ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

“PREMONITIONS”スティーヴ・ハケットのカリスマ・レーベル・ボックスセット

2015年10月28日 | プログレ
 当初このCD14枚組と目されるアルバムの発売を知った時、詳細がわからなかったこともあり買うことはないだろうと思っていた。後日カリスマ・レーベル時代のアルバムが中心とわかったので、それなら全てCDかLPで持っているからなおさら購入はなしと判断した。ところが内容の詳細がわかった時、それは即ちスティーヴン・ウィルソンによる初期アルバムの5.1サラウンドミックスDVDが含まれるという内容であったが、完全に葛藤が生じてしまった。そのためだけに1万円以上もかけるのか、どうなのか。そして今日現物が我が家に到着したわけである。

 写真のとおり、CDよりかなり大きめのサイズのボックスセットである。外箱のカヴァー・イラストとロゴデザインはロジャー・ディーン。中にはCDやDVDを収めた紙製のケースが2冊と、カリスマ時代の写真や歴史、スティーヴ本人によるアルバム解説等を掲載したブックレットが収納されている。ボックスのタイトルPREMONITIONS(直訳は「前兆」)は実はファースト・ソロアルバムVOYAGE OF THE ACOLYTEの元タイトルで、スティーヴが提案したら会社が難色を示したそうだ。今回40年ぶりに実現したことになる。14枚の構成を見る。

 ディスク1~4には6枚のカリスマ・レーベルのオリジナル・アルバムがアルバムごとではなく収録されている。シングルヴァージョンやBBCのラジオ番組用セッションなども含まれる。ディスク5~8は未発表も含むライブ音源集。かつてNHK-FMで一部の演奏が放送されカセットテープに残していた79年オックスフォードのニューシアターでのライブが初めてCD化されたのが嬉しい(ディスク6)。続くディスク9~10は2枚目PLEASE DON’T TOUCHと3枚目SPECTRAL MORNINGのスティーヴン・ウィルソンによるニューステレオミックス。そして残りのディスク11~14の4枚がDVDで、同じくスティーヴン・ウィルソンによる新たな5.1サラウンド・ミックスによるPLEASE DON’T TOUCHとSPECTRAL MORNING、さらにNew pseudo 5.1 Surround Up-Mix from the original stereo master tapesと記載のある1枚目VOYAGE OF THE ACOLYTEと4枚目のDEFECTOR。

 手元に来てわかったのは新たな5.1サラウンドはPLEASE DON’T TOUCHとSPECTRAL MORNINGの2枚のみであるということ。そして私は以前紹介したようにPLEASE DON’T TOUCHの旧B面がこの上なく好きなので、まずはそのサラウンド・ヴァージョンから試聴を開始した。DVD収録のサウンドは96kHz/24bitで聞くことができるので全て音がよい。いわゆるハイレゾ・サウンドである。そして5.1サウンドは、以前は気づかなかった細かい楽器の音が所々聞こえてくる。The Voice Of Necamでは音が前後左右から聞こえるなどの工夫も。しかし分離が良すぎて全体的なサウンドの統一感に欠けているように思われた。やはりステレオで、それもLPで何度も聴いていたのでそれが耳にこびり付いているのだろう。これはこれとして、別物として楽しむのが良いのかもしれない。そういう意味ではちょっと期待はずれな気がした。

 意外と詳細不明のディスク13~14が良かった。説明を訳すると「オリジナルのステレオ・マスターテープから起こした新たな模擬5.1サラウンド・ミックス」というような意味だろうか。オリジナルのマスターはステレオ2チャンネルなのだから何故そこから5.1を作ることができるのか不可解だが、聴いてみると確かに後ろから独立した音が出ていて、こちらの方が統一感ある立体音でとても良い感じであった。こちらもハイレゾでの収録で音質も良好。

 さて今日は一部のみ聴いての感想だ。全てを聴き終えるのに少し時間がかかる。大枚はたいて購入したのだからこれから徹底的に楽しもうと思う。
(※ブックレットにはいつの時期か不明だが、足下のエフェクターボードとTaurus Pedal Bassの写真が!)

大貫妙子&小松亮太のTintライブ in Sapporo

2015年10月21日 | ミュージック
 大貫妙子とバンドネオン奏者の小松亮太による札幌でのコラボ・ライブに行ってきた。予想以上に質の高い素晴らしいライブであった。

 大貫妙子は昔から好きでアルバムもたくさん持っている。特にフランスぽさを感じさせる楽曲が良くて、私のお気に入りのアーティストの一人である。昨年40周年記念のライブをWOWOWで見て、あれも素晴らしかった。そんなわけで札幌でライブをやると知った時にすぐにチケットを手配した。しかし小松亮太というバンドネオン奏者のことは全く知らなかった。7月にNHK-FMの番組に二人で出演しているのを聞いてこの度の新作アルバムに興味を持ちCDを購入。それがまたまた予想以上に良くてすっかり気に入ってしまった。そのような状況でライブ当日を迎えた。

 まず小松亮太バンドが登場し、バンドネオン中心のタンゴを演奏。テクニックに裏付けされた迫真の演奏で聴衆はその1曲目から引き込まれていたと思う。小松氏も写真で見るよりもっとくだけた、親しみやすい雰囲気のお兄さんで、好感が持てた。続いて大貫妙子が登場。二人のコラボ演奏はTintの曲からが中心。驚いたことにアルバムと寸分違わぬ演奏に聞こえた。特筆すべきは、小松氏の奥方、近藤久美子氏の弾くバイオリン。バイオリンの音色がバンドネオン、タンゴにとても合っていると再認識。また、その演奏はテクニカルだがさりげない。カッコイイの一言である。私はHiver(イヴェール、フランス語で冬の意味)という曲が大好きで、これは私好みのアルバムOne Fine Dayに収録されているのだが、今回のタンゴ調のアレンジも素晴らしく生で演奏を聞くことができ感動だった。

 大貫さんは札幌の芸術の森という場所にある芸森スタジオを気に入っていて今回のTintもそこで録音したということと、札幌にも居を構えていることは既知の事実だったが、大倉山のスキー・ジャンプ台を下から見たいと思ってそのあたりに家があると言っていたのは新しい事実だった。ただ、月に1,2日程度しか来ることができないそうだ。

 ライブを聴いたたくさんの方が私と同じように大きな感動を受けたようで、終演後のアルバム販売には長い行列ができていた。そして小松氏がジャケットにサインをして客と交流していたのが印象的。
 本当に良いライブだった。

アナログ・サウンドへの回帰4~FOSTEX R8(8チャンネル・オープンリール・テープレコーダー)

2015年10月05日 | 音楽制作
 FOSTEXのR8、こちらは高額商品として89年頃思い切って購入したものだ。これを入手するということは、ミキサーや録音テープも必要ということで、大変コストがかかる。それにもかかわらず私のルーム・スタジオには必要だと思ったのだ。後年ネット・オークションでようやく同じFOSTEX製の8チャンネルミキサー454を手に入れたのだが、購入当時はやはりそこまで手が回らず、手持ちのキーボード用ミキサーを使って録音していた。

 それ以前はカセットの244を使用していたので、音質的にはこのR8で録った音は素晴らしく良く聞こえた。実際テープ幅もスピードも違うのだから(38cm/sec)当然である。加えて8トラック録音が可能だから、私の音楽制作は無限に広がったように感じた。ただ録音に必要なオープンリール・テープが高額でなかなか買えない。主にAMPEXの456と457を使っていたが38(サンパチ)で回すと1本に付き20分程度しか録音できないので、テープは貴重だった。

 そのような状況でもとうとう念願の8チャンネル・レコーダーを手に入れたのだから、その後はこれを駆使し音楽制作に没頭することになった、はずだったのだが…。何と間もなくMDというデジタルで録音のできる機器が登場し、その後そのMDを使ったマルチトラック・レコーダーが発売された。結局4チャンネルMDレコーダーに目移りしてしまい、SONY MDM-X4を購入したためR8の使用は短期間に終わった。しかしR8のようにアナログかつアマチュア・レベルでの高音質なレコーディング機材は、アナログ回帰の今最良のものと言える。テープの入手や部品の調達が難しいというハンディはあるが、今後DAWと同時並行で上手に使っていけたら良いと思う。