三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

京の町家

2006年08月14日 08時01分57秒 | Weblog

写真は京都での町家見学のときに撮影したもの。
日本の戸建て住宅は圧倒的に独立型が主流ですが、
都市住宅で考えれば、世界的には連棟式の、となりとの間が
壁1枚というスタイルの住宅の方が多いのではないのでしょうか?
まぁ、マンションというものがそれに替わっている存在とは言えますが、
欧米では、木造での連棟という住宅が多い。
以前に触れた、スウェーデンのハンス・エークさんが建てた「無暖房住宅」も
連棟式の住宅でした。
コスト面や敷地の利用などで、こういう住宅にはメリットが多い。
反面、やはり採光とか、そういう自由度は低いのですね。

さて、京の町家です。
間口が狭くて、奥行きが長く、入り口側は格子などが連続している。
たいていが内部に中庭を抱っこしたような間取りになっています。
これは連棟式のメリットを生かしながら、
採光や自然との触れあいを実現させているという意味で、
たいへんいい考え方のプランです。
都市計画の点で言えば、公共の道路と、私的な敷地利用の割合が
公共の側が少なくて済むメリットが大きいですね。
また、統一した街並みが展開していくので、調和が図られています。
こういう敷地利用計画のことを「街割り」とかいいますけど、
街割りで考えたら、鉄筋コンクリートがない時代、
低層の建物を連続させながら、密集的な効率のいい土地利用形態です。

こういうのはどういう形態で建てたのか?
複数の施主がいて、最初から共同住宅として計画して造作されたものか、
そうではなく、建て主が建てて、それを「分譲」して販売したものか、
いまとなっては、よくわからない部分なのでしょうね。
でも、こうした建物を見ていて、公共に対するそれぞれの家に態度に
よき共同住宅の規範や倫理観があるなぁと感じます。
街並みとしての調和を第1に考えて、
隣人への配慮を欠かさない態度で、マナーを守って暮らしてきたのですね。
ひるがえって、現代のマンションの騒音問題などで
それぞれの持ち主のエゴばかりが目立っている現状を見ると
もう一度、こういう倫理観に戻らなければ、と思います。
日本人の住まいの知恵と工夫が
いっぱいに詰まっている、京の町家です。
コメント
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