ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

真珠湾攻撃 最後通告の「真実」 15時間の謎

2012-12-14 | 日本のこと

12月8日付の日経新聞文化欄に、このような記事が出ていたのを
お読みになった、あるいはインターネットで見たという方はおられますか?
エリス中尉は富山旅行中、TOの読んだ後の新聞を読んでいて記事に気付きました。
後から検索したらインターネットでも記事になっていたようです。


新聞を取ることに「新聞紙の再利用」以外の価値を認めないわたしは、
いっさい新聞の勧誘のたぐいは今まで「日経新聞取ってるので」
という撃退文句(これが効くんだ)で追い帰してきました。
本当は、仕事で必要なTOが職場で取っているだけです。

新聞を一社のものだけ読みそれを真に受けるがどれだけ危険なことか、というのが
最近ネットの普及で一般の認識となってきている気がしますが、
そういう一般認識をあえて見て見ぬふりをしながら、現在も既存新聞社の多くは
「社是」に従った報道という名の「思想啓蒙による世論誘導」に汲々としているようです。

メディアにとっては、インターネットを敵視しなければならないくらいやりにくい時代になりました。
昔はよかった。(メディア的に、ですよもちろん)
インターネットで検索されることもなかったので、世論誘導はやりたい放題。
朝日、毎日が「政府弱腰」などと煽って国民を戦争に焚きつけたのを我々は今や知っていますぜ。

おっと、エリス中尉に、特に最近のマスゴミについて語らせたらとんでもないことになってしまうので、
今日はこれだけにしますが、しかし実は今日お話ししたいことの問題の根本は
「世論の誘導」よりもっと悪質な「歴史観の修正」をしようとするマスコミの姿勢なのです。


まず、この新聞記事の内容ですが、

「大使館怠り説覆す?新事実」

真珠湾攻撃の際、日本大使館の手渡した最後通告が攻撃後になった。
アメリカはこれをもって「だまし討ち」と日本の攻撃を位置づけ、
「卑怯なジャップに仕返しを」と大統領が演説することで

「リメンバーパールハーバー」の大義を得、国内世論は日本との戦争を支持した。

しかし、最後通告は意図的に遅らせたものではなく、
大使館の事務的ミスと、職務怠慢によるものらしい、という説が
「日本はだまし討ちをしたのではない」という論拠となってきた。


しかし、ある学者が米国公文書館で新たな記録を発見。
それを解析したところ、通告の遅れは大使館の怠慢ではなく、
本国、陸軍参謀本部と外務省が関与して、意図的に遅らせたもので、
攻撃を効果的にするためにそれは作戦として行われた。

ということを主張している学者がいる。

まとめればこのようなことになろうかと思います。

これをただざっと読んだだけ、あるいはインターネットで立てられたいくつかの
スレッドに目を通した方のなかには、
「認定された新事実であり、大使館の職務怠慢説は覆された
と認識したうえ多くは事実として認めてしまったかもしれませんね。

ちょっと待った。(笑)

みなさん。
マスコミは信用できない、と日頃言っておきながら、こんな手に騙されてはいけません。
こんなことには全精力を傾けるエリス中尉が、この記事の欺瞞を暴いて差し上げます。
この新聞記事を子細に眺めると、それはそれは面白いくらい

「日経新聞の編集委員と、この新事実を訴えたい人」

の、実に恣意的自己利益誘導的なに満載されているトリックの数々が見えてくるのです。
あまりにも露骨すぎて、実は検索途中で声を出して笑ってしまった事実すらあったのですが、
それは後のお楽しみ。


まず、中身を詳細に検討するより先に、大まかなところから参ります。
この記事は、ご覧のとおり、「文化欄」に掲載されています。
・・・・・・文化?

歴史について言及している記事だから、文化欄?
いやしかし、既存の「大使館怠慢説」を覆すほどの、重大な新事実でしょ?
これほどの重要な内容なら、せめて三面に載せるべきなのでは?
事実(ファクト)としての記事の「重要度」がここでかなりトーンダウンする気がするのは
わたくしだけでしょうか。

そしてもう一点。
冒頭写真の記事「タイトルとアオリ」。
見てください。

「大使館怠り説覆す
「修正指示は半日後 外務省の故意

わたしが大きな文字で打ったように、これは「事実として認識されたもの」ではなく、
「このようなことを主張している学者がいる」
という記事なので、あくまでも断定を避けています。
本文にも
「通説に一石を投じそうだ」
という願望的予想の一文が見えるあたり、つまりこの記事とこの学者の意図は、
通説を持説に書き換えたがっているらしい、ということは理解できるものの、
それはあくまでも「現時点では史実として認められていない」ということを意味します。

それでは、内容を検証していきましょう。
この検証は彼らの「研究結果そのものの検証」ではありませんので念のため。

この新聞記事をリアルタイムで読んだ方、あるいはインターネットで記事を目にした方、
正直なところいかがでしたか?
通信記録が新たに発見された。それを検証したら「大使館の怠慢ではない」ことがわかった。
記事にはそのような結論だけが記載されていますが、では具体的に、
その記録がどのような外務省関与の証拠になっているのか、読んだだけでは

さっぱりわからなかった、

そのように感じられた方が(わたしを含めて)ほとんどだと思うのですがいかがでしょうか。
しかし、みなさん、ここで考えることをやめてはいけません。
彼らの押し付ける結論だけをうのみにしてはならないのです。

頑張って検証してみますので、どうぞお付き合いください。




不親切で全く意味の分からない表です。

開戦直前に外務省がアメリカ大使館に向けて送った公電には、
一通ずつ番号がついています。
それが901号に始まり、全部で11部あります。

このうち、いわゆるアメリカの最後通告であるハルノートに対して、
「これ以上の交渉を打ち切る」とした覚書は、902号に記載されています。
そしてそれ以外はすべて
誤字脱字訂正、暗号解読機破壊のための命令が記載されました。

上の写真ですが、わざわざ表にするから何かと思えば、これは
日本が打電した電報を、米軍が傍受したのが何分後だったか、
というはっきりいって本文の主張とは全く無関係なことをそれらしく付けたして、
ものごとをより複雑に見せかけているだけにすぎません。

上から

902号13部 33分後
903号    1時間5分後
906号    43分後
902号14部 32分後

と、ほとんど一時間以内に日本からの公電を米軍が傍受していた、と。
で、それが何か?
皆さんのためにお断りしておくと、米軍がいつ傍受していたかということは
この彼らの主張と何ら関係ありません。

この新聞記事でこの「新事実」を発見したという学者は
九州大学の三輪宗弘教授
学者のデータバンクで検索すると現在は「助教授」となっていますが、
まさか日経の記事でタイトル詐称をするわけがないので、これは何かの間違いでしょう。
東京工業大学出身でありながら、専門が科学社会史、日本史という学者で、
学会で引用されている論文は無いようです。

さて、この三輪氏が「外務省が遅延を意図的に行った」と主張しているわけですが、
これを新事実とする三輪氏の論拠は、なんだと思います?
上の表による

「902号13部が打たれてから902号14部が打たれるまでに15時間も経っている」

それだけです。

驚きましたか?
三輪氏に言わせると、
15時間もの時間がかかったことが、外務省関与の論拠なのです。

いや・・・・これ、全く論拠になってませんよ助教授。・・・あ、教授でした?失礼。

通告の内容を記した902号の公電は、長いので14部に分かれていました。
13部までが時間通りに来ていたのに、最後の一部が15時間後になった。
この事実だけで「意図的に遅らせた」と決めるのは、すこし無理筋ではありませんかね?

ここで、新聞記事を少し抜粋してみます。

「(略)14部は15時間以上遅延した。
しかも902号電報には多くの誤字脱字があり、
外務省は175か所に及ぶ誤字などの訂正を

903号、906号の二通に分けて大使館に送信した」

この助詞「しかも」の使い方が全くおかしいですね。
「しかも」ではなく175か所の誤字脱字があった「から」15時間遅れたとは考えられませんか?

誤字訂正のための二通が送られたのは、最終電である14部が送られる前。
このあたりをいつものようにエリス中尉の想像力でもって説明してみます。


そのとき外務省は最後通牒を14部に分けて次々と打電していた。

ところが、別の部署でチェックをしていた外務省の役人が
真っ青になって叫んだ。

「やべ!この14部、これ間違いだらけじゃん!こんなの送ったら日本が馬鹿にされるし。
今まで送った13部全部の間違いもチェックしなきゃ

「ええっ、もうだいぶ時間も経ってるんすよ?やばいっす」

「ダメダメ、それ送る前に今までの文章を全部訂正する電報打つからちょっと打電待って」

ところが、英語の苦手な日本人、このチェックと訂正、さらに深夜(1時半)であったため、
寝ている上司を起こしての許可を取ったり、意見を聴いたりしているうちに刻々と時間は過ぎた。
そしてようやく175か所以上にも及ぶ間違いを探し出し、訂正し、

13時間後に903号(最初の訂正指示)送信

「じゃ14部送っちゃっていいすか~?」
「やっべ~~!さっき気づかなかった間違いがあるよ!
待って待って、もう一回訂正箇所最終チェックするから」

さらに一時間後に906号(訂正指示二通目)送信

「もうすごい時間経ってるんですけど早く送らないとやばいっす」
「だめだ!間違いがないか、もう一度確認だ!日本人のプライドにかかわる!
まだ攻撃開始予定まで13時間ある。
12時間もあれば大使館もタイプする時間は十分だ!」


一時間後、ようやく覚書の最終分である14部送信完了


・・・・・ってことじゃーないんでしょうか。

上のエリス中尉の駄文を
「何をふざけてるんだ!こんな思い込みで見てきたように断言するな!」
と、おそらく関係者は真っ赤になって切り捨てようとするでしょう。
わたしも、これが真実だったなんて断言するつもりはありませんよ。

ただ、三輪助教授が、いや教授が言うところの
「15時間遅れたからそれは外務省が意図的にやったことだ」
という一足飛びの「結論」を裏付ける証拠も、またどこにもありませんよね?

皆さまは公平に見て、三輪(助)教授の結論とエリス中尉の想像、どちらが現実的だと思います?


それでは次回、彼らがいうところの「意図的遅延」は、誰が何のためにどう仕組んだのか、
そして、それを主張する彼らの真の目的について迫ります。


ところで。
「あれ?これって外務省が無能だったんでは?」と思った方。
あなたは鋭い。
しかしこの件にはさらに
「大使館も外務省も悪者あるいは無能にしたくないある人物」がかかわっているのです。

とにかく、次回でその謎を解き明かしますのでこうご期待。