「心の詩」の中の「流れ」の元の歌は「岩が」。
勿論、どちらがいいというものではない。
岩が
岩が しぶきをあげ
流れに逆らつていた。
岩の横を 川上ヘ
強靱な尾をもつた魚が 力強く
ひっそりと 泳いですぎた。
逆らうにしても
それぞれに特有な
そして精いっぱいな
仕方があるもの。
魚が岩を憐れんだり
岩が魚を卑しめたりしないのが
いかにも爽やかだ。
流れは豊かに
むしろ 卑屈なものたちを
押し流していた。
流 れ
岩が しぶきを あげていた
深みを渡る 馬のよう
青い流れを噛みながら
ひとつところに 阻(はば)まれて
魚(うお)が ひっそり 遡(さかのぼ)る
岩のほとりを 川上へ
強靭(きょうじん)な尾で 水を蹴り
速い流れを 貫いて
岩が しぶきを あげていた
あきらめ知らぬ 馬のよう
魚が するどく 遡る
強靭な尾で 水を蹴り
逆らうにしても それぞれに
精一杯な仕方がある
凛々(りり)しい魚は 遡る
無骨な岩は 水を噛む
魚は岩を いやしめず
岩は魚を おとしめず
青い流れを送り迎え
それがいかにも爽やかだ
流れは 豊かに 大らかに
むしろ卑屈なものたちを
押し流していた 川下へ
押し流していた 川下へ