仙台市の北方、中心部からは20km程度の距離に
「宮床」という地域があります。
この地域は著名な歌人を輩出したり、一種独特な文化性で知られています。
その伝聞で言えば、仙台藩始祖、伊達政宗が、ちょうど徳川の御三家のように
自らの直系の孫を、この地に遺し、
万が一、自らの仙台城の直系が危うくなったときに、
この宮床の血で置き換えるために配置した、といわれています。
ですから、小さな集落ながら、独特な気品を保っており、
武家屋敷の連なりで、趣のある家並みが続いています。
今回の住宅は、こうしたなかの一軒の住宅の改造事例。
上の写真が正面からの写真ですが、
屋根が少し段差がある、右側の棟をあらたに増築したもの。
こうした歴史のある建物なので、その家並みや家格に配慮して
景観の継続性を考慮した住宅になっています。
とはいえ、増築した部分だけでも普通の大型の家の一軒分の広さ。
こちらがわに現代的な暮らしが可能な
住宅装置を造作したというモノなのですね。
こちら側だけでも、4LDKになっており、
家族三人の暮らしには十分以上の広さが確保されました。
建物全体の断熱や気密に配慮し、また
暖房も、地盤面ベタ基礎の床下ピットを利用して
開口部の床付近から暖気を上昇させる工夫をしています。
こういう古民家的なたたずまいですが、
内部では大きな吹き抜け空間を作り出したり、
そのなかに、天窓からの採光がたっぷりと降り注いだりして
現代的な、開放型の住宅が実現しています。
そういう意味では、もう半分側の古いたたずまいと明確なコントラストがあります。
外部的には景観の連続性に配慮しながら、
内部では、現代と歴史的継続が同居しているような住宅です。
玄関には、おもしろい家紋もガラスに入っていたりしています。
家紋の名は、電字なんとか、という名前だそうで、
まったく見たこともないモノでした。
写真下左が、玄関を内側から撮影したモノ。
衝立がある、武家の住まいの基本的なありようを伝承しています。
まさに家に歴史あり、そのままのくらしをつづけていらっしゃるみなさんもいる。
こういう住宅も、作り手がしっかり想像力を持って
時代をリレーしていく建物の形として遺していかねばなりませんね。
後世に、現代が、ただただ、スクラップ化しかできなかった
建築的な不毛で無能な時代と指弾されることがないことを
祈るような、気持ちがしてきます。