲だった交響曲は、ぶつ切りで演奏する当時の習慣を、『運命』や『田園』では、楽章が続けて演奏あれ、楽章を旋律で有機的に構成する工夫がされたという。だが、ベートーヴェンの考えのようにはなかなか、すすまず、「第九」も第4楽章がカットされて演奏されることもしばしばと。
これが、徐々に交響曲を主体として演奏会が開かるようになってきたと。「1842年に誕生したウィーン・フィルの場合、『ベートーヴェンの交響曲を理想的な形で演奏する』ことを創立理念の一つに掲げたという」「19世紀から20世紀にかけて誕生したオーケストラの多くが『○○交響楽団』を名乗るようになったのも、ある意味、当然のこと」
オーケストラのあり方を変えたワーグナー、日本のオーケストラなど、オーケストラの発展を眺めている。
「オーケストラの文明史 ヨーロッパ三千年の夢」
春秋社発行 著者:小宮正安 2200円