ふむ道,小道,数多く

趣味いろいろ。2014/9に別ブログを合体したので、渾然一体となってしまいました(笑)

Murder Most Holy : 雑談

2008-04-19 10:18:35 | Athelstan・Doherty
さて,今回いろいろ難しい事が多かったので,アセルスタンの所属する世界を,もうちょっと勉強してみましょう。英語版のWikipediaは既に紹介しましたが,今日はなるべく日本語で。まず彼の所属するドミニコ会とはこういう組織でございます。1206年にカスティリアのスペイン人ドミニクス・デ・グスマンによって創設。(これはまた,ますますアルカサルとの関係が深まりそうで。。(^^))本の中でヒルデガードという女性の名前が出てきて,百数十年前の人と言われていましたが,彼女は創設間もない頃の修道女という事ですね。日本に伝わったのは,ザビエルがキリスト教を始めて伝えてから約半世紀後の事で,隠れキリシタンの間でも密かに受け継がれて来たの言うので,日本でも,その名を冠する学校があったり,大変伝統のある会派ですね。

ドミニコ会の大きな特徴は,神学の勉強が盛んで,学者を多く輩出し,中世の異端審問で,大きな役割を果たしたという事です。「正統信仰に反する教えを持つ疑いを受けた者を裁判するために設けられたシステム」という事ですから,まさに今回の本の話題ですね。この時代に近い所で有名な尋問官は,14世紀前半のフランス人のドミニコ会士ベルナール・ギーだそうです。間違った考えを持ったというだけで,死刑になる事もあったので,相当恐ろしいシステムですね。ちなみに尋問官は,英語でInquisitorと言いますが,この言葉,原書でファンタジーを読む人には相当お馴染みですよね。最近最も有名なのは,ドローレス・アンブリッジ(笑)ですね。

そしてもう1つ托鉢修道会であるという事。よく聞く言葉ですが,何のこっちゃと思ったら,私有財産を禁止しているんですね。ああ~なるほどね,これは今回の本の最後の方のアセルスタンの言動を理解するのに重要な概念ですね。

ドミニコ会に所属した有名人(私でも知ってる(^^;))は,13世紀の神学者トマス・アクィナス,彼の名は,アセルスタンがヒルデガードの資料を捜して本をあさっていた時にも出てきました。そして,15世紀のイタリアで活躍し,チェーザレ・ボルジアにも関わってくるサヴォナローラ。(ほほ~彼もそうでしたか!)

で,私は今回もう1つ脳細胞が?印に変形して困った事が。。(笑) 例の,「ブラックフライヤーズ修道院がいつの間にかロンドン中心部の地名に化けていた」事件(爆)で,「最初近くにあるセント・ポール大聖堂にちなんで名付けられた駅が,ブラックフライヤーズに改名した」と聞いてうっかり混同しそうになったのが,英国国教会。ドミニク派とは決して「=」ではないのでご注意を。そして,これを読んだら,ついでにもう1つ,長年の悩み(^^;)が解決されました。英国国教会はプロテスタントとも「=」ではないそうです。そうそう,以前C.S.ルイスに関する本を読んで,何故彼は結婚するのに大変な思いをしたのかという。。

ところで,アセルスタンの猫,ボナベンチャーの名は,実はライバル?(^^;)フランシスコ会の聖人ボナヴェントゥラから来ているんですね。こういう,会派に捉われない所は,アセルスタンの性格が現れていますね。

追記:アルカサル-王城の13巻をチェックしてみたら,こちらの登場人物達も,ちょうどこの時に大きな転機を迎えていた事がわかりました。実はこの本の最初の事件が起きる僅か2日前の,1379年5月29日に,エンリケ・デ・トラスタマラが亡くなっていたんですね。


Murder Most Holy : Chapter 14 と感想

2008-04-19 03:12:29 | Athelstan・Doherty
14章のお話は推理の核心なんで殆ど書けません(^^;)が,最後にちょっといい話。

その1:アセルスタンは,弟と両親の死の責任を負って,サザクの貧しい教会に飛ばされたのですが,晴れて許されてブラックフライヤーズ修道院に戻れる事になりました。でも。。。戻るわけありませんよね~,まだ少なくても7冊残っているのに。(笑)

その2:アセルスタンは,誰もいなくなった実家の土地を売って得た利益を,修道院に預けていたのですが,賭けに負けた場合に備えて,そのお金を担保に1000クラウン借りる許可を修道院長からもらい,銀行に手紙を書いてもらっていたんですね。

その3:ハドルが描いたキリスト生誕の絵の登場人物が,アセルスタン,ベネディクタ,クランストンを始め,皆近所の人に顔になっていた事。中でも生まれたばかりのキリストとヨハネが,クランストンの2人のベビーだった(爆)

という事で感想です。
今回の本,今まで読んだ中でも最高に面白かったです。シリーズ物は,3巻~5巻が傑作な事が多いようですが,このシリーズもお約束通り,ですね。中でも,今まで以上にアセルスタンの過去が明らかになり,ベネディクタとの関係が進み(^^;),クランストン譲りの言葉も使っていたし(笑),大立ち回りは見られたし(爆),クランストンも双子の息子ができて絶好調だし,ボナはクランストンに似てきたし(笑),何と言っても細かい所まで,よく筆?が滑る滑る。(爆) アセルスタンと檀家さん達の関係も,いよいよ本物になってきたし。中世のロンドンの汚さまで絶好調。(笑) そして最後の,上の3つですね。という事で,とてもとても愛着が沸いてきましたよ,このシリーズ。

次も面白いといいなあ。
ただ,またしばらくこのシリーズはお休みです。また次を読める日まで。。。


Murder Most Holy : Chapter 13

2008-04-19 03:09:18 | Athelstan・Doherty
あと2章です。
予想と違って,先に緋色の部屋の謎解きです。クランストンとアセルスタンは,サボイ宮殿へ。若きリチャード王,叔父のランカスター公,クレモナ公の前で,クランストンは前日アセルスタンと打ち合わせした通り?(多分)にお話します。私,わかったと言いましたが,私の考えたのとは全然違う答えだわ~。(笑)
そして,ついに1000クラウンはクランストンへ。彼はアセルスタンが解いたのだから,と言うと,アセルスタンは,何故自分がそのような物を!?と断ります。息子さん達を,オックスフォードかケンブリッジに行かせなきゃ! ところがそれに大してクランストンの言う事ったら「いや,奴らはドミニク派の僧にするんだ!」(爆)

以前,チェーザレ・ボルジア関連本を読んだ時に知ったのですが,中世のヨーロッパでは,良家の男子は,兄弟の何番目(多分長男)は僧職,何番目(多分次男)は軍人,何番目は‥と,決まっていたのだそう。ボルジア家も,お父さんがローマ法王だからというわけではなく,それが流儀だったから,長男のチェーザレが僧職を目指し,弟が軍関係の仕事をしていたと書かれていたと書かれていました。これって結構印象に残っていたんですよ。だから,アセルスタンの生い立ちを聞いた時も,ああそうなんだなあ,と。ただ,2人兄弟だから軍職は取らず,弟が家を継ぐはずだったんだと思います。クランストン家の双子君は,どちらかが僧になり,どちらかがお父さんの職を継ぐのでしょうかねえ?

その夜,クランストンは大盤振る舞いの末,自宅の床(爆)で爆睡。アセルスタンは,頼んでいた物が届いていたのでチェック。これでどうやら,最後の謎が解けたようです。


Murder Most Holy : Chapter 12

2008-04-19 00:28:12 | Athelstan・Doherty
あと3章で終りなのに,アセルスタンは,のんびり檀家さんの懺悔を楽しんでおります。そう言えば緋色の部屋の謎も解いたようだし,もう犯人の目星は付いているのでしょうか。特に子供の懺悔は楽しいそうです。(子供もそんな事するのね,大変ですね,キリスト教の世界。。)例えば,タブの娘はパイクの息子にキスを許した事を告白したのですが,緊張のあまり,「神父さま,祝福を下さい。」と言うべき所を,「神父さま,キスして下さい。」と言ってしまったり(^^;)とか,クリムに至っては,たまねぎ嫌いを告白した後,「ぼくは,密通をしてしまいました。」しかしさすがのアセルスタンも,これには超~びっくり。「密通って何の事だかわかっているの?」「とても汚い事です。」「一体何があったのか,話してみなさい。」「おしっこです。」「それが何故密通なの? 皆外でしてるだろ?」(男め!(^^;))「神聖な場所でしました。」「ええ?教会で?」「いえ,あのう。。。あなたの家の裏の,たまねぎ畑でしました。」

(コメントなし)^o^;

次にベネディクタがやってきました。彼女は,実は,夫が生きているかもしれなかった時,ちょっと悲しかったと言います。「他の人が好きなのです。時々押さえられなくなるのです。」アセルスタンは,「誰かを好きになるのは罪ではありません。」と平然と答えますが,彼女が去った後,壊れちゃいます。(^^;) 愛って怖い!

夜,アセルスタン,パイク,ワトキン3人で静かに人柱様の葬儀。パイク「棺に名前を彫りますか?」アセルスタン「ハドルに"Sweet Jesus, remember Magdalene"と彫ってもらっておくれ。」「彼,意味わかりませんよ。」「キリスト様はわかるからいいさ」 ほほ~,ダヴィンチ・コード読んでなければ,私も意味さっぱりわかりませんがな。(笑)

翌朝,アセルスタンとクランストンは酒場で落ち合います。前日アセルスタンは,クランストンに頼んで某所に遣いを出してもらっていました。2人は修道院に戻り,ノーバートが運んで来た本のチェックの続きを開始。一方,ブラザー達のイライラは増長中。ユージニアスとコンチェスはかなり攻撃的に,もう国元へ帰るぞと毒づきますが,クランストンは,4人も死んでいるのに許せん,ドーバーを渡る通行許可を与えないぞ,と脅します。しかし,今度の日曜までに解決できない場合は,監禁開放を余儀なくされます。

そんな折,クランストンが,ついに「見つけ」ます。ヒルデガード。本が破られていました。どうやら犯人に先回りされたようです。


Run!Run!Run!