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海上自衛隊音楽隊コンサート

2012-12-21 | 自衛隊

画像は、現在海上自衛隊の音楽隊で「試行中」の演奏会用制服。
うーん、かっこいいですねえ。

現行の制服は一番略式のものだと自衛官の制服に冬は飾緒を付けるだけ、
夏はそのまま、というものなのですが、演奏会用は女子はこのようなロングドレス。
現行のものとあまり変わらず、むしろ袖の飾りが無くなりシンプルになっています。
男性の演奏会用は現行との大きな違いは「タキシードカラーのシャツ」でしょう。
これまでのシャツ+棒ネクタイの組み合わせよりこれは、よりオーケストラに近く、
エリス中尉はあと一息、上着を燕尾にすれば完璧だと思います。(燕尾フェチ)

先日、自衛隊音楽祭りにさくらさんが行かれたというコメントをいただきました。
プラチナチケットであるということも知らなかったのですが、とにかく
自衛隊音楽隊の人気はものすごいものであるようですね。

それを実感したのが、この10月、観艦式の一環行事として、各地の海自音楽隊が
みなとみらいに集結して「観艦式記念コンサート」をしたときです。
ここではよく高校生のブラスバンドの発表が行われるのですが、この日、
海上自衛隊の6つの自衛隊がここで12時から5時40分までの間、
各音楽隊が40分ずつのステージを披露しました。

フリースペースなのだからどこかいい場所が取れるだろうと思っていたら大間違い。
ステージ正面の椅子席など、朝施設のオープンと同時に待っていたらしき人で
あっという間に「一日貸切」になってしまったのは勿論、楽隊の前のスペースは
とにかく人垣が三重四重に取り囲み、見ることなど不可能。

音さえ聴こえていれば別に見えなくてもいい、と人はあまり思わないようで、
とにかくステージの周りから反対側の階段に至るまで見物客がびっしりと。

案の定これほどのものとは思わずに普通に出かけたエリス中尉、
ようやくステージの斜め後ろ、指揮者も見えないようなところになんとか落ち着き、
聴くことだけはなんとか聴きました。
しかし、決して「いい場所」ではないにもかかわらず、周りの人々は楽隊の交代になっても
一向に動かず、そこで立ったまま聴き続けているのです。

なにか、本当に自衛隊の演奏には心から興味と関心を惹きつけられるものがあるのだと
この日一日で実感した次第です。

それでは、この日、各音楽隊が演奏した曲を挙げていきましょう。

大湊音楽隊

1、錨をあげて
2、ソーラン節
3、海の見える町(魔女の宅急便より/久石譲)
4、メモリーズ・オブ・ユー
5、宇宙戦艦ヤマト
6、栄光の架橋
7、マンテカ

選曲には各隊、工夫を凝らします。

1、いわゆるスタンダードなマーチ
2、音楽隊の所属する地のご当地民謡、ご当地ソング
3、演奏地(この場合横浜)を想起するテーマのもの
4、スタンダードジャズの名曲(ある層にとってはナツメロ)
5、アニメソング
6、ご当地ソング(Jpops)
7、ラテン系のリズムで、ジャズミュージシャンが取り上げたイケイケの曲。

このような選曲でプログラムが組まれているようです。
6番の「ご当地」は、これを歌っているゆずの二人が横浜市の出身であることから。

ついでにもう少し分類すると
8、自衛隊委託作品

自衛隊音楽隊は、多くの委託作品を初演しており、なかには
自衛隊にとどまらず吹奏楽会全体の重要なレパートリーになったものも
少なくありません。

以下、各地方隊のレパートリーにこの分類番号を振っておきます。

舞鶴音楽隊

双頭の鷲の旗の下に (1)

行進曲「博奕岬の光」(6)(ご当地ソングでもあるらしい)
コルネット・カリヨン(ラッパのために作られた曲でブラバン界では有名)
ナヴァル・ブルー(6。名曲です)
パヴァーヌ(ラヴェル。9、クラシックの曲)
マイ・フェイヴァリット・シングズ(4)
白鳳狂詩曲(6)

佐世保音楽隊

秋空に(6)
島原地方の子守歌(2)
宝島(6)
赤とんぼ(10、童謡)
枯葉(4)
セプテンバー(アースウィンドアンドファイア 11、ポップス)

呉音楽隊

艦上の旭日(6)
キャラバン(7)
ムーン・リバー(4)
ア・ハード・デイズ・ナイト(11)
フライミートゥーザムーン(4)
エルクンバンチェロ(7)

(7)のイケイケ・ラテンは、派手なのでよく最後の曲に使われます。

横須賀音楽隊

マンテカ(7)
海の見える町(5,3)
栄光の架橋(2、6)
かもめが横須賀跳んだストーリー(2)
ヨコスカの海と風より どぶ板通り(8)

みなさん。
わたくしはこの横須賀音楽隊と大湊音楽隊の演奏を聴いて、つくづくこの自衛隊の
人材の豊富さに心から感心いたしました。
「栄光の架橋」は知る人ぞ知る名曲ですが、これを「ゆず」ばりに二人の自衛官、
計4人の自衛官が歌い上げたのです。

http://www.youtube.com/watch?v=BWHm-ZTVNx0

http://www.youtube.com/watch?v=8ei7Ot6ycVQ

アレンジが微妙に違いますね。
横須賀にはキーボード奏者とゴングが入っていて若干こちらが凝っている感じです。

若干の音程のブレはあるものの、伸びのある気持ちのいい声、
四人とも「君たち仕事を間違えてないかい?」と思わず聴きたくなる見事な歌手ぶり。

しかし、この四人は自衛隊に「歌手」として入ってきたわけではないのです。
楽器をするからと言って必ずしも歌がうまいわけではありませんが、
一般に音程楽器(弦楽器)の人間は声はともかく音程は正確に取れ、
さらに管楽器の人間は「体で音を出す」ので、歌の上手いことが多いのです。
ブラバンのメンバーで歌の上手い人間はいくらでも、とまではいきませんが、何人かは見つかります。

わたしはステージが全くと言って見えないところにおりましたので、
かれらが演奏が終わってからそのあとどの楽器に戻ったのか見ることができず、
残念ながら彼らの「本職」が何かはわかりませんでした。
(どなたかこのステージ見ていた方おられませんか?)

そして、5つの楽隊の演奏がすみ、トリは

東京音楽隊

錨を上げて(1)
Time to say Good-bye(11)
I Got Rhythm(4)
青春の輝き(11)
チュニジアの夜(7)
it's Only A Paper Moon(4)

東京音楽隊の演奏が始まるとき、となりにいた女性が二人、
彼女らはとても自衛隊音楽隊に詳しく、知り合いでもいるのかと思われましたが、
「期待の東京音楽隊!」としゃべっていました。

この6つの音楽隊にランクやグレードは無いとは思いますが、
もしかしたら東京は特別なのでしょうか。
そういえば、旗艦「くらま」に乗ったのもこの東京音楽隊であったと聞きます。

この楽隊には最終兵器ともいえる(自衛隊だけに)人材がいます。
以前、自衛隊音楽隊の話をコメントでしたときに、東京音大声楽科を出た
自衛官が誕生した、という話をしたことがありますが、どうやら彼女がその
「歌手自衛官」であるようです。

そんな彼女が歌ったのがTime to say Good-byeとit's Only A Paper Moon。
イッツオンリーは、ジャズの名曲で、

「描き割りの空に描かれた紙のお月様も、あなたが信じてくれれば本物になる」

というかわいい内容ですが、彼女はこれをバース(前置き)部分から丁寧に歌いました。
そして、タイムトゥ~は、言わずと知れたサラ・ブライトマンの持ち歌。
驚くべきことにサラと同じキイで歌ってのけました。
ラストの部分、あまりにもハイキーなので、知っている者にとっては心配のあまり
その個所に差し掛かったとき鼓動が早くなるほどでしたが、いやまったくお見事でした。

http://www.youtube.com/watch?v=c3BnFGSKXu0

ところで、この東京音楽隊の最初の「錨を上げて」では、
スネアドラムがフューチャーされ、その時だけ奏者は制帽を着用しながら演奏。
心がびりびりと震えるような鮮やかなスティックワークが披露され、
ソロが終わったとき、かれは上方を仰ぎつつ実にスマートに敬礼をしたのです。

これを観たとき、エリス中尉、決して比喩でもなんでもなく、
そのかっこよさに感動のあまり全身鳥肌が立ってしまいました。


各音楽隊は40分で演奏を終了するのですが、必ず始めるのは
ぴったり時計の針が0を指した瞬間。
海軍式時間厳守はこんなところにも受け継がれています。
そして、40分のプログラム、必ず最後に演奏されるのが、
・・・そう、「行進曲 軍艦」。

わたしはこの日一日立ったままこの演奏を聴きましたが、「軍艦」が流れるたび、
明らかに会場の空気が変わるのを感じました。
なにかみな高揚したようなはっとしたような、何とも言えない表情を浮かべるのです。

海自音楽隊の演奏する「軍艦」。
「力」だなあ、とジーンとしながら思いました。