ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

今、KIRINJIの音楽が好き(その2)〜コトリンゴさんの活躍

2018年09月25日 | ミュージック
 兄弟グループだった「キリンジ」は13年に弟が独立し、新たな6人編成のバンド「KIRINJI」となった。バンドとなってからリリースされた「11」以後のアルバムを集め聴いた。聴けば聞くほど曲が良い。バンド・メンバーがスティール・ギター、ヴァイオリン、トロンボーン、アコーディオンなど様々な楽器を持ち替えることに加え、全員が歌うことができるのでコーラス・ワークも多彩で聴くほどに味が出る。ほとんどの曲を堀込髙樹が書いているのだが、「進水式」「心晴れ晴れ」のような心を包み込む名曲がたくさんある。また、アレンジは才能豊かなコトリンゴはじめバンド全体でおこなっているらしい。それがハッとする展開もありで飽きさせない。歌詞も「ネンネコ」のように何気ない中にホロッとさせられる一言や、コトリンゴさんの歌う「fugitive」に見られる悲しさには胸がじんと来るのである。
      
 そのコトリンゴさんだが、よく3年半もバンドに在籍したと思う。ライブのリハーサルを追ったビデオの中でリーダー堀込氏が、コトリンゴは自分達よりはるかに才能溢れる人で、目指すべき存在。そういう人がバンドの中にいてくれると張り合いができるから加入を頼んだ、というようなことを言っていた。その言葉のとおり一人でも充分な実績や存在感のあるアーティストなのに、バンドの一員として素晴らしいピアノや透明感あるウィスパーボイスのコーラス・ワークでKIRINJIの曲を盛り立てた。だが、「雲呑ガール」ではホテル行こうとの呼びかけに「イヤです!」と言わされ?たり(この部分は「EXTRA11」のライブヴァージョンではたぶん「小樽行こう→えー行きたいです」に変わっている)、前述のThe Great Journeyは堀込氏が「満室!」と叫ぶなど、愛の営みを暗に表現した楽曲と思われコトリさんの雰囲気とはまるで一致しないのだが、それにもかかわらず黙々と華麗なピアノプレイを聞かせていた(16年ライブ・ビデオ収録のKIRINJIヴァージョンではラップの一部も披露している)のがとても印象深い。だからこそ私の失敗はコトリさんのいるKIRINJIのライブを見逃したこと、そして、今年の7月にコトリさんのライブが札幌のモエレ沼公園ガラスのピラミッドで行われた時に行けなかったことである!

 KIRINJIの音楽には様々なジャンルが混ざっていることも魅力のひとつだ。プログレ好きの私が日本のバンドにこれほど惹かれたのは久しぶりのこと。コトリンゴが脱退し5人編成になった新たなKIRINJIに期待する(特に、パット・メセニーが好き*という弓木嬢にはもっとギターのフレーズを聴かせて欲しい!)と同時に、コトリンゴさんの今後の活動にもエールを送りたいと思う。
*月刊Guitar Magazine 18年10月号の記事より

今、KIRINJIの音楽が好き(その1)

2018年09月24日 | ミュージック
 いつぞやのテレビ番組「クリスマスの約束」で、小田和正がキリンジの「エイリアンズ」という曲にはまってしまって、と紹介しながらJUJUや松たか子と一緒に歌ったことがあった。何かもの悲しくも良い歌だなあと思ったかすかな記憶がある。それ以降聴く機会のないキリンジだったのだが、、、、。

      
 ジャパニーズ・ロックバンドとしてのKIRINJI、そのニュー・アルバム(といっても今年6月のリリースでしたが)「愛をあるだけ、すべて」がとっても良い。当初は中の1曲「AIの逃避行」のPVを動画サイトで見て、その映像の作りも良かったが、何と言っても曲が素晴らしかった。独特のコード進行がとてもクールで、ゲスト参加のCharisma.comによるラップもこの雰囲気にとても合っている。また、昨年末にバンドを脱退したコトリンゴさんのハイトーン・ヴォイスもミックスされていて言うことなしの傑作である。

  私がKIRINJIを聴き始めたのは昨年のこと。前作「ネオ」の1曲目The Great Journey feat.RHYMESTERが車を運転中のFM ラジオでかかり、あまり好きではないラップ・ミュージックなのに曲全体がメロディアスで惹きつけられた。よく聴くとエレキギターのカッティングもカッコイイ。一発で気に入った。家に戻り放送局のHPで曲を確認してKIRINJIだとわかった。後日別途大好きなアーティストであるコトリンゴが歌う美しい曲をラジオのオンエアーで聴き、それがKIRINJIの「恋の気配」だったことに驚いた。私はコトリンゴさんがKIRINJIに参加しているとは知らなかったのである。そうした経緯で「ネオ」は必聴のアルバムとなった。購入してみると、さらに別の女声ヴォイスが聞こえる。一昨年サッポロ・ギター・フェスタに登場し、DEEP PURPLEのBURNの完全コピーを披露したギタリスト弓木英梨乃嬢である。ほとんど予備知識のないKIRINJIがどんどん私の中で大きくなっていった。(続く)

「ロシュフォールの恋人たち」50周年記念〜CD5枚組ボックスセット

2018年08月31日 | ミュージック
 大好きな作曲家であるミシェル・ルグランについて本ブログでも何度か述べたが、今回は映画「ロシュフォールの恋人たち」のサントラである。この度、フランスのDECCAレーベルから5枚組ボックスセットがリリースされた。Tower Records On Lineで予約を入れ、当初6月の発売予定だったが、少々遅れて7月上旬に到着した。
     
     
 5枚の構成は次の写真のとおりだが、私にとっての今回の目玉はイングリッシュ・ヴァージョンのCD3である。フランス・オリジナル・ヴァージョンも歌は吹き替え者が担当しているが、この英語版も同様。ただしオリジナルのCD1&2の曲数は合計25曲だが、英語版は17曲となっており、歌なしの曲は収録されていない。当然、英語のタイトルが付けられている。
     
 他のディスクの構成としては、CD4にルグランの歌とピアノによる楽曲、ピアノ・トリオ演奏、オーケストラ・ヴァージョン、CD5には14年にヴェルサイユでルグランと共演したコンサートがビデオ化もされたナタリー・デセイや、ビル・エヴァンスのYou must believe in springなど様々なアーティストによる歌や演奏が収録されている。そのオーケストラ・ヴァージョンというのは、正規の楽曲から歌を抜いたカラオケのようなものと思われる。さらに、CD2にはインストルメンタル・ヴァージョンとの名目で12曲が収録されているが、こちらは今年ユニバーサルから発売された「ロシュフォールの恋人たち・オーケストラ・ヴァージョン」と内容が同じである。こちらはサントラ音源ではなく、ルグランがサントラ録音時の演奏者等を出来るだけ集めて改めて録音した作品であるそうだ。ユニバーサル盤のほうはSHM-CDの高音質盤なのだが、音圧はボックスセットの方が高い。
     
 こうして通して本作の楽曲を聴いてみると、ルグランの作曲力、編曲力は見事としか言いようがない。以前にも記したが、物語としての面白さはあまり感じなかった本映画だが、音楽は素晴らしいと改めて感じた。
 なお、この11月3日にアナログ盤が新たにリリースされるらしい。アナログ盤は米国盤2枚組を所有していて音も抜群に良い。今回の盤はAmazon Japan ではLPとなっているのが、Tower Recordsでは7インチ・シングルと表記されている。多分、Towerの方が正しいと思われるが注目しておこう。

アナログ・コレクション: CBSソニー・レコードはキャップ型帯

2018年05月05日 | ミュージック
 5月に入って久しぶりの投稿である。先月は投稿ゼロ。私の人生において最初で最後という出来事があり、生活が大きく変わったためである。ようやく書く気がでたので、2ヶ月近い不在を無視して前回のレコード帯の続きを。
     
     
     
 国内盤の中で最も特徴的な帯を掛けていたのはCBSソニー・レコードであろう。横長の帯がジャケットの上部に置かれ、名付けてキャップ(帽子)型帯である。一般的には帯はジャケットに巻き付けられているため外れない。しかし、こちらのタイプはジャケットの上に載っているだけなのですぐ外れてしまう。従って、記憶の限りでは透明なシュリンクが張られていたと思う。
 我がコレクションを探してみると、「ひとりごと/ポール・サイモン」「栄光のル・マン/オリジナル・サウンドトラック(ミシェル・ルグラン)」「1958マイルス/マイルス・デイビス」「ウェルカム/サンタナ」の4枚が見つかった(前者の2枚に見られるオレンジの縞模様が懐かしい)。このうちサンタナとマイルスは裏側も横書きなのだが、サイモンとル・マンのサントラは縦書きで、3枚目の写真のようにセットすることもできる。すると、どちらが表なのかわからなくなるのだが、よくLPを棚にしまっておくと背表紙が日焼けして変色することが多かったので、このように縦にセットしておくとそれを防ぐことができた。後に紙ジャケの国内盤CDについている帯と同じ効果が得られたのである。
 まあ、そんなに偉そうに書くことでもないのだが、それほど異色の帯だったということだけはお伝えしたい。 

アナログ・コレクション:  ダブル帯付き国内アナログ盤3枚“TRILOGY”“LET IT BE”“HOUSES OF THE HOLY”

2018年03月03日 | ミュージック
 国内盤レコードの中で帯が2種類つくことがある。まずは時期的な理由によるものとしてエマーソン・レイク・パーマ−の「トリロジー」。73年の初来日時にリリースされ「来日記念盤」との銀色帯が加わっている。元帯にも「現代ロック界の頂点にそびえ立つ今世紀最大のトリオ 来日と同時に新作を発表!」とある。2枚の帯で完全にエマーソンの顔が隠れる。

 次にザ・ビートルズの「レット・イット・ビー」。アップル・レーベルのレコードにはリンゴの部分だけ丸い帯が用いられているのも特徴的だが、さらに「アカデミー賞受賞レコード」と赤字金帯が加わる。ビートルズのオリジナル・アルバムとしてリリースされた最後の作品だから注目度はかなり大きかっただろうが、はたしてどの時点での受賞なのかは調べていない。ただ、私が中学生の頃買った時にも確かに2種類の帯がついていた。だからこれを見ると懐かしさを感じる。こちらも2本の帯でジョンの顔がほとんど隠れる。

 最後はレッド・ツェッペリンの「聖なる館」。珍しく横帯である。これは日本盤だからというのではなく、海外盤にも付けられていたそうだ。子供の裸身を隠す意図があったと聞いたことがある。国内盤はこの横帯がジャケットを広げたりレコードを出す邪魔にはならないのだが、昨年購入した海外版リマスターLPには、ジャケ全体を巻くように付けられていたのでいちいち外さなければならなかった。こうしたところは日本盤はさすがだと思ってしまう。
 我が家にあるダブル帯は以上の3枚。「来日記念盤」というのは他にもたくさんありそうなので、他の方々で所有しているコレクションがあったらぜひご紹介ください。

HIGHLIGHT The Very Best of Toki Asako/土岐麻子

2017年07月28日 | ミュージック

 最近クイーン・オブ・シティポップと呼ばれている土岐麻子の新譜ベストアルバム "HIGHLIGHT" を購入した。

 本ブログで和製ポップスを取り上げるのは森高千里やオフコースくらいで珍しいことなのだが、土岐麻子については実は以前から聴く機会が多かった。というのは彼女がジャズやスタンダードを歌ったアルバムを出しているからだ。それをレンタルCDショップで何気なく見つけ、借りて聴いた。まず彼女の声が耳に残る。ハイトーンかつウィスパー・ボイス風の歌声が私にとっては魅力的だった。スタンダードを扱ったアルバムからの曲を集めた "Couleur Caf Meets TOKI ASAKO STANDARDS Mixed by DJ KGO" は曲の切れ目がなく一気に聴かせるアルバムだった。それも新鮮だった。というわけで私は土岐麻子をジャズシンガーだと思っていた。

 そんな時期を経て、今年1月にPINKというアルバムがリリースされけっこうラジオで曲が流れていた。あれ、この曲イイナ、誰が歌ってるのだろう?と思っていたらそれが土岐麻子。フレーズが耳に残る。メロウなアレンジも昔のAOR風で私好み。ここで遅ればせながら、彼女がポップシンガーであることを認識したのである。

 ここに至るまでFM東京のグッドラック・ライブに出演したり、この夏のSapporo City Jazzにも登場。残念ながら後者には行けなかったのだが、前者のスタジオライブはエアーチェックして(死語?)ライブの雰囲気を味わった。今月NHK-FMの番組「サウンドクリエーターズ・ファイル」にも2週連続で登場。そして、今回このベスト盤にたどり着いた訳である。

 最初と最後に新曲を置いた全15曲はとても聞き応えがある。今年出たばかりのPINKからの曲も含まれており、全ての曲で作詞を行っている。自らの解説によるとこのアルバムのテーマは“ダンス”であるとのこと。確かに元気あるノリの良い曲が並ぶ。その中でも3曲目の「乱反射ガール」は良い曲だ。好みのコード進行だ。他に「Gift〜あなたはマドンナ〜」は“シュペリエ−ルな”のフレーズが印象的な明るいポップスで作詞作曲はEPO。まさにそれらしい曲。「僕は愛を語れない」は80年代を思い出させるAORアレンジが心に刺さる。後は省略。一言付け加えるとすると、縦横無尽のメロディを独特の声で巧みに歌う土岐麻子ワールドを堪能できるアルバムである。


2017 今年のサッポロ・シティ・ジャズは「野宮真貴」ライブへ

2017年07月22日 | ミュージック

 11回目を迎えた今年のサッポロ・シティ・ジャズも、小野リサ、土岐麻子、渡辺香津美、われらが寺久保エレナなど魅力的なラインアップが揃う中、私が選んだのは「野宮真貴」。昨日がその公演日であった。

 昨夜はソールド・アウトで超満員。特設のテント会場も熱気にあふれていた。野宮さんと言えば元ピチカート・ファイブで、オシャレな渋谷系サウンドが頭に浮かぶ。だが、映画「男と女」のテーマ曲をカバーするなどフレンチな要素もあり注目していた。そして、釧路管内音別町出身、子供の頃は札幌や室蘭にも住んでいたとのことで、とても親近感がもてるシンガーである。

 ステージでは、ピアノ・ギター・ベース・ドラムスというシンプルな編成のバンドを従えて登場。何と1曲目は写真撮影が可能で、ライブの模様を積極的にSNSで発信してもらいたいとのこと。(ブログですがそうさせて頂きました。)冒頭は夏向きの曲をカバーしたニューアルバムWonderful Summerからの曲を中心に進行。途中でテレビのCMソングをいくつか披露。この曲、実は私が歌ってました!との紹介にどよめきと拍手が。さらに圧巻だったのはご当地CMソング・コーナーとして歌われた「千秋庵の山親爺」と「狸小路商店街の歌」。前者はバンドのメンバーも含めてとても良い曲と大絶賛、後者は私も充分に口ずさめるお馴染みの曲だが、実は作詞・野坂昭如、作曲・いずみたく、歌・朝丘雪路とボニージャックスだと紹介され、そんなにすごい人達が関わっていたのかと再認識。そして、アンコールではピチカートのメドレーが演奏され、コアなファンも満足できたに違いない。

 全体的に大人の雰囲気いっぱいの落ち着いたライブだった。もちろん野宮さんのファッションも含めてオシャレ感もいっぱい。フレンチ系の曲が演奏されなかったのが残念だったが、次回に期待しよう。

やっぱりオフコースはイイ、、、(その2)

2017年07月02日 | ミュージック

 もうひとつの思い出は、学生時代のバンドが卒業前に自主制作アルバムを作ろうと録音作業をしていた時大変お世話になった方の話。その人はバンド・ギタリストの大学の先輩で某レコード会社に勤めていて、オフコースのレコーディングに係わっていた。裏話的に教えてくれたのは、彼らはスタジオに入ってから曲作りを始める、その時に壁に紙が貼ってありそこに「愛」だの「別れ」だの曲のモチーフになる言葉が書かれていて、それを見ながらまずコード進行を考えながら作業している、当然歌は最後になるのだということだった。それが具体的に見えたのがNHKで放送されたドキュメンタリー番組「若い広場」のアルバムover制作過程を追った「オフコースの世界」。キーワードの掲示こそ見られなかったが、ラフなコード進行を元に肉付けをしながら仕上げていく模様をみて納得した。特に某曲の初期バージョンの練習風景が紹介されていたが、それが最終的に「愛の中へ」として完成させるというプロの力の凄さを見せつけられた。実は我がバンドもそのような曲作りをする場面が多かったので、かなりの親近感を感じさせてくれたのも事実であった。(中身は別として。)

 このような思い出の中、最近またオフコースを良く聴いている。特に好きな曲は、「水曜日の午後」「ワインの匂い」そして「きかせて」。動画サイトをチェックすると昔は頻繁にラジオ番組には出演していたようでスタジオライブの音源もいくつかアップされていて、つい聞き込んでしまう。そこで聞かれるスタジオ盤とは違ったコーラス・アレンジを参考に、近い将来自分でも演奏したいと思う。(「きかせて」はライブでは演奏していないと勝手に思っていたがちゃんとあることに驚き!)

 アルバムでは目下のところ「きかせて」や「YES-NO」、「時に愛は」などを含むWe areが好きなのだが、次作のoverも良い。ドキュメンタリーを見たことも興味を倍増させた。そして、これらの2枚のアルバムタイトルをつなげると、We are over(僕たちは終わった)となることの意味なんかも当時は考えていたものだった。この時実は鈴木康博がグループをやめる方向で進んでいたのを知ったのは数年後のことである。そういえば、4人編成になったオフコースのas close as possibleツアー(87年)の札幌公演に行ったものだ。もう30年も経つのだなぁ。

 オフコースは、しばらく経つとまた聞きたくなる。やっぱりイイ、、、


やっぱりオフコースはイイ、、、

2017年07月01日 | ミュージック

 オフコース。小田和正がオリジナルメンバーとして所属していたバンドだ。元々は鈴木康博などとのフォーク編成だったが、後年3名のミュージシャンが正式メンバーとして加わりバンド化した。三十数年前の頃、バンドとしてのオフコースはテレビにあまり出ず、小田和正のカリスマ性も加味され高い人気だった。シングル盤として出される曲はことごとくヒットし、アルバムも大注目だった(と思う)。

 当時社会人になったばかりの頃、私は学生時代のバンド活動を離れ、一人楽曲制作にあたっていたが、オフコースの曲はなぜ売れるのか?を探ってみようと彼らの曲を聞き込んだ時期があった。その結果、オフコースが大好きになってしまった。曲が良いことはそのとおりなのだが、コーラスやハーモニーの絶妙な点が曲の良さを引き立てていると理解した。それに習って自作曲もコーラスに凝ってみたりしたが、まるで声変わりのなかった小田氏やボーイソプラノだった鈴木氏両者の美しいハーモニーにかなうはずがない。ただ、同じ曲でもカウンターメロディをつけることや、バックヴォーカルのアレンジで全く違った印象になるということを学んだ。また、サウンド的に隙間の多い傾向があり、そのことについて小田氏は後述のドキュメンタリー番組で「オーバープロデュースせず、音的には足りない部分もあるけれど、それは聴く人が足して聴いてくれればいい」というようなことを語っていた。この時制作していたoverはまさにそれを感じさせるアルバムだったが、それも歌唱力の素晴らしさがあったからこそだろう。

 そういう中、名曲YES-NOを私自身バンドで演奏できるチャンスがあった。私はシンセと高音のバックヴォーカルを担当し、トランペット音のイントロ付きとなしの2バージョンを演奏した。ヴォーカルの男子が高い声も出て、オフコースのライブ版と同じキーで歌えた(たしかスタジオ版のキーより半音低い)せいか、聞いた人がサビのハーモニーのところが本物そっくりで鳥肌が立ったと言ってくれたことを今も有り難く覚えている。その時の録音が残っているが、たまに聞くと我ながらイイ感じだと自己満足である。しかし、実際にコピー演奏を経験してみて、アレンジはリズムも含めてそれほど複雑ではないのに、最小限の工夫で最大限に曲を引き立てているところが職人技であるとつくづく感じた。(続く)

ロジャー・ウォーターズ25年ぶりの新作 “Is This the Life We Really Want?” はプログレか?

2017年06月16日 | ミュージック

 ロジャーのことだから、恋とかロマンスなどではなく、現代社会の抱える問題へのアンチテーゼ、心の叫びが歌われているのではないかと思われるが、輸入盤が到着したばかりで歌詞をしっかり見ていない私はこの新作のサウンド面だけから述べたい。

 誰もが知るようにロジャーはピンク・フロイドのメンバーだった人。そして今現在もフロイド時代の曲をツアーで披露している。その辺がどのようにこの25年ぶり(!)の新作に生かされているのか興味はあった。反面、デヴィッド・ギルモアの’15年のソロやフロイドのラスト・アルバム発売時には予約してまで購入した私は、あまり期待せずにこの新作の到着を待ったのも事実。ところが、予想外に良かった。

 1曲目からアコギと歌にストリングスが加わりロジャーらしい雰囲気で始まる。THE DARK SIDE OF THE MOONで聞かれたようなダイアログが所々挿入されている。演奏面では決して派手な楽器のソロなどはないのだが、独特の歌世界に引き込まれる。6曲目のタイトル曲まではじっくり聴かせる曲が続く。7曲目のBird In A Galeは少しアップテンポの曲で、ロジャーの雄叫びがドラマチックだ。9曲目のSmell The Rosesもアップテンポの曲でプログレ風の緩急ある展開に引き込まれる。フロイドのアルバムでは「アニマルズ」が結構好きなのだが、それと同じように犬の鳴き声が入り、まるで「アニマルズ2」の装いだ。

 ギルモアのソロ・アルバムRATTLE THAT LOCKがフロイドとは離れジャズなどの要素もある自由な作りだったが、ロジャーの作品は一貫して従来のロジャー節が聞かれるようなアルバムである。(ボックス・セットのSOLO ALBUM COLLECTIONを持っているので、それと比較した個人的感想。)そしてこのアルバムがプログレかどうか…、ジャンルにとらわれないロジャー・ミュージックだと思うがどうだろう?



ジョン・バリー映画音楽集 "THE REAL… John Barry The Ultimate Collection"

2017年06月13日 | ミュージック

 ネット・ショップのポイントが貯まったので何か購入しようと探した中見つけたのがこの3枚組CD作品。ジョン・バリーの映画音楽については以前こちらこちらこちらで紹介したのだが、改めて他の作品も聞いてみたくなった。しかしながら、このアルバムにはすでに持っている曲も重複している。その音源はかつてカセットテープ版(写真右下)で聴いたのと同じ(ということはサントラではなく別演奏)と思われるが、音がさらに良くなっている(気がする)。ジャケットの記載ではオリジナル・レコーディングからマスターされたアルバムとの表記が見られる。

 ということで馴染みのある曲も充分楽しめるのだが、購入の目的は未知の曲。3枚のディスクの中には多数あった。後年の作品になるに従ってストリングスが中心のオーケストラ的サウンドが多くなる。特にDisc3にはWALKABOUT, MARY QUEEN OF SCOTS, BODY HEATなど初めて知る作品名が並んでいる。Somewhere In Timeのような雰囲気の曲が多く、それは私にとってとても好ましいことであり、至福の時を過ごすことができた。そしてジョン・バリーの音世界がさらに広がった。FOLLOW MEという名曲がなぜか収録されていないが、007のようなアクション・サウンドとイージーリスニング的な夢弦サウンド両方がお好きな方にはお薦めできるアルバムである。


アナログ・コレクション:「男と女」US仕様サントラLP国内盤

2017年06月12日 | ミュージック

 先日リマスターのサントラCDを紹介したばかりだが、関連して本映画のアメリカ・リリースのサントラについて触れたい。こちらの音源はステレオなのである。リマスターCDを含む私の持つサントラはすべてモノラル録音である。フランス仕様がモノラルなのであろうか?詳細はわからないが、現実に2種類の音源があるのだからファンとしては両方所有しておきたい。

 それで手元にあるのはUS仕様の日本盤LPである。ステレオと言っても、かろうじてヴォーカルは中央から聞かれるが主な楽器の音は左右に振られ、モノラルの音源を無理やりステレオ化したように思われる。さらにこれに関しては、かつてモノとステレオの両者が1枚に収録されたCDが発売されている。今は廃盤で少しばかり高額で取引されているようだ。それを持っている方は「一粒で二度おいしい」ことになるのだろうから、少し羨ましい。

アナログ・コレクション:サントラLP「パリのめぐり逢い」フランシス・レイ

2017年05月27日 | ミュージック
 「男と女」同様、小学生の頃に聴いた一連のフランシス・レイ作品は「あの愛をふたたび」「個人教授〜愛のレッスン」「さらば夏の日」など。特に「愛の〜」と「さらば〜」はラジオのチャート番組でも人気が高く、よくかかっていたものだ。そして、もうひとつ印象的だったのが「パリのめぐり逢い」である。私はこの映画を一度も見ていないのだが、当時関光男氏のラジオ番組で頻繁に紹介されていた記憶があり、曲はすっかりお馴染みになっていた。レイの弾くボタン式アコーディオンと思われるイントロから始まる美しいメインテーマの他に「キャンディスのテーマ」「カトリーヌのテーマ」の3曲がよく放送され、これらを元に私の想像の中では映画が完成されていた。

 こちらに紹介するのはUS盤サントラ。本国盤ではないためかネットで安く手に入ったが、アナログ盤としての音はとても良いと思う。安心して聴くことができるので、時々ターンテーブルに置いて楽しんでいる。米タイトルはフランス語VIVRE POUR VIVREをそのまま英訳したLIVE FOR LIFE。が、日本題の「パリのめぐり逢い」は全く異なったロマンチックな印象をもたらしているので、かなり日本人受けしたのではないだろうか。こうしたセンスはさすがである。


「男と女」フランシス・レイ/サウンドトラック・リマスター盤CD

2017年05月21日 | ミュージック
 フランシス・レイの映画音楽は自分が小学生の頃から大好きな存在であった。なかでも「男と女」は名曲だ。昨年そのサントラのリマスター盤が発売された。私は数十年前にパリにて購入した「パリのめぐり逢い」とのカップリングCDとフランス本国発売のアナログ盤(レーベルから後発プレスと思われる)を持っているのでその購入をどうしようかと迷っていた。

 カップリング版は、これまた名曲である「パリの〜」のサントラ作品も同時に楽しめるため、かなりお得なCDである。ところが、冒頭の「男と女」のメインテーマ曲の最後がLP版と違ってフェードアウトするという不思議な処理がなされていた。もしリマスター盤が修正されているなら間違いなく買いである。その実情はわからなかったが、各ネットショップで若干ディスカウントされている状況もあり思い切って注文してみた。

 結果としては1曲目のフェードアウトはなし。そして、音がとても良い。「今日、あなたが」「あらがえないもの(別訳:愛は私達より強く)」などしっとりとした雰囲気のある曲も新たな魅力で耳に入る。リマスターの恩恵が実感できた。また、リーフレットには写真、解説、歌詞・訳詞も掲載され充実している。

カセットテープ・コレクション~FM東京深夜放送「ジュン・エ・ロペ~スペース・フュージョン」

2017年01月24日 | ミュージック
 FM東京で1970年代の終わりから80年にかけて放送していた「スペース・フュージョン」というラジオ番組をご存じだろうか。記憶では土曜日の深夜(日曜午前3~5時?)に聞くことができた。当時イタリアのPFMなどのバンドが日本でも人気を博し、広がりつつあるユーロロックを中心に紹介する番組であった(と思う)。ナレーションはその語り口に独特の雰囲気を持つ北玲子さんが担当し、オープニングの決まったフレーズがあった。それは「始めに宇宙カオスがあった。カオスは豊かなる大地ガイアと地獄タルタロス、そして神々の内で最も美しい存在エロスとの混在であった…」と始まり、そのバックにはキング・クリムゾンの「エグザイル(放浪者)」が流れていた。さらに毎回冒頭に神話が紹介され、それが深夜の時間帯に何とも言えない不思議な宇宙世界へ聞き手を誘ってくれるのだった。学生時代、一人暮らしをしていた私のノスタルジックな思い出のひとつである。

 先日実家に置いたままにしていた昔のカセットテープを持ってきて、何本かを整理していたら、このスペース・フュージョンを録音していたテープが見つかったのである。涙が出るほど懐かしかった。放送日が不明なのだが番組の最初から録音されていて、定番の語りを聞くことができる。この回の神話は「クレタの娘、ガラティアの物語」。当時そのバックに流れるジャズ・ロック風の曲が気に入り、実はその後長年に渡り探し求めることになる。覚えていたのはロベルト・コロンボというアーティスト名。しかし曲名がわからない。今のYouTubeは便利なもので、探すと何曲かがアップされていた。ひとつずつ確認し、とうとう探し当てることができた。(”Caccia Alla Volpe” by Roberto Colombo)その曲がしっかりカセットの中に残っていたのである。しかも、当時発行されていたFM番組誌(週刊FMかFMレコパル)の断片が挟まれていた!そして、この日のメイン(スペシャル・アピアランス)はイタリアン・スペシャル7としてIl Volo(イル・ヴォーロ)のアルバムを紹介。それを聞いて、良いバンドだなあと思ったもののすっかり忘れていた。たった1本のカセットテープではあるが、タイムマシンに乗って過去に戻った気分にしてくれた。(ちなみにジュン・エ・ロペは番組スポンサーだったはず。)

 他にもないかと100本ほどあるテープを探したが残念ながらスペース・フュージョンはこれ1本のみであった。しかし、ナレーションの北玲子さんが出演している音源がもうひとつ見つかったのである。(続く)