ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

ジノ・ヴァネリ~アダルト・オリエンテッド・プログレッシブ・ロック2

2013年05月31日 | ミュージック
 アルバムBrother To Brotherの後にリリースされたNightwalker (1980)の頃にはジノも日本でもすっかりヒットメーカーの位置づけになったと思う。ところがその後、曲のドラマチックさが薄れ、シンプルにビートのきいた短めの曲が増え始める。今聴くと、Black Cars (1985) もBig Dreamers Never Sleep (1987) もなかなか良いのだが、当時はサウンドの急激な変化に戸惑いを覚えたことも事実だ。さらに、その後彼はジャズ的なサウンドに変化する。でも、私はそのアルバムYonder Tree (1995) も大好きだ。そしてその後は徐々に彼の持つ「激しさ」が薄れていった。それでも精力的にライブ活動は行っていたようで、YouTubeでは様々なパフォーマンスが見られる。
 ライブといえば、90年代初頭に初来日をしたはず。そのツアー内容のわかるライブ盤がLive In Montreal (1992)である。地元カナダのモントリオールでのライブだけに、聴衆も熱狂的。しかしこのツアーで驚くべきはベース奏者がいないこと。打ち込みのシンセ・ベースが担当している。従って、他のミュージシャンはそれに合わせて演奏しているのだが、特にドラマーのパフォーマンスは驚異的。テンポの緩急があるにもかかわらず正確かつパワフルな演奏を聞かせる。当時、在京の友人が来日公演に行って、良かった!と言うのを聞いて、北海道人の私はとても悔しい思いをしたものだ。なお、このアルバムと同内容のビデオが存在するらしく、YouTube で探すと映像付の演奏を楽しむことができる。(そういえば、74年の公式ライブ映像だったか、後のジェネシス・ツアーメンバーとなったあのダリル・スターマーがギターで参加していたのも印象的だ。)
 時は流れ、Slow Love (1998) (これも地味だがなかなか良いアルバムで9曲目の A Woman Crossed In Loveはナイロンクラシカル・ギターが活躍する私の愛聴曲)以来私もしばらくジノから離れていたのだが、現時点で最新作のThe Best And Beyond (2009) を最近購入した。スタジオライブとして録音された自曲のセルフカバー集だが、中のVenus Envyがとても良い。曲調がまるで歌謡曲で、きっと日本人受けするに違いない。で、この曲はぜひ郷ひろみ氏に歌ってもらいたいと決めつけている。絶対に合うと思うのだが。
 そして、このアルバム中心のパフォーマンスを引っ提げて昨年ジノは4度目の来日を果たした。その情報は得ていたが、やはり簡単に行けるはずもなく大変残念であった。その時に行われたタワーレコードのインタビュー記事(http://tower.jp/article/feature_item/2012/11/13/0103)で「戦争組曲」の再録やジャズブルースとして制作中の新作アルバムについて言及している。楽しみである。
 今回改めて彼のアルバムを聴き直したのだが、やはり彼の曲はカッコイイ。さすが、ミュージシャンズ・ミュージシャンだ。今後も精力的に音楽活動を続けていってくれそうな彼に大いに期待したい。


ジノ・ヴァネリ~アダルト・オリエンテッド・プログレッシブ・ロック1

2013年05月30日 | ミュージック
 以前NHK―FMで午後7時15分頃から放送していた音楽紹介番組で初めて聞いたのが、ジノ・ヴァネリのギスト・オブ・ジェミニ The Gist Of The Geminiであった。予備知識もなく何となく聞き始めたそのアルバム、当初はポップソングだけどシンセが多用されているな、くらいの感想だったのが、後半「戦争組曲」が始まってからは、これはプログレだわ!と耳が釘付けになった。たまたまラジカセに録音していたので、事後何度も聞き返した。そしてジノ・ヴァネリというミュージシャンに大きな興味を持ったのである。高校生の頃だった。
 その後大学に入ってから、私にとっては既に大きな存在だったジノ・ヴァネリもまだ知る人ぞ知る存在でしかなかった。やがて名盤 Brother to Brother (1978) がリリースされ、かの名曲I Just Wanna Stop が大ヒットとなる。AORの要素に満ちた曲だが、他にも楽器を弾く者が大喜びするテクニカルな曲が含まれる。 アパルーザ、そしてアルバム・タイトル曲は今聞いても名曲だ。このアルバムに参加していたギタリスト、カルロス・リオスはラリー・カールトンの弟子だったそうで、確かにギターの音色やフレーズでの影響力を感じる。
 当時、輸入盤では彼の過去のアルバムが購入できた。基本的にはロックなのだが、ボサノバ、ジャズ、R&Bの要素も併せ持つバラエティに満ちた楽曲。サウンド的には兄のジョー・ヴァネリの貢献が大きい。彼自身が素晴らしいキーボード奏者であるにもかかわらず、別にオルガン奏者を迎え入れたり、ドラマーの他にパーカッション奏者を2名加えリズムを充実するなどの特徴的なサウンド作り。さらにシンセ・ベースを多用したり、ドラマチックな展開を聴かせるなどプログレ的な要素が加わる。その観点からいくとPowerful People (1974) やStorm At Sunup (1975) というアルバムに収録された大作、Powerful People、Storm At Sunup、Where Am I Going はどれも聴き応え充分。ソロプレイも見事。次作の A Pauper In Paradise (1977) はアレンジャーであるドン・セベスキーを迎え、オーケストラの加わるタイトル曲が壮大なプログレ組曲となりこれも通には涙もの。アルバムA面のラストを飾るBlack and Blue というバラードも荘厳なストリングス・サウンドがバックに流れ、ジノの情感豊かな歌唱により私の唱える「夢弦サウンド」そのものである。(次回に続く)


ビートルズが手にしたVOX製ギター

2013年05月21日 | ギター
 昨日の新聞に、ザ・ビートルズのジョン・レノンやジョージ・ハリスンが使ったエレキギターがオークションに出され、約4,200万円でアメリカのコレクターに落札されたという記事が載っていた。写真を見るとVOX製のギターのようで、とても変わった形をしている。早速VOXの英サイトを確認したらこのニュースの掲載と同時にギターの説明も出ていた。http://www.voxamps.com/news/article/beatles-custom-vox-guitar-auction/ 
 それによると、ヘッドにVox Custom の表記、24フレットのローズウッド指板と四角いインレイ、ホロウ構造のマホガニー・ボディ、片側のみのf型ホール、音質調整用の6つの押しボタンのあることなどが特徴として述べられている。
 併せてビートルズの機材をまとめた本を持っていたのを思い出した。シンコーミュージック社が2010年7月に発行したThe BEATLES EQUIPMENT STORIES である。ビートルズのメンバーが使用したり所有したギターやアンプ類が網羅された解説書である。念のため開いてみると108ページに載っているではないか。VOX社のケンジントンという名のギターだ。解説によるとそもそもこのギターは66年の英国楽器展示フェアに出品されたプロトタイプで、2本のみの製造であった(1本のみという別説もあり)。その後改造され67年にビートルズへプレゼントされたらしい。ジョンは「ハロー・グッバイ」のビデオ撮影のリハーサルでこれを持ち、ジョージも「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のビデオ・リハで手にしているそうだ。が、結局本番では使われず、実際の音が残っているわけではない。その後ジョンからアップル(レコード)のスタッフに贈られ、時を経て2004年には英国クリスティーズ・オークションに出品。約2,500万円相当の価格で落札された。従って今回は2回目のオークションであり、わずか10年で2倍近い価格になったことになる。それにしても4,200万である。札幌でも家が一軒は建って恐らくお釣りがくるだろう。驚きで言葉が出ない…。
(写真:北海道新聞のオークション記事とThe BEATLES EQUIPMENT STORIESの該当ページ)


怪奇趣味の本格推理作家 カーと三津田信三

2013年05月14日 | ミステリー小説
 ジョン・ディクスン・カー(別名カーター・ディクスン)は本格物の推理小説作家として定評があり、私も大好きである。作風の特徴として、①密室事件などの不可能犯罪②幽霊魔女などにまつわる怪奇趣味③ユーモラスな登場人物(探偵)の三点が挙げられる(二階堂黎人「名探偵の肖像」講談社文庫版の「地上最大のカー問答」による)。最初に読んだのは子供用に書き直された「魔女のかくれ家」(あかね書房)であった。この作品にはまさにその三大要素が盛り込まれており、とりわけ「怖さ」に布団をかぶりながら夢中になって読んだものだ。カーの作品では密室を扱ったものが多く、物理的にも心理的にも様々なトリックが考案されている。そこも大きな魅力だが、実は私は怪奇趣味の側面がけっこう好きで、カー好きな理由もそこにある。最近は「黒死荘殺人事件(ブレーグ・コートの殺人)」(創元推理文庫)を購入し、今途中である。(実は買っても読み切らずに置いておく習性(積ん読)のため、この本は買ったことを忘れて2冊も購入。)幽霊の出る館、降霊術など最初から話しに引き込まれていく。(写真上:2冊購入してしまった黒死荘…とカー作品)
 ところで、日本の作家にも怪奇趣味を作風とした推理作家がいる。三津田信三である。彼の場合は完全なホラー・ミステリー作家である。デビュー作の「ホラー作家の棲む家」(後に「忌館」と改題)を書店で手にしたのが彼を知ったきっかけであるが、その作品が実に気持ち悪く、第一印象はあまり良いものではなかった。ところが、次に読んだ「首無しの如き祟るもの」はまさにカーの三大要素が織り込まれたような作品であった。不可能犯罪や不気味な現象に対する論理的説明、探偵役の刀城言耶のユーモア(人物が)など、この作品で改めて三津田ワールドにのめり込んでしまった。一応の解決を示しながらも疑問を残すような結末もカーター・ディクスンの「火刑法廷」の趣がある。続いて読んだ「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」も日本的怪奇と幻想の世界で、加えて最後に示される事件の複数の解答に読者は翻弄される。どちらも登場人物は多く、横溝正史の雰囲気も感じさせる。正直言って「首無しの…」は途中真相の一端に気がついてしまったが、それにしてもホラーミステリーとして抜群に面白かった。続く「作者不詳」は迷宮草子という同人誌を巡る怪異現象の話。各話を読み始めると実際に読み手の身辺に怪異心霊現象が発生し、物語の中の謎を解明することでその危険が回避できるという内容。手に汗握る展開で、実に読ませてくれた。三津田氏は密室ものなども扱い、今後も頑張って新作を発表していただきたい作家の一人である。(写真下:講談社版を並べるだけで独特の雰囲気。)
 こんな状況なので、数年に一回は行くことのある京都にまつわる怪異と土地を解説した「京都妖怪案内」(佐々木高弘・小松和彦共著)も読んでしまった。この趣味、さらにエスカレートしていきそうである。


ギター弦とリッケンバッカー330について

2013年05月12日 | ギター
 今回はギターに関する小さな話題を。①マーティンM-36の弦をエリクサー・ナノウェブに張り換えた。ピッチがさらに安定したように思われる。フレット毎の音程も正しくキープされる。例えば、Eに合わせた6弦で3フレットを押さえるとGがややシャープしてしまうような現象がこちらの弦では生じないのだ。弦によって安定度が違ってくるということなのか。確かにナノウェブは高価であるが、現在ヤマハ札幌店ではギター・ベース弦の最大4割引を実施中。たまたま顔を出したらこの弦もあり、実売1,200円弱だったので1セット購入。お買い得だと思う。
 ②リッケンバッカー330について。G7sus4をジャ~ンと鳴らしてみる。ビートルズのA Hard Day’s Night イントロぽい。実際は360の12弦63年モデルなので全く違うはずなのだが、リッケン独特の箱なり感なのかとても似た音色になる。そして、このギター、じっくり見ると実に贅沢な作りだ。まずメイプルの木目が美しい。ファイアーグロー(レッドサンバースト)の彩色も特にグラデーションが美しい。ピックガードが浮き上がり二重構造のように見えるのも豪華。ネックは細く、太い指の私には少し弾きづらさが残るが、指板はラッカー塗装されており感触は良い。また、ネック内に2本のトラスロッド(芯)が通っているので、反りに強いらしい。そして、「いつも弦が張られある程度調整された状態で維持されるよう設計されているため必要以上に弦を緩める必要ありません」との記述が取説にも見られる。トーン、ボリューム部の第5のスイッチ(左下写真の一番左コントロール)が2つのピックアップによる音量のミックス量の調節及びイコライザー機能仕様になっており微妙な音作りが可能。あまり弾き込んでいないのでまだ指に馴染んではいないが、コード弾きだけでもこのギターでなければ出ない音がすると思う。アンプにつないだ音の感想等は今後に続く。