ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

うれしい新刊!エラリー・クイーン「境界の扉〜日本カシドリの秘密」(越前敏弥・訳/角川文庫)

2024年06月21日 | ミステリー小説
 全く予想していなかったのだが、エラリー・クイーン国名シリーズの最終巻が刊行された。これは素直にうれしい。表紙カバーのイラストも従来の流れのまま。帯には「国名シリーズ<プラス>最終巻!!」と謳われている。
   
 だが、この作品は本来は国名シリーズではない。1958年に創元推理文庫から「ニッポン樫鳥の謎」として出されたが、原題は The Door Between 。登場人物が日本と関係しており、日本に関する記述があることから強引に国名シリーズに加えたと推測できる。ただ、年代的には「スペイン岬…」が1935年、スエーデン燐寸の秘密としても良かったと前書きに触れられていた「中途の家」が36年、そして37年がこの作品なので、実は国名シリーズの流れを汲んでいたと言えるのかもしれない。今回の角川文庫版も原題に加えて「日本カシドリの秘密」としているのはなかなかではないか!これで、創元版「ニッポン樫鳥の謎」の新訳と判断もできる。

 ともかく早速読みたくて地元の書店に向かった。だがどこにも置いていない。結局札幌駅前の紀伊國屋書店に行ってみた。だが、そこにもなかった。最終的に店員さんに聞いたら調べてくれて、入荷はしていますと持ってきてくれた。店頭に並べられていなかったようだが、購入後に見たら発行日は6月25日となっていた。1週間前に入手したのはフライングゲットだったのだろうか?

 今現在「サスペンス作家が殺人を邪魔するには」を読んでいる(これはこれで面白い)ので、お楽しみはあと数日後である。

<追記>
 読了。数十年ぶりの再読だったが初読と言って良い面白さを味わえた。やはりこの作品のタイトルは「日本カシドリの秘密」とした方が良いのでは。読んで頂ければその意味はわかってもらえるだろう。確かに「境界の扉」という言葉も重要なのだが。
 クイーンの日本への理解を存分に発揮した本書だが、まさかその数年後にアメリカと日本が敵国同士になるとは、誠に残念な歴史の流れである。

これは面白かった!(その2):「サスペンス作家が人をうまく殺すには」エル・コシマノ(辻 早苗・訳/創元推理文庫)

2024年06月07日 | ミステリー小説
 ジェット・コースターのように次々と上下左右に飛ばされる小説である。次は一体どうなるのかとなかなかやめられない、「予想外の展開で一気読み必至!」と扉の紹介文にあるとおりの面白い作品であった。

 主人公フィンレイは売れないサスペンス作家なのだが勘違いされて高額な報酬の仕事を依頼される。それがある人物を殺すというとんでもない仕事なのだが、それをきっかけに様々なことに巻き込まれていく展開である。だが、主人公自らが自分で自分を巻き込んでいくところもあって、ユーモラスな要素もある。このキャラクターは魅力的である。そしてベビーシッターが協力者として登場するあたりから物語は俄然面白くなる。最後はどうなるのだろうとハラハラドキドキな気分に浸ることができる。未読の方々はぜひお読み頂きたいとお勧めする。
  

 この一冊があまりに面白かったので、続編の「サスペンス作家が殺人を邪魔するには」も買ってしまった。前作と同じ人物が多数登場するのでこれから読むのが楽しみである。

これは面白かった!:「最上階の殺人」アントニー・バークレイ(創元推理文庫)

2024年06月01日 | ミステリー小説
 ミステリー小説は相変わらず読んでいる。最近では海外物では「8つの完璧な殺人(ピーター・スワンソン)」「窓辺の愛書家(エリー・グリフィス)」。それぞれ意外な真犯人の設定と物語が映像的に次々と展開されている面白さがあった。だが、その手の小説を読んでいると古き良き時代の本格もの、即ち探偵がじっくり考えて真相を導き出すような作品が読みたくなってくる。そのような嗜好にピッタリだったのがアントニー・バークレイ作「最上階の殺人」(訳:藤村裕美 2024年2月刊)である。これは面白かった。

  

 とある殺人事件の真相を暴こうと独自に調べ始める探偵ロジャー・シェリンガムだが、容疑者達と会いながら推理していく。本作の場合、彼の思考が物語中で適宜語られる。当然状況や新事実によってその考えが変わっていく。真相にたどり着くまでに探偵がどのように考えていくのかを読者は同時進行で知る。これが誠に面白い。そして、最後には真実はコレだと見なしたことが実は…、となるのである。なぜかシェリンガムの協力者となった被害者の姪との迷?コンビぶりもユーモアがあり楽しませてもらった。

 もともとバークレイ作は「毒入りチョコレート事件」を以前読んでいたのだが、多重解決が語られる作品である。「第二の銃声」も写真の帯にあるように多重解決もの。バークレイはそうした展開が得意なようで今回の「最上階の〜」も同様の傾向があり、その意味でも楽しむことができた。お勧めである。

  

 なお、「レイトン・コートの謎」も昨年発刊されたシェリンガムもので、こちらはワトソン役の友人を従え密室的な殺人に挑むのだが、真犯人の意外性にすぐれた作品である。