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「護衛艦プレート」工場

2012-12-11 | 自衛隊

皆さまは護衛艦の「プレート」ってご存知ですか?
護衛艦に乗った方のブログなどを見ているとときどき
艦内に「こんなものが飾ってあった」という写真で登場します。

たとえば訓練に参加した護衛艦同士で記念に交換し合う「楯」。
その木製の台に貼り付けるのがこのプレートです。

行き帰りで大変スリルを味わった今回の富山行きですが、
その本当の目的は、ある錫鋳造工場の見学でした。
なぜ見学することになったのかは書けないのですが、とにかく
その工場見学をしていて、エリス中尉はあまりの「引き寄せの法則」にびっくり。

なんと、その工場ではこの「護衛艦プレート」を請け負って鋳造していたのです。

富山と言えばご当地産業は金属加工。
アルミと銅のシェアは全国一位です。

今回見学した富山の高岡にあるこの工場は、高岡に伝わる鋳造技術を用いて、
昔から仏具を作ってきました。
どちらかというと細々とした産業であったこの分野でしたが、
現社長のアイデアとセンスで、生活に潤いを与える道具、たとえば風鈴や花器、
食器などを現代風にデザインしたものが大ブレイク。
いまやその商品はニューヨークやパリなどに進出している「注目企業」です。

この工場見学についてはまた日を改めますが、この会社が、
実は自衛隊からプレート製造の依頼を受けている「御用工房」であったわけです。
もう、エリス中尉のためにあるかのようなこの工場見学。
言っておきますが、これは全くの偶然です。

今日は工場の「鋳型置き場」で護衛艦プレートの数々と対面したお話を。

 

プレートはこのようにずらりと壁に掛けられています。
「一目でわかるところに絵のように展示する」のが
この会社の鋳型管理方法なのだそうです。
棚に直してしまったら、どこに何があるか思い出せないのですぐに取り出せないとか。

しらねJS Shirane, DDH-143

さっそく知っているフネのプレート発見。
このたびの観艦式で祝砲を撃っていた「しらね」。
ばりばりの現役ですが、1980年に就役したフネですから、数年前から引退が検討され、
「はるな」とこの「しらね」、どちらを引退させるか?とはかりにかけられた結果、生き延びました。

この会社の売りは錫ですが、さすがにプレートは真鍮で作るようです。

ちよだJS Chiyoda, AS-405

日本初の潜水艦救難母艦。
窓から潜水艦を望むモチーフ。
あっ、これはちよだが今から救難する遭難中の潜水艦なのか!

えのしまMSC-652

今年三月に就役したばかりの掃海艇「えのしま」。
観艦式で「お披露目」されていました。
鋳型もまだ出来立て、といった感じです。

掃海艇関係に必ず付いているのは機雷のマーク。
「えのしま」は機雷を竜が処理しているモチーフです。

このデザインは、社長によると
「自衛隊専属のデザイナーがやっているのではないか」ということです。



掃海艇群全体のプレート。
この間の観艦式では。小さいながら颯爽とした掃海艇群が、
勇ましく観閲の隊列を組んで進んできている様子が、なんともかっこよかったです。
どんなフネもかっこいいのですが、掃海艇のかっこよさは
「海の掃除」に命を賭けるその職人のようないなせさにあります。

くまたかPG-827

はやぶさ型ミサイル艇、くまたか。
これも観艦式で訓練展示を行ったのでおなじみです。
このモチーフは「鷹の羽」をあしらったものですね。



JMSDF 1DPG  Patrol guided missile boat
1DPGは第一防御警備群?(←適当)

うっすらと色がついていますが、着色することもあるそうです。



右)みょうこうJS Myōkō, DDG-175
左)SUB BASE

「みょうこう」は、馬に乗った武士のモチーフで、わかりにくいですが下には

「SAMURAI SPIRITS」と書いてあります。
前回の北朝鮮の「人工衛星発射予告」には「こんごう」「ちょうかい」とともに
迎撃態勢を取っていたと聞きます。
今、北朝鮮がミサイル発射予告をしているのに、やはり備えているのでしょうか。
最悪の場合もサムライスピリッツで、日本を守ってくれることを祈ります。

左の潜水艦基地のプレート。
こちらには「ベストサポート」と書いてあります。

いしかりJS Ishikari, DE-226

海自初のガスタービンを装備したフネとして名を残しました。
石狩なのでヒグマがハープーン艦対艦ミサイルを抱えております。
このミサイルを初めて搭載したのもこの「いしかり」。
2007年に除籍され、同型艦はありません。



平成5年、米国派遣護衛艦部隊のために作られたプレート。
こういうイベントのために作られたものは、二度と使われることはありません。
しかし、同社は一度作った鋳型は「永久保存」しています。

「ときどき、ほんのたまに、昔作った鋳型で製作の依頼がある」

ということなのですが、「しらね」や「みょうこう」など、
現役艦であっても、もう引退してしまったフネであっても、とにかく鋳型は
「いつでも作れるようにここに置いてある」のだとか。

「マニアの人には垂涎のものなんでしょうけど、処分できないんですよ」

とのことです。
そして、いろいろと考えさせられてしまったのが、

「最近、というか政権交代してから、製作の依頼がほとんどなくなりました」







もう消えてしまった「やまぐも型護衛艦」
「まきぐもDDK114」


「まきしおJS Makishio, SS-593



「補給艦はまなJS Hamana、AOE-424



津軽海峡を守る艦艇群であることはわかる。



余市防備隊。
このあたりの防衛について、むかし読者の方に
「胃を無くすくらい神経をズタズタにしながら任務に就いていた自衛隊員の話」
という、曽野綾子氏の話を教えてもらいましたっけ。

本当に、自分を犠牲にして日本の防衛にあたってくれている自衛官たちには
感謝の意しかありません。




とねJS Tone, DE-234

あれ?このプレート・・・・漢字じゃないですか!
旧軍戦艦「利根」から三代目に当たる「とね」。
「とね」とひらがなだとあんまりしまりがないから?

・・いや、護衛艦の間だけで交わされるこのプレートだから、外にはばれないし、
この際漢字使っちゃえ、ってことかしら?

いいじゃないですかー!(←漢字艦名フェチのエリス中尉であった)

そして!

「こっそり漢字使用」もうひとつ見つけー!

「練習艦かとりJS Katori, TV-3501」
このフネも、「とね」と同じく、旧軍艦の名前を引き次ぐ三代目。

これ、絶対わざとやってますよね?
ちなみに、このモチーフに鳥居があるのは「香取」が「香取神宮」からの命名だから。
練習艦だから、「羽ペン」と「サーベル」があしらわれているのでしょうか。



何のためのプレートかわからなかったもの。
しかし、このモチーフ、むちゃくちゃ製作難易度が高そうです(鋳造的に)
竪琴のマークがあるのでおそらく音楽隊のプレートかな。

 

マーメイドがカギを持っているおしゃれなデザイン。
これも何のためのものかわからず。

右の33ED、もしかしたら潜水艦救助かな?
社長さんはこのデザインがお気に入りだそうですが、残念ながらこの方、
依頼は受けていても、自衛隊のフネについての知識は基礎的なことすら皆無でした。
まあ、関心のない方というのはこんなものかもしれません。
このプレートも、おそらく自衛隊的に正式名があるはずなのですが、
それも全く知らない、とおっしゃっていましたし・・・・。

そしてこんなこともありました。

むらさめJS Murasame, DD-101

この、モチーフ、むらさめがVLAをぶち上げているかっこいい瞬間なのですが、
社長さんたら「最初は柱が立っているのかと思ってました」
って、エリス中尉でも決して思いつかないようなボケをかましてくれました。
艦橋の1、5倍のこんな太いマストが立ってたら前が見えないってば。

そしてみなさん、ご注目!
JSの部分が新しいでしょ?

「あるとき、JDSのDを外してもう一度作り直してくれ、という依頼が来まして」

Diffence(外国向けの言い訳ネーミング)の廃止、キターーー!
わくわくしながらエリス中尉、おもむろに
「Dがなぜ無くなったかご存知ですか?」
「いや。知りません」

それはこうでかくかくしかじか、と得意になって知識を披露するエリス中尉。
こんな瞬間のために今まで勉強してきたの?ってくらい意気揚々と。
「くわしいですねー!」

しかしながら、年代的にどうも「団塊の終り世代で、しかもシラケ世代」ではないかと
思われるこの社長、わたしが異常に詳しいことに対し、怪訝な顔こそすれ、
決してそれ以上盛り上がってはくれませんでした。

それはともかく。
そのDを削ったときに、



プレートのポッチの部分から叩いて加工するのだそうですが、



その時に、ヘリコプターが微妙に凹んだのだそうです。
むらさめは哨戒ヘリを搭載するので、ちゃんとヘリもモチーフにしているのです。

プレートにするくらいなら何の支障もない「軽微な」ものだったので、
そのまま納めようとしたら、担当者が

「いやっ!
自衛隊は『沈む』『へこむ』『曲がる』『落ちる』をとても嫌います。
プレートが沈んでいるのはだめです!絶対にダメです!」

と青筋たてて主張したので、泣く泣くもう一度やり直したのだそうな。
エリス中尉やここの皆様ならいろはのい、ってくらいの基礎知識ですが。


・・・・・あれ?

こんなにこだわるというか担ぐのなら(これ、ゲンかつぎの意味ですよね)
ますます映画「バトルシップ」で「みょうこう」が沈んでしまい、おまけに
自衛官が多数犠牲になるというあの描写は・・・・・・・・・・・・

いったい、ユニバーサルと海上自衛隊の間にどんな密談が行われ、
あのような展開が許可されたのだ?

・・・・・・気になる。