いい演奏を聴かせてくれる小川典子さんがスコットランドのピアニストの本を翻訳したとある新聞の書評欄に書かれていたので、早速手に入れる。
読んでいるうちに、小川さんが書かれた本かと錯覚する。英国の人とは思えない日本的な味のある翻訳。
「楽譜を見たら、そこに流れる音楽の呼吸(パルス)を、まず読みとることにしよう。そうでなければ、音楽に息が吹きこまれなくなる。」
「文章に、楽譜のような『表音記号』がついていたら、どんなに便利だろう。」音楽家でなくては、考えつかないことか。
若い世代の音楽家が楽譜を見ながら演奏しているのを見て、「楽譜を見ないで弾くという、その重圧からいよいよ解き放たれるときがきたのかもしれないと思うと、感慨深い。」だが、ピアニストが暗譜で演奏することがあたりまえになったのはごく最近という。
「話の内容と話のしかた。このふたつがバラバラに作用すrと、起承転結のリズムがたちまちおかしくなる。退屈で、平坦で、ジョージ・W・ブッシュがそうであったように、心のこもらない話になってしまうのだ。・・もっともブッシュの場合は、読み上げている原稿の内容を、彼自身が理解していなかったのだが。」
心あたたまる本だ。
「静けさの中から ピアニストの四季」
スーザン・トムズ(Susan Tomes)著
小川典子 訳