ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

ディクスン・カー「連続『読冊』時件」(ネタバレなし)

2019年12月31日 | ミステリー小説
 巷では「これミス2019年」などの話題の時期だが、今年はそれに見向きもせず私はカーの未読作品に没頭していた。標題は毒殺事件ならず「この時期に連続的に何冊も読んだ件」という意味である。内容としては新訳2冊、文庫の旧版3冊、そしてハヤカワのポケミス3冊計8作品。これほど何冊も読み続けられるのは、言うまでもなくカー(あるいはカーター・ディクスン)がフーダニットに徹した本格もの探偵小説の書き手だからである。それに不可解状況のハウダニットの要素が加わることでやめられなくなる。そして、最終的には「意外な犯人」で終わる。昔から味わってきた探偵小説の楽しさを今改めて感じている。以下、つれづれになるままに。
    

 新訳の2冊はそれぞれヘンリー・メリヴェール卿とフェル博士が探偵役。どちらも船が舞台の物語だが、当時の客船や輸送船の予備知識があるともっと内容が理解しやすいのかなと思う。新訳はさすがに読みやすい。
    

 トリックを知りながら改めて読んだのが2冊。「連続殺人事件」は不可解な飛び降りのトリックを覚えていたが、物語としてはそこがメインではないので意外な犯人に堪能。「爬虫類館の殺人」も同様。密室のトリックは知っていたが、それでも面白い。両作とも主人公とヒロインのロマンス的要素があるのも作者らしい。「帽子収集狂事件」は江戸川乱歩の一押し作品である。当時男性がシルクハットを身につけるという背景を理解しておいた方が良さそう。ロンドン塔は現存の場所で一度行ったことがあるが、読んだだけではイメージがわきづらかった。ある程度予備知識があると理解が深まるだろう。
    

 ポケミスの3冊。「五つの箱の死」は日本語の訳文が今一である。例えばひとつのセリフの中に「〜なのです。〜なのです。」と続いたりする。あまりにも直訳すぎる表現も多い。見ると初版が1957年なので、現在の新訳版と比べるのは酷か。主人公ジョン・サンダース博士が「読者よ欺かるるなかれ」にも引き続き登場する。「五つの…」で出会った女性との仲も気になる「読者よ…」である。「パンチとジュディ」は昔アメリカのテレビ番組「白バイ野郎ジョン&パンチ」を思い出すタイトルだったが、パンチもジュディも登場しない。実はイギリスの人形劇のキャラクターでドタバタ劇の象徴らしい。元諜報部員の主人公「僕」が語る物語はサスペンスに満ちており、途中でやめられなくなった。そして、まさに「意外な犯人」である。ちなみに、この「僕」ことケン・ブレイクは「黒死荘の殺人」で初登場後、今回のヒロインのイブリンと「一角獣殺人事件」(私は未読)で出会い、本作で結婚?(なぜ?がつくのかは本作のドタバタラストに注目を)し、「ユダの窓」にも登場する。
    
 カー「読冊」はその後も続いており、今は「死者はよみがえる(ポケミス版では「死者を起こす」)」を両方見比べながら再読中である。他に「弓弦城殺人事件」「血に飢えた悪鬼」「第三の銃弾(完全版)」「死の時計」「嘲(あざけ)るものの座」「剣の八」が待機中。その中、12月20日に創元推理文庫から「四つの凶器」が発行された。アンリ・バンコラン登場の最終作60年ぶりの新訳で、即購入である。至福の時が当分続きそうだ。

ヤマハのパシフィカはどんなギターなのか(その2)

2019年12月19日 | ギター
    
 PACIFICA112V YNS(イエローナチュラルサテン)についてのその2。
 試奏してみた。最初は弦高が低すぎて至るところビビリ音がしたため、調整したら6弦12フレットちょっと高めの2.2mm。だがどのフレットもピッチの狂いがなくコードを押さえるときれいな和音を奏でる。次に各弦、各フレットを単音で弾いてみると5・6弦に関してはあまりサスティーンが出ない、ちょっとつまった音という印象。その一方で、弾いていくうちにネックの振動がコンター加工されたボディに大きく伝わるのも感じられた。

 次にアンプに通して音だし。本ギターのピックアップはSSHで、コイルタップ機能もある。切り替えによるHとSの音の違いは顕著で組み合わせで多彩な音づくりが可能である。ノイズは若干出るが許容範囲。フェンダーのアンプMUSTANG GT40に繋げてみたが全体的にかなりブリリアントで良い音だ。セレクターによってはストラトのような甘い音も出る。そしてSSHなのはやはり便利だ。両方の良いところを活用できそう。ハムバッカーのPUは本体直づけ。そのためか、ピックガードの形が特有である。
     
 しばらく弾き込んでいくとネックが手に馴染んで弾きやすさを感じる。その要因の一つがネックの細さだろう。ナット幅を測ってみると他のギターが42mmくらいあるのに対しパシフィカは40mmである。この2mmの差は意外と大きいのではと思う。しばらくパシフィカに熱中してストラトなどに戻ると弦と弦の間が広くて一瞬戸惑ってしまった。

 そして一番驚くのは長時間弾いても、チョーキングやアームを多用してもチューニングがあまり狂わない点だ。これはパシフィカ紹介の動画サイトでインフルエンサーの一人、Rickeyさんも強調していた(「人気ギターPACIFICA112VMを弾きまくりレビュー」)が、まったくそのとおりである。本当にしっかりした作りなのだなと思う。ヘッドの裏面にMADE IN INDONESIAとシール表示があるが、国外生産でもサウンド的には問題ない仕上がりだと言える。

 現在の最高機種の611・612タイプになるとピックアップがセイモアダンカン、ロック式ペグなどさらに充実した機能を有するようなのだが、価格は6万から7万円程度。コストパフォーマンスが相当高いと言えるのはさすがヤマハである。私が持つYAMAHA製品はギターがSG-2000とFG-150、シンセがDX7、そしてシーケンサーとしてQX3とQY300。QY300のみフロッピーディスク・ドライブの不調があったけれど、その他はほとんど問題なしでまだまだ使える。私にとってヤマハは信頼のブランドなのだが、今回のパシフィカによってその思いはさらに強まった。特に私のような初心者以上・中級者未満の者にとっては、エレキギターを弾くことの楽しさがさらに増すギターだと言えるだろう。
 結論、このギターは良い!ピックアップ違いの最上級パシフィカも試してみたくなった。

ヤマハのパシフィカはどんなギターなのか(その1)

2019年12月17日 | ギター
 ヤマハのエレキギターであるパシフィカが人気だ。
 結論から言おう。このギターはとても良い!
     
 パシフィカというブランド名は昔から知っていたが廉価版というイメージだったので、それほど興味を引く存在ではなかった。だが、KIRINJI のギタリストである弓木英梨乃嬢が好んで使っていることを知って興味がわいた。何か秘密があるに違いない。そもそも動画サイトのインフルエンサーの人達が高評価を出していることも人気の一因と思われ、ネットショップでは入荷待ちの賑わいも見られる。果たしてパシフィカはそんなに良いギターなのか。

 かつて札幌市内の楽器店で試奏したことはあるのだが、改めてその人気の秘密を知りたくて、我慢できず黒金曜特売中のサウンドハウスさんにて購入してしまった。一口にパシフィカと言っても価格帯から色まで種類が多いギターだが選んだのは木目が見えるイエローナチュラル・サテン(YNS)の 112V。お値段としては最低ランクでエントリークラスと思われるが、自分の小遣いの範囲で買えた一本である。

 こちらは在庫有りの状態だったので注文後程なく到着(現在は一ヶ月半待ちの表示が)。ヤマハのソフトケースが付属。新品のギターを買ったのは久しぶりなのでまずは外観をチェック。木目がはっきり見えるボディは4ピースなのがわかる。YNSは全く塗装がされていないので、表面をなでると少しざらつく感触がした。ちなみに木材はアルダー。ネックは指板がローズウッド。低価格ギターにしては木材の使い方の満足度が高い。重量を計測したら約3.3キロ。これは我が家にあるエレキギターの中ではテレキャスターと同じで最軽量。よって取り回しがしやすい。ネックの反りのチェックを定番の方法(2フレットと17フレットを指で押さえてその間の弦高状態を見る)でしてみたが、全く問題なかった。(続く)