ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

「東西ミステリーベスト100」より4作①「占星術殺人事件」

2013年11月29日 | ミステリー小説
 この度、文藝春秋編「東西ミステリーベスト100」(平成25年1月発行)の上位にランクされた国内で名作と言われるミステリー作品を4作立て続けに読んだ。それらは、第3位「占星術殺人事件」(島田荘司81年)、第11位「黒いトランク」(鮎川哲也56年)、第28位「人形はなぜ殺される」(高木彬光55年)、そして第38位「11枚のトランプ」(泡坂妻夫76年)、である。「人形~」と「11枚の~」は以前読んだ記憶がかすかにあるので再読となるはずだが4作とも大変印象に残る、さすがの作品であると感じた。とりわけ本格推理と言われる各作品の持つトリック・しかけの巧妙さが素晴らしく、「占星術~」と「人形~」ではエラリー・クィーン同様の「読者への挑戦」がなされる。それも段階を経て2度も。何とミステリーマニアをくすぐる趣向か。当然私などはその時点でも「さっぱりわからない…」となるわけだが。

 「占星術殺人事件」は今年8月に改訂完全版が講談社文庫から出版された。旧文庫版を古本で買っていたのだが、こちらの改訂版は行間が広がり読みやすくなっていたので買い直した。(その分ページ数も増えているが。)この作品は、読み終えた時大きなショックを受けた。以下東西ミステリーベスト100記載の「うんちく」の助けを借りて述べると、過去の事件なので犯人の可能性のある人物はみな死亡しているという前提であるがゆえに、結末では全く予想できなかった驚愕の、それでいて論理的な解決を提示しているのだ。作者のミスディレクションにしてやられたという感覚である。島田荘司のデビュー作であり名探偵御手洗潔初登場作品でもあるが、「国産本格ミステリー・ブームの先駆となった大傑作」と言われるのも納得である。作中におけるそのトリックを作者は「ある朝いきなり飛来した」と述べているが、当時実際に起きた詐欺事件に触発されたらしい。その断片を大きくふくらませて、これほど複雑で面白い物語として世に誕生させてくれたことに私は心から感謝する。

 実は以前、同氏の北海道を舞台にした「斜め屋敷の犯罪」(東西100第21位)を読んだのだが、解明されたトリック自体には驚いたが、それほど熱中はしなかった。しかし、こちらのデビュー作は文句なく傑作である。未読の方には一読をお薦めする。(続く)


スタートレック・スターシップ・コレクション創刊!だが…

2013年11月25日 | TOYS
 今月上旬に用事があり、家族で仙台に行った。駅前に丸善があり、そこで最近出た島田荘司の新作「星籠(せいろ)の海」があったので上巻を購入した。この作家の作品を読むのは4作目で、今年あの写楽の謎を追った「写楽 閉じた国の幻」を読んだばかり。この新作も歴史と絡めた内容らしく、そして名探偵御手洗潔が主人公とのことで、やはり食指が動いてしまった。

 で、話を戻すと、新作を手に密かに喜んでいると息子がニヤニヤしながらやってきて、父さん、ちょっと来てと言う。何だと思いながらもついていくと、こんなの見つけたよと指さしたのが、スタートレック・スターシップ・コレクションの第1号と第2号であった。隠れスタートレック・ファンの私は実はエンタープライズ号の模型を集めている。創刊号である1号が490円、そして2号が1290円であった。これは買わずにはいられなかった。しかし、たった今島田荘司の分厚い単行本を買ってしまったばかり。この箱形のスタートレックを買うとかなりの荷物になる、などと思慮深い考え方をしてしまったのだ。その結果、U.S.S.エンタープライズNCC-1701の改装型の封入された2号の方だけ購入。父さん喜ぶと思った!と我が息子も得意顔。まんまと見抜かれている!まあいい、創刊号は札幌で買おう、ということで仙台丸善を後にしたのである。

 ところが、先日札幌のいくつかの書店を探しても同じものが見つからない。変だと思っていたら、これまたネットを見ていた息子から、これっていくつかの県だけで試験的に販売してるんだって、宮城がそれにはいっているよ。と知らされる。即ちそれは、北海道ではあの買いそびれた創刊号を手に入れることができないということなのである。念のためネットショップを検索してみたが、どこも扱っておらず、私は偶然巡り会った機会を見逃してしまったのである。このシリーズは3号以降は2190円になり70号まで続くらしい。それをコンプリートする気はないが、あの490円の創刊号だけは手に入れたかった。
 何とも残念である…。


ザ・ビートルズ50周年追体験#4 with the beatles

2013年11月22日 | ザ・ビートルズ
 50年前の今日1963年11月22日はビートルズのセカンドアルバムwith the beatlesがリリースされた日だ。「半世紀前を追体験する」という例の方針に従って、今アナログ盤を聴いている。1作目のアルバムPlease Please Meが3月22日発売だったから、ちょうど8ヶ月で新作が出たことになる。

 私の所有するLPは英国モノラル盤ではあるが後にリリースされた再発ものである。プレーヤーも安価な「一応聞ける」たぐいのものだが、久しぶりに聴くこのアルバムの迫力はやはり凄い。前作の1曲目I Saw Her Standing Thereのカウントによる入り方も衝撃的だったが、この2作目もイントロなしのサビからいきなり始まるIt Won’t Be Longだ。さらにカヴァー曲が6曲で、レノン/マッカートニー作7曲、そして初のハリソン作1曲の構成となっている中、ポールが単独で書いたというAll My Lovingだけは良い意味で異色の曲に聞こえる。万人の心を捕らえるキャッチーさがすでに満ち溢れている。私にとってはこの曲の存在だけでもこのアルバムの存在価値が高いのだ。

 予約だけで30万枚、そして発売後21週にわたりチャートの1位をキープしたそうだ。ジョージが2曲、リンゴが1曲リードヴォーカルをとるなど、演奏だけではないバンドとしての一体感も充実した1枚だと思う。

 さて追体験、次は1964年1月20日発売、キャピトル盤Meet The Beatles!である。


「危機/イエス」 2013年ミックス&5.1サラウンド

2013年11月12日 | プログレ
 先月と今月は出費のかさむ月だ。前回紹介したハケット先生のGenesis Revisited: Live At Hammersmithに引き続き今月は11日にThe Beatles のOn Air ? Live at the BBC Vol.2が発売され、そして同日、待望の危機Close To The Edge サラウンド盤が我が家に届いた次第。同盤はCD + DVD-AudioとCD + Blu-rayの2種類が同時発売となっている。その内容は次のとおり。

CD/DVD-A
1 New 5.1 Surround Mix 96kHz/24bit from original multitracks
2 New 5.1 Surround Mix Lossless 96kHz/24bit from original multitracks
3 New Stereo Mix Hi-Res 96kHz/24bit from original multitracks
4 Original Stereo Mix Hi-Res 96kHz/24bit flat transfer from the original Stereo Master tapes

CD/BLU-RAY
1 New 5.1 Surround Mix DTS-HD 96kHz/24bit from original multitracks
2 New Stereo Mix LPCM 96kHz/24bit from original multitracks
3 Original Stereo Mix LPCM 192kHz/24bit flat transfer from original master tape
4 America ? Original Stereo Mix LPCM 192kHz/24bit flat transfer from original master tape
5 Instrumental Versions ? New Stereo Mix LPCM 96kHz/24bit
6 Needle-drop of Original UK Vinyl LPCM 96kHz/24bit A1/B1 pressing
7 Numerous Audio Extras LPCM 96kHz/24bit including single edits & studio run throughs

 DVD ・Blu-rayにおけるサウンドの細かな違いについては不勉強のためこの後確認する。ただ通常のCDサウンドよりは良い音で収録されているのは確かだ(笑)。

 以前このアルバムに関するレビューは行っているので、ここでは曲"Close To The Edge"という一大叙事詩のサラウンド・サウンドについて感想を述べたいと思う。

 冒頭の鳥のさえずり、水の流れの効果音は四方に広がりまるで楽園の中心にいるよう。当時のイエスはギターがメインのバンドとして扱われていたと思う。ビデオ版YESSONGSを見るとスティーヴ・ハウを追うショットが多い。そしてこのサラウンドもギターがほとんど前方に位置され、リック・ウェイクマンのキーボードはどちらかというと後方にまわり空間作りを果たす処理がなされている。ジョン・アンダーソンのヴォーカルはセンタースピーカーから生々しく聞こえる。クリス・スクワィアーのビンビンベースはウーハー効果もありとりわけその存在感を増す。そしてビル・ブルフォードのハイチューニング・ドラムスは前方LRの範囲内で独特のサウンドを刻む。LPや従来のCDでは前方2チャンネルにぎっしり詰まっていた音が4方に拡散されているので迫り来る緊張感は少し和らいでいる。しかし、パート3: I Get Up I Get Down では素晴らしい空間演出がなされ、サラウンド化の意義も実はここにあるのではと感じた。ハウとクリスのバックヴォーカルが後方の深淵からささやきかけ、それに答えるかのようにジョンのヴォーカルが正面より悲しげに状況を語る。非常に想像力を欠き経たせる演出である。その後に続くこのパート終盤のチャーチオルガンの荘厳さは涙ものだ。続くリックのハモンドソロはいったいどこから音がくるのかと思わせるくらい全体に鳴り響き、曲はクライマックスへ。最後の鳥と水の響きが再度部屋の中を楽園に変える。同じSteven Wilsonがミックスしたクリムズン・アルバムのような派手な音の移動は感じられない空間処理ではあるが、長年待っていたサウンドの一つの回答がここにはあった。

 なお、Blu-ray盤には初期のアナログ盤のリッピング、そして何と全曲のインストルメンタル版が含まれている。まさかとは思ったが、後者は本当にカラオケであった。私はこれらを聞きたかったのと、通常使用するDVD-audioプレーヤー用にDVDをと結局両方を購入してしまった。ジャケットはDVD版がデジパック、Blu-ray版が紙ジャケット仕様である。
 届いたばかりなので十分な検証ができていない。今後、じっくり聴いていきたい。