ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

ビートルズ来日50周年!本当なら今日28日が初来日の日だった & UNRELEASED MASTERS4枚組

2016年06月28日 | ザ・ビートルズ
 50年前の明日6月29日、ビートルズが来日した。台風で11時間遅れ、未明の到着だったそうなので、となると本当は本日28日に日本の土を踏むはずだったのだ。当時の私は小学生、まるでビートルズのことなど知らないで過ごしていた。世論の反対を押し切り武道館で初めて音楽ライブを開催したこと、ステージの模様がテレビ中継されたこと、ビートルズの演奏は30分程度しかなかったこと、その前座にドリフターズ(いかりや長介さんの方)が出たことなど、後になって知った事実ばかりであるが、当時の若者の熱狂は想像に難くない。

 というわけでもないのだが、このタイミングでビートルズの初期のライブ音源CDを入手。UNRELEASED MASTERS というタイトルのボックス・セットで LOST DECCA TAPES, LOST STUDIO SESSIONS, ON THE TELLY, ED SULLIVAN &HOLLYWOOD BOWL OUTTAKES の4枚組である。一聴してまずはCDの音質が良い。音圧が高いというのか、迫力あるサウンドである。そして初期ビートルズのライブバンドとしての演奏力がやはりすごい。売れっ子としての勢いも演奏に感じられる。オフィシャルのBBCセッションより良いかもしれないと思ったほどだ。ON THE TELLY では Yesterday をポールが歌っているのだが、バックにストリングスの伴奏が鳴っている。これはいったいどういう仕組みだったのだろうか?

 今年は9月にライヴ・ドキュメンタリー映画 EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years が上映されたり、10月にはリンゴ・スターがスティーヴ・ルカサーやトッド・ラングレンを引き連れて来日するらしく、来日50周年記念の年としてビートルズ関係の話題で盛り上がることになりそうだ。

ジェネシスのアナログ盤 Selling England By The Pound「月影の騎士」

2016年06月25日 | プログレ

 イギリスのEU離脱決定が報道された今日、「英国をポンド単位で売る」という意味深のタイトルを持つ73年発表の本作は、改めて聞くと本当に良いアルバムだ。詳細は以前こちらで紹介したので省略するが、私がジェネシス好きになったきっかけのアルバムでもある。曲の良さ、演奏のカッコ良さ(特にシンセやギターのソロ・パート)、12弦ギターが活躍しナイロンクラシカル・ギターも聞かれることなど他のアルバム以上に特筆できる点が多い。Trespassに引き続き1曲目がイントロなしの歌で始まるというのも私にとっては印象的。その一方で、演奏パートが長くなり、ゲイブリエルの歌が明らかに少なくなったという側面もある。

 私が最初に買ったのは74年に発売された日本フォノグラムROCK IMPACT’74の一枚。まだジャケットの裏面に曲目と歌詞、そして帯に解説が印刷されていたものだ。その後CD化され輸入盤を購入したが08年にニューミックスのSACD(ハイブリッド)+DVDが発売された時に処分してしまった。しかしオリジナル・ミックスは持っていたいと、95年発売の旧CD、同じく旧ミックスによる99年発売の紙ジャケ国内盤を入手。さらに再々プレスくらいのUK盤後発LP、そしてEMI 100 The Vinyl Collection のUKアナログ盤が手元にあるので、全部で6枚の「月影の騎士」が今私と共にある。

 アナログ盤の中ではそのEMI 100の音が抜群に良い。97年になってリリースされたものだが、180グラム重量盤であることやダイレクト・メタル・マスター工法でプレスされたと表記があり、それによる効果だろうか。中に歌詞が印刷されているゲートフォールドのジャケットはオリジナルとは違う作りのようだが、分厚くなっていてとてもゴージャス。中古で千円台だったので、大変満足できる買い物であった。

ザ・ビートルズ: 6月20日はキャピトル盤 YESTERDAY AND TODAY の発売日

2016年06月20日 | ザ・ビートルズ

 CDジャーナルムック「ビートルズストーリーVol.4 1966」によると50年前の1966年4月から5月にかけてビートルズは新しいアルバムのレコーディングに勤しんでいた。Revolverだ。さらに5月3日には彼らの来日公演が決まったとの新聞報道がなされた。そして6月30日から5日間にわたってビートルズは我が国に上陸した。そうしたビートルズ旋風が吹き荒れたタイミングの中、その10日前の6月20日にアメリカ・キャピトルからリリースされた新譜がYESTERDAY AND TODAYであった。

 50年後の追体験、今回はブッチャー・カバーの回収問題で大きな話題になった本アルバムである。私は特にこのアルバムが好きだ。中学生の時初めて聴いたビートルズのレコードだったからだ。しかしそれは自分で買ったのではなく、友人の家に行って聞かせてもらったものだ。当時はビートルズのことはあまり知らなくともYesterdayは良い曲だという認識があり、少しずつビートルズが身近になりつつあった。その時、この名曲を聞くことのできるレコードとしてとても印象に残ったアルバムなのである。

 オープニングのDrive My Car、大好きな曲だが最初に聞いたのはRubber Soulではなくこのアルバムだった。そのRubber Soulからセレクトされたのは、Nowhere ManやIf I Needed Someoneなど自分好みの曲が並ぶ。そしてDay Tripper、We Can work It Outというシングルヒット曲も収録。さらに本アルバムには発売前のRevolverからの3曲が含まれていて、それらはオリジナル・アルバムより先にリリースされたことになる。(実際にはI'm Only Sleepingなどは英国盤の決定ヴァージョンと違うミックスが収録されているのだが。)

 私の所有する本アルバムは中古で購入した国内盤と米国盤のアップル・レーベル、そしてキャピトル・レインボー・レーベル復刻盤の3枚である。米国アップル・レーベルはSTEREO盤でレインボーの方もジャケットにはSTEREOと表記されている。しかし針を落とすと音がどう聞いても中央に定位している。調べるとステレオ編集テープが間に合わなく従来のモノラル録音をプレスした盤が短期間出荷されたらしい。いわゆるミス・プレス盤である。というわけで偶然モノ盤とステレオ盤の両方を所有することになった。そんなレア・アイテムがあるからこそビートルズは面白いとなるのである。

 さて、間もなくビートルズの来日50周年ということでテレビ等ではこのところ特集番組を放送している向きがある。今の若者達は50年前のこの一大イベントにどの程度興味関心を持っているのかわからないが、私の世代以上は大いに盛り上げるのではないかと思う。それなりに楽しみたい。そして、次はいよいよ8月5日のRevolverである。

ジェネシスのアナログ盤 GENESIS LIVE 「ジェネシス・ライブ」

2016年06月17日 | プログレ
 本来ラジオ番組用の録音でありメンバーが出すのを望んだアルバムではない、音質があまり良くない、などと言われているが私はこのライブ盤が大好きだ。

 記憶ではアルバム「月影の騎士」リリースの頃に併せて購入したのではと思う。メロトロンの出だしと同時に拍手や歓声が沸く一曲目のWatcher Of The Skiesなどはスタジオ版より気に入っている。続くGet’em out…やThe Return Of …のようなストレートなロックでのゲイブリエルの表情豊かな歌唱、B面に入ってMusical Boxでの12弦ギターを用いた緩急ある演奏、そして何と言ってもラストのThe Knifeはハケットとコリンズが加入してからの演奏でスタジオ版とほとんど変わらないアレンジなのに迫力が倍増、など私にとっては魅力満載の内容なのである。いや厳密にはTrespassもNursery Crymeもこのライブ盤の後に聞いたのだから、私にとって初期ジェネシス・サウンドの原点はこのアルバムにある。

 当時購入したのはUS盤だった。FoxtrotのUS盤と同じBuddahレコードのカリスマ・レーベルなのだが、私が所有する中で唯一のピンク・レーベル(CAS1666)である。そして後に手に入れたのはマトリクス両面1U、ビッグ・マッドハッターのUK盤(CLASS1)。両者を比較してみると、まずジャケットはUS盤の方の紙質が固く丈夫な作り。音質的にはどちらも迫力あるサウンドであまり相違はない。元々がそれほど高音質ではないこともあるだろうが、ライブ盤として楽しむにはどちらも充分である。(もっともUK盤は高くついたが。)

 先に述べたが、彼らはスタジオ録音と変わらないアレンジで演奏するバンドであることがこのライブ盤を聞いてわかる。後のコリンズ時代にはメドレーに組み直す演奏もあったが、少なくともゲイブリエル時代は「幻惑のブロードウェイ」も含めてアルバムの再現というスタンスだった。ところが曲以外の部分、例えばピーターのMCに対し観客が大笑いしている。このライブ盤でもB1の最初にペダルベースが鳴ったことに「今のはマイケル・ラザフォード氏のベースソロでした」と言って聴衆に受けている。曲間の楽器の準備にかかる時間を利用してピーターが物語を語り始め、やがて曲に合わせて扮装をするようになったという。これが彼らのライブがスタジオと違う部分である。本アルバムのジャケットにも箱や花をかぶったりコウモリに変身しているピーターの姿が見られるが、当時大いに興味を引かれたものだ。Genesis Liveをとおして益々彼らの存在感が増し、ジェネシスは私の最大限の興味を持つバンドとなっていったのである。

ジェネシスのアナログ盤 FOXTROT 「フォックストロット」

2016年06月15日 | プログレ
 フォックストロットというのは1910年代に米国で流行した、4分の4拍子または2分の2拍子の社交ダンスのこと。このアルバムタイトルとジャケットのイラストの共通点はキツネ頭の女性のみで他は馬にまたがった特異な人物達、それも一人の下半身はガーターベルト、そして潜水艦とくじら?というあまりピンと来ない不思議な感覚が第一印象であった。日本盤のジャケットはオリジナルの裏面に表面の一部を貼り付けた暴挙ともいえる手の込んだ珍品だったが、それは後になってわかったことで、当時は疑う余地もなかった。

 アルバムを級友から借りて聞いた時の状況はかつてこちらで紹介したので省略するが、その時をきっかけとして私とジェネシスとの長い付き合いが始まったのだ。そういう意味では記念すべき重要作である。いや、ジェネシスの歴史においてもこのアルバムは重要作であろう。何と言っても組曲形式のSupper’s Readyが収録されている。12弦ギター3台が重なり合う美しい演奏のラブソングから8分の9拍子上のオルガンソロのハードな曲まで、いくつかの異なった曲が絶妙に配置され、歌詞も意味深。最後は感動的に盛り上がるという、まさにプログレの王道をいく名曲である。

 後のSACD+DVD盤におけるインタビューでこの曲について各メンバーが多くを語っているが、ソング・ライティングにかなりの自信を持つようになっていたようだ。アポカリプス・イン・9/8で悪魔の数字666…が歌われる部分の制作状況では、トニー・バンクスが「インストゥルメンタルに仕立てる予定でヴォーカルを入れるつもりはなかったのに、ピーターが歌詞を乗せた。台無しかと思ったが結局は彼が正しかった。」マイク・ラザフォードも「あの歌を聴いたのは録音された時だった。僕たち自身も不意を突かれたが歌が演奏に見事に調和していた。」と述べている。彼らにとってもこの曲は絶対の自信作となったのだ。当然私も大好きな一曲である。

 手元には3枚のアナログ盤がある。最初に買った1枚はアメリカ盤だった。番号はなぜか次のUK盤と同じCAS105。ゲートフォールドのジャケットで、日本盤とのイラストの違いに驚いたものだ。Buddhaレコードからのリリースでレーベルはビッグ・マッドハッターだが、本物をコピーしたような色合い。今調べてみるとこのレーベルはソウル系のアーティストが多かったようだが、カリスマとも契約しており、ジェネシスのアメリカの音となった。ずっと聞いてきた盤なので馴染みがありすぎるとしても、音は良いと思う。

 UK盤は2枚。1枚はCAS1058、スモール・マッドハッターレーベル。ジャケットは結構年期が入っているが見開きのテクスチャー加工で、背文字のタイトルがほとんど消えかかっているが赤字。マトリクスはA面2U、 B面1Uである。残念ながらA-1 Watcher of the skiesの最後部分にノイズと音飛びがある。それ以外は良好。迫力ある音である。もう一枚はCHC38、ジャケットの背表紙が白抜きでレーベルもブルーカリスマ。かなりあとの時期のもので4thプレスあたりか。

 ところで、B面1曲目にハケット先生のHorizonsが収録されている。ナイロンギターによるソロだ。この曲が終わった直後にイントロなしで次のSupper’s Readyが始まるという一瞬が実にスリリングで良いのだ。

<追記>Polar Bear氏のご教示を得て、一部記事を改訂しました。

ジェネシスのアナログ盤 Nursery Cryme「怪奇骨董音楽箱」

2016年06月13日 | プログレ
 このアルバムはいつどこで購入したのだろう?大学生の頃友人に貸してジェネシス・ファンを増やした記憶があるのでやはり学生時代、東京でのようだ。UK盤B&C社製CAS1052、テクスチャー加工のジャケット、ビッグ・マッドハッター・レーベル、マトリックスはA-1U B-2U。長年聞き続けてきたレコードなので、今更音質がどうのこうのとなると判断が難しくなるが、リリースされた当時の音空間を今共有できるのは嬉しいことだ。

 私はGENESIS LIVEを先に聴いていたので、The Musical Boxのスタジオ版が収録されているアルバムという認識だったが、そうした大曲以外のFor Absent Friends やHarlequinなどの短めの曲を聞いてとても気に入った。新メンバーとしてギターのスティーヴ・ハケットとドラムのフイル・コリンズが加入した初めてのアルバムだが、彼らの力量が加味され、また前作同様12弦ギターが活躍することで、ここでジェネシス・サウンドが完全に確立されたと感じる。

 邦題「怪奇骨董音楽箱」はA面1曲目のThe Musical Boxからのネーミングだろう。ジャケットのイラストもこの曲がモチーフになっている。美しい旋律を持つ一方で内容は奇々怪々だ。それをゲイブリエルが表情豊かに歌い込んでいく。She’s a lady…の部分では声にエコーがかかっていないデッドな音処理がなされているのでとても生々しい。

 先ほど記した二つの小曲はどちらも12弦ギターがフューチャーされ、メロディもハーモニーも美しい。もしかするとコリンズも一緒に歌っているのではないか、だから後年彼がメインヴォーカリストになった時にそれほど違和感がなかったのではなかろうか。なお、For Absent FriendsはMAGNA CARTAのアルバムSUPPER’S READY~GENESIS TRIBUTE~の中でリチャード・シンクレアがカバーしており、そちらもこの曲の良さを引き出している名演である。

 さらにB面のHarold The Barrel は本当にジェネシスらしい重要曲だ。演劇的要素満載のこの曲でゲイブリエルは様々な役を演じ歌っている。前作のKnifeですでに感じられたこうしたシアトリカルな雰囲気はFoxtrotやSelling England By The Poundでも継承され、The Lamb Lies Down On Broadwayではとうとうアルバム全体を包み込むこととなる。


文藝別冊「ジェネシス」とアナログ盤 Trespass「侵入」

2016年06月09日 | プログレ
 2014年12月の「THE DIGジェネシス」(シンコーミュージック)に続き「文藝別冊ジェネシス」(河出書房新社・写真右上)が先月発行された。THE DIG版も大変読み応えがあったが、こちらの一冊も同様、今まで知らなかった情報もたくさん得ることができた。例えばフィル・コリンズが脱退して後任のシンガーのオーディションで最後まで残った二名の一人が現Big Big Trainのデヴィッド・ラングトンだったこと。彼の声質はフィルとピーターの両面を備えており、さらにフルートも演奏するので、レイ・ウィルソンも悪くはなかったが彼が合格していたら新生ジェネシスはどうなっていただろうかと夢見てしまった。読み進めるにつれ改めてジェネシスの素晴らしさが蘇り、このたび所有している音源を棚から引っ張り出してみた。

 Trespass(侵入)。70年リリースのセカンド・アルバム。写真上の1枚は高2の頃、見学旅行先の京都で買ったと記憶している。レーベルがビッグ・マッドハッターだがマトリクスはA-2U、B-3Uなので完全な初回盤ではないだろう。背表紙に文字はない。後に歌詞の印刷されたインサートのあることがわかったがこれには封入されておらず、数年前そのためだけに後発プレス盤(下)を購入した。このインサートの紙は白だが、初期のものはグレーとのこと。CDはSACD+DVDの紙ジャケ盤のみ所有。

 1曲目のLooking For Someone、イントロなしでいきなりピーターの歌から始まる。とても印象的だ。全6曲中5曲はアコースティック・ギターがフューチャーされたフォークロック的な楽曲。時には静かに、時には叫ぶように歌うピーターと12弦ギターのサウンドが耳に残る。中でもB-2のDuskが好きだ。もの悲しくも美しい旋律と意味深な歌詞、途中の展開も曲にアクセントをつけ引きつける。B-1のStagnationでは左右のギターの真ん中でシンセのように弾くオルガンのソロ部分が美しい。White Mountainは後年A Trick Of The Tailツアーの時にも演奏された名曲。しかし何と言ってもそうした5曲をまるで前座のように感じさせる最後の曲Knife。突然激しくロックなこの曲が最後に来ることで、ジェネシスというバンドが他とは違う何かを持つことを感じさせるに充分だっただろう。実際にはGenesis Liveで既にKnifeを聞いていた私は、逆にアルバムの他の曲が全く違うロマンティックな印象であることに驚いた。ジャケットのイラストとそれを引き裂くナイフの画像は当然Knifeという曲のイメージでもある。こうした曲の構成は完全に意図したものだろう。聞いた話によると当時の彼らのライブも、延々と静かな曲を演奏し、最後の最後にKnifeを演奏することで観客の度肝を抜いたそうだ。アンソニー・フィリップスがここまで攻撃的なギターを弾くということも驚きだった。残念なのはドラムのフレーズが一本調子で物足りない。結局この後ドラマーはフィル・コリンズにチェンジする。