
こうして小品が並ぶファーストからなぜ2作目のトレスパスのようなサウンドに変わっていったのだろうかと単純に思ってしまう。いや、2作目以降も確かに短くまとめられた私好みの曲もあるのだが、ほとんどが大作志向である。本作には全17曲が収録され、フォークロック的な作品が並ぶ。曲によってストリングスやホーンセクションが導入されている。また12弦ギターが使われバックコーラスが入るのは次のTrespassでも同様。その中特に注目したいのは、ゲイブリエルの声。これは変わらない。エコー(リヴァーブ)が大きくかかり、ソフトに歌う傾向があるがその後のジェネシス・サウンドを担う予兆を感じさせるほど表現力豊かで存在感がある。このキング盤には歌詞カードがついていてイラストが描かれているのも実はプログレバンド的な雰囲気を醸し出していると思う。彼らの壮大な歴史がここから始まったことは間違いないのである。