呉服といわれる服飾は
相当長きにわたって日本人の美的感受性の中心にあったと思います。
そういう衣装を「仕立てる」道具って、でもあんまり見たことがなかった。
写真は先日、上ノ国の旧家で見かけた道具類。
で、なんとも面白かったのが
写真左下にあるもの。
これって昔の「アイロン」なんだそうです。
アイロンって、大体その語源からして、アイアンでしょうから
その言葉を独占的にひとつの器具が独占したこと自体
いかに服飾、とくに和服仕立てにおいて
日本人の暮らしに根付いたものだったことを表している。
で、この器具は先っぽの円筒状部分に炭火を入れて
熱を伝えやすい鉄の性質を活かして
それで衣服のシワを伸ばしたりする用途に使われたそうです。
また、右側のコテのような形状のものは
直接暖めて、より細かい部分を仕立てるものなんだそうです。
両方で、現代の「アイロン」の役割を果たしていたものだそうです。
興味があったので、Wikipediaで調べてみると
炭火アイロン
日本では金属製の片手鍋のような容器に炭火を入れ、この熱と容器の重みで布の皺をのばす火のしが 中国から伝わり江戸時代中頃から昭和30年頃まで使われていた。
明治時代になると、西洋より炭火アイロンが入ってきて広く普及した。 炭火アイロン、あるいは火のしは中の炭がはじけて火の粉が飛び散り、布を焦がす心配があるが、日本では良質の木炭が生産されていたので、さほど問題にならなかった。
西洋では布を焦がす問題から、中に炭を入れないこて(鏝)形のアイロンも広く使われた。 これは、石、鉄、銅等で制作され、使用する時はアイロンストーブと言われる専用のストーブの上及び周囲に乗せて加熱するもので、火の粉の心配は無い。
後に、電気式のアイロンに移行する。なお、現在では家庭用にはコードレス方式やスチーム機能付のものも多い。
っていうような説明なのだそうです。
こんなふうに「仕立てる」というような技術も
それこそ、日本中に職人的な手業として継承されてきていたものでしょう。
いまの時代、このような手業の文化は否定される方向が明確ですね。
で、一度文化が消滅すると、
二度とその技術が復元されることが少ない。
手間暇を掛けてきたこういう手業の文化、
たとえば建築の世界でも消滅しそうな分野って多い。
こういう道具ひとつ見ても味わい深い文化が
綺麗さっぱりと消えていることに、ため息が出る思いですね。
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