この度、文藝春秋編「東西ミステリーベスト100」(平成25年1月発行)の上位にランクされた国内で名作と言われるミステリー作品を4作立て続けに読んだ。それらは、第3位「占星術殺人事件」(島田荘司81年)、第11位「黒いトランク」(鮎川哲也56年)、第28位「人形はなぜ殺される」(高木彬光55年)、そして第38位「11枚のトランプ」(泡坂妻夫76年)、である。「人形~」と「11枚の~」は以前読んだ記憶がかすかにあるので再読となるはずだが4作とも大変印象に残る、さすがの作品であると感じた。とりわけ本格推理と言われる各作品の持つトリック・しかけの巧妙さが素晴らしく、「占星術~」と「人形~」ではエラリー・クィーン同様の「読者への挑戦」がなされる。それも段階を経て2度も。何とミステリーマニアをくすぐる趣向か。当然私などはその時点でも「さっぱりわからない…」となるわけだが。
「占星術殺人事件」は今年8月に改訂完全版が講談社文庫から出版された。旧文庫版を古本で買っていたのだが、こちらの改訂版は行間が広がり読みやすくなっていたので買い直した。(その分ページ数も増えているが。)この作品は、読み終えた時大きなショックを受けた。以下東西ミステリーベスト100記載の「うんちく」の助けを借りて述べると、過去の事件なので犯人の可能性のある人物はみな死亡しているという前提であるがゆえに、結末では全く予想できなかった驚愕の、それでいて論理的な解決を提示しているのだ。作者のミスディレクションにしてやられたという感覚である。島田荘司のデビュー作であり名探偵御手洗潔初登場作品でもあるが、「国産本格ミステリー・ブームの先駆となった大傑作」と言われるのも納得である。作中におけるそのトリックを作者は「ある朝いきなり飛来した」と述べているが、当時実際に起きた詐欺事件に触発されたらしい。その断片を大きくふくらませて、これほど複雑で面白い物語として世に誕生させてくれたことに私は心から感謝する。
実は以前、同氏の北海道を舞台にした「斜め屋敷の犯罪」(東西100第21位)を読んだのだが、解明されたトリック自体には驚いたが、それほど熱中はしなかった。しかし、こちらのデビュー作は文句なく傑作である。未読の方には一読をお薦めする。(続く)
「占星術殺人事件」は今年8月に改訂完全版が講談社文庫から出版された。旧文庫版を古本で買っていたのだが、こちらの改訂版は行間が広がり読みやすくなっていたので買い直した。(その分ページ数も増えているが。)この作品は、読み終えた時大きなショックを受けた。以下東西ミステリーベスト100記載の「うんちく」の助けを借りて述べると、過去の事件なので犯人の可能性のある人物はみな死亡しているという前提であるがゆえに、結末では全く予想できなかった驚愕の、それでいて論理的な解決を提示しているのだ。作者のミスディレクションにしてやられたという感覚である。島田荘司のデビュー作であり名探偵御手洗潔初登場作品でもあるが、「国産本格ミステリー・ブームの先駆となった大傑作」と言われるのも納得である。作中におけるそのトリックを作者は「ある朝いきなり飛来した」と述べているが、当時実際に起きた詐欺事件に触発されたらしい。その断片を大きくふくらませて、これほど複雑で面白い物語として世に誕生させてくれたことに私は心から感謝する。
実は以前、同氏の北海道を舞台にした「斜め屋敷の犯罪」(東西100第21位)を読んだのだが、解明されたトリック自体には驚いたが、それほど熱中はしなかった。しかし、こちらのデビュー作は文句なく傑作である。未読の方には一読をお薦めする。(続く)