CRIMSON(クリムゾン)。中森明菜1986年リリース10枚目のアルバムで、私はこれが大好きなのである。特に1曲目のMIND GAME の曲調、アレンジに最初に聴いた時から惹き付けられた。カッコイイ。作曲者が小林明子というのも驚きだった。「恋におちて」のイメージが強かったから。2曲目は竹内まりあ作の「駅」。作者の夫君がこちらのヴァージョンを聞いて異議を唱えた?という話があるが、私はこの明菜の囁くように歌い上げる方が断然好みだ。その他、何回も聞いたアルバムなので全曲耳に馴染んでいる。
前置きが長くなったが、今年このアルバムのアナログ盤が再発された。それも今回は45回転2枚組でのリリースだ。気がついた時には少しばかり時機を逸してしまったが、何とか手に入れることができた。そして、前回紹介した新しいレコードプレーヤーにて聴いている。A面からD面までの4サイドがあるわけだが、前述の2曲を聴くことのできるA面ばかりヘビーローテーションしている。ついでにいうと、この盤は1枚目が赤、2枚目が青のカラーディスクである。また、ジャケットがモノクロ(全然クリムゾン=深紅でない!)で味わい深く、このLPサイズは部屋に飾りたくなる。
個人的には当時流行のシンセサイザーの音が多用されているのが懐かしい。そして、オリジナルでは最終曲「ミック・ジャガーに微笑みを」にラジカセにカセットを入れるなどの効果音が重なっているのだが、この度のヴァージョンでは効果音なしのテイクがボーナストラックとして収録されているのも話題になっている。
さらに、今月「中森明菜ベストアルバム Best Ⅱ」が2CD+2LP+カセットテープから成るボックス形態で発売された。シングル盤がほとんど1位を取った時期の作品(DESIRE、TOTTOOなど)10曲が収録されているのだが、45回転2枚組のLPと今回はカセットまで付いている。価格も1万ちょっととのことで、思わず予約を入れていた。そちらも先日届いたばかりだ。ちなみに今回のLPも赤色とピンク色のカラーヴァージョンである。
このように中森明菜については「中森明菜デビュー40周年記念ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」として過去の作品が次々リイシューされているのだが、解説を読むと今回の音源は「ラッカーマスターサウンド」と呼ぶ手法で制作された。曰く、「アナログレコードの原盤であるラッカー盤にカッティングし、カートリッジ(レコード針)で再生した音を、デジタル化した音源。原音に限りなく近く、アナログレコードの持っているふくよかなサウンドを再現!」。ということはレコード音源をデジタル化してレコードにしたのを今聴いている?(これに関してはいつも疑問に思うのだが、アナログをデジタル化した音源はアナログ的な音色なのだろうか?)
さて、中森明菜は林哲司氏トリビュート・アルバムのため「北ウイング」を再録音(これが大人の雰囲気でオリジナルとは全く別物だが素晴らしい!)するなど、徐々に活動再開に向けた動きが感じられる(という世論の読み)。長らく活動を休止していた状況から、ファンの皆さんは再登場を心待ちにしているのだろうが、音源的にはすでに再登場を果たしてくれた。私としてはこれらのレコードを聴くだけでひとまず満足だが、はたして年末の復活はあるのだろうか。
そんなことも気にかけながら2023年が終わる。来年こそ世界に紛争のない良い年であることを願い、今年最後のブログとします。
バート・バカラックがこの2月に亡くなった。94歳だったというから大往生と言って良かったのではと思う。が、大好きだったフランシス・レイ、ミシェル・ルグランら往年の映画音楽作曲家がここ数年で次々亡くなってしまったのはとても残念である。レイの時もルグランの時も特にこのブログでは取り上げなかったのだが、今回はバカラックにちなんだ思い出を記したい。
私にとってバカラックは前述の二人の作曲家と違う存在だった。好きだったバカラック・ソングを当初は彼の作曲だとは知らずにいたからである。中学生の時にFM放送で聴いて録音していたあるお気に入りの曲が、その筋に詳しい友人が「恋よ、さよなら」というタイトルだと教えてくれた。作曲家のことは知らないまま愛聴した。ヒット・チャートにランクインした「雨に濡れても」はB. J. トーマスという人の曲だと思いながらレコードを買った。もう1曲、やはりヒット・チャートで聴いた「サン・ホセへの道」も大好きでこちらもレコードを購入。私にとってこれはボサ・リオというグループの曲だった。
だが、それらは全てバート・バカラックの音楽である。ついでに言うと、映画音楽の好きな私は映画「幸せはパリで」のテーマ曲「エイプリル・フール」(パーシーフェイス楽団)を当時のラジオで知り、特にカトリーヌ・ドヌーヴのセリフの入るサントラ音源が大好きでエアチェックした音源を何度も聴いたものだ。バカラックの作曲ということは随分後で知った。「遙かなる影(Close To You)」もカーペンターズのオリジナルだと思っていた。そして徐々にバート・バカラックの存在を知り、その偉大さを知ったのである。
バカラック・ソングはお洒落な曲調が多いと思う。April Fools、This Guy's In Love With You、Alfie(これはシンガーRumerが2010年にリリースしたヴァージョンが絶品!)など好きな曲はたくさんあるが、中でも一番のお気に入りは A House Is Not A Homeである。本当に良い曲だと思う。最近はTHE SONGS OF BACHARACH & COSTELLOのCD2枚組ヴァージョンと「カジノ・ロワイアル」サントラ完全版を購入。後者にはThe Look of Loveが含まれているが、これも名曲中の名曲である。
では、追悼の意味も込めて久しぶりにシングル盤に針を落としてみよう。
↑ 両シングルジャケット解説には作曲者バカラックのことはあまり触れられていない。
↑ 札幌の映画専門店で見つけた「幸せはパリで」アナログ盤サントラ。
↑ 意外と手元のバカラックCDは少なかった。
私は山下達郎の熱狂的なファンというわけではない。が、日曜日の午後2時から東京FM系列で放送される「サンデー・ソングブック」には毎週耳を傾けている。自分の知らない曲のかかることがほとんどだが、知っている懐かしい曲も聴かれる。そして達郎氏の説得力のある曲のウンチク・解説になるほどと思う。先日発売された「増補改訂版山下達郎のBrutus Songbook特別編集号」((株)マガジンハウス)は同番組の30周年を記念した一冊で、番組内のトークをアーティストやジャンルごとに書き起こしたものである。増補改訂版と謳っているのは実は番組25周年に一度発行されたそうだが、今回新たな記事が加えられたアップデイト版であるとのことだ。
こうして文字で読むと、番組内での達郎氏の話・解説はとても丁寧なものであることがわかる。豊富な知識とサウンドへのこだわりは番組を聴いていて楽しく伝わるけれど、このような冊子になるとオールディズの貴重な資料だとも言える。いや、オールディズのみならず、私の好きなイージーリスニングやギブソン/フェンダーによるギタリスト、さらには小説家レイ・ブラッドベリについても言及されていて、その関連でチラッとだがプログレの話題もある。そして番組のスタッフや裏話、超常連と言われる人達の投稿など、読みどころ満載である。
そういえば、はるか昔この番組内で紹介されたクロディーヌ・ロンジェの「恋の面影」に感動してCDを買ったことを思い出した。そして小学生の頃初めて自分で買ったシングル盤「グッドナイト・ベイビー」のザ・キングトーンズの紹介もあるのだから、「サンソン」はやはり自分にとっては波長の合う番組であり、そしてこれは読むべき一冊だと改めて実感したところである。
今年もあと1週間。年末にじっくり目を通していこう。
学生時代からFMで放送されたライヴ音源等をエアチェックしたカセットテープがミカン箱2箱分くらいある。転勤族であったにもかかわらず捨てずに持ち歩いてきた。自分にとっては懐かしく、かつ貴重な音源として大切にしてきたものだ。特に東京に住んでいた学生時代は、北海道にはない民放のFM局がたくさんのライブ音源を放送していたので、夢中になって聴いていたものだ。そして今、思い立ってYouTubeのチャンネルにアップしてみた。それが"hirohiko archives"である。思いがけず現在チャンネル登録数が300を超えた。自分のオリジナル曲のチャンネルが十数名なので破格の数字である。ありがとうございます。
カセットテープは意外と長持ちする。だいたいのメーカーは今も安定して再生できるのだが、Sc…製だけはテープがよれてきちんとは再生できないことがある。まあ、40年以上経つのだから仕方ないのかもしれない。
一番最初にアップしたのが、75年8月にNHK-FMで放送された弘田三枝子と四人囃子がコラボしたスタジオ・ライヴの1曲「空と雲」だった。これは、上京前の時にラジカセで録ったもの。音質もあまり良くないのだが、当時弘田三枝子さんが亡くなった直後のアップだったのでたくさんの方に聴いていただいた。
(以下、画像にリンクを貼っています。)
現在の一番人気はユーミンの78年10月のスタジオ・ライヴだ。「流線型 '80」をリリースする直前のもので、一桁違う視聴回数になっている。次点がサザンオールスターズの78年スタジオ・ライヴで、デビューした年の勢いある演奏が聴かれる。ユーミンとサザンの人気はさすがだが、これらの音源は他の方のアップがなかったためたくさん聴かれていると思われる。そして、それに続くのが吉田美奈子や八神純子のライヴ。70年代に活躍したアーティストの人気は今も根強いと感じる。私自身も、良いものは良い!と思う。
ところで、サザンと言えば、78年11月(だと思うが)に私の通っていた大学の学祭で大学生協主催のコンサートがあった。所属していた軽音サークル内でも先輩から青学にとてもうまいバンドがある、と聴いていたのだが、プロのバンドではあったがまだ学生臭さも残っていてとても親近感が沸いたことを覚えている。「勝手にシンドバッド」のようなノリの良い曲のみならず、メロディの美しい曲もたくさんあって、俄然ファンになったものだ。(その翌年、「愛しのエリー」が生まれることとなる。)先述の音源はその生協ライヴの1ヶ月後に収録のものであった。
このように私のチャンネルは他人のふんどしで相撲を取るような試みをしていることになるが、私の思いは公共放送を通じて人々に楽しみを与えてくれた過去の娯楽を記録として残したい、そして聞き逃した人達に改めて聞いてもらいたいということだ。ただ、心配なのは楽曲に対する著作権である。これについては、アップロードする際にYouTube側が内容を判断し、大方は「著作権の申し立て」があり制限される。しかし、だいたいの曲はYouTube側で著作権の対応を関係方面に行っているため、制限されるのはチャンネル公開者に広告収入が得られないことで、アップロード自体は可能だ。ただ、著作主や放送局などから削除要請が来たらそれに従う必要はある。個人的には、オフィシャルのソフトとして発売されている場合はアップしないことにしている。
さて、hirohiko archivesについてはリンクを貼ったので、もしよろしければ聴いてみてください。他にサントリーオールドが当時のTVアニメとコラボしたCM集や、パット・メセニーのライブ音源などもあります。願わくば、オリジナルの楽曲チャンネルの方がもう少し伸びてくれると良いのだが、、、(笑)。
hirohiko archives ← チャンネルのリンク
災害級の大雪である。年末年始、そして2週間前にも大雪を経験し、公共交通機関の運休が発生した中、追い打ちをかけるように今週もまた来てしまった。近くの郵便集配ポストも写真のとおり。実際にはこの後さらに大雪に見舞われた。ボヤいてもしょうがないので、
閑話休題。
最近、カバー曲やオリジナルをアップしたのでよろしくお願いします。特に宣伝もしていないのでほとんど見られていませんが(笑)、、、
まずは大好きな久石 譲氏の映画音楽から、「風の時間」(映画「ふたり」)と「Silent Love」(映画「あの夏、いちばん静かな海」)のメドレー。
続いて、村松健氏の楽曲から「レインフォーレスト〜ひぐらしの森」。主旋律があまり弾きこなせていません、、、
以上の2曲は、90年代に北海道美唄(びばい)市で開催された、Live Under The Space Callion で演奏させて頂きました。
さらにオリジナルを2曲紹介。
「ラム酒とワイン」。ボサノバです。
「素敵な君」。これは87年に作った曲です。録音も4チャンネルのカセットテープレコーダーでした。
年明け、息子にカウンターメロディとハモりを加えてもらいました。
音楽シリーズ、機会を見て続けます!
最近ビル・エヴァンスの新リリースCDを2枚購入した。ジャズは好きな音楽のジャンルではあるが、ここ最近は限られた時間の中あまり聴く機会が持てなかった。その中、エヴァンスの未発表音源が発売になるということで久しぶりに食指が動いたのである。
ビル・エヴァンスの作品で私のお気に入りは定番のWaltz For Debby、Moon Beams、そしてハーモニカのトゥーツ・シールマンスと共演したAffinity。この3枚はLPとCDの両方で持っている。さらに亡くなる前年、もしくは数年前のアルバムI Will Say Goodbye、You Must Believe In Springも。総じて激しいものより、My Foolish Heartのようなロマンチックな演奏が好きだ。
そこで新たな音源について。深い考察はできないので単に感想を。1枚目は On A Friday Evening。エヴァンスが、1975年6月20日、バンクーバーのクラブ Oil Can Harry's で行ったライブの音源である。ラジオ番組オンエア用に録音された演奏とのこと。そのオリジナル・テープが45年の時を経て日の目を見たわけだ。何より I Will – や You Must - と同じエディ・ゴメス(b)、エリオット・ジグムンド(ds)とのトリオ編成ということで聴いてみたいと思った。だが、全体的に力強い演奏が多くて、私好みではなかったのが残念。
2枚目は Behind The Dikes。こちらはエディ・ゴメス(b)とビル・エヴァンス・トリオのドラマーとしては最長を務めたマーティ・モレルとのトリオによる1969年オランダでのライブ音源を集めたもの。2カ所の異なる場所でのライブと、最後の2曲は名アレンジャーのクラウス・オガーマンがアレンジしたオーケストラ演奏とトリオの共演。2枚組である。本音源には Waltz For Debby やスタンダードの名曲が並び美しい演奏が満載。とても気に入った。ブックレットも当時の事を振り返るゴメスやモレルのインタビューが載っていて読み応えがある。目下の所ヘビーローテーション中である。
チック・コリアが亡くなった。大好きなジャズ・プレーヤーでありキーボード奏者の一人だった。自分と彼の音楽とのつながりを振り返りながら、哀悼の意を表したい。
中学生の時に聴いたReturn To Foreverがジャズに興味を持つきっかけだった。正確にはジャズ・フュージョンと呼ぶべきかもしれないが、プログレッシブ・ロックしか聴かない私にとって大きく心引かれるサウンドだった。エレクトリック・ピアノ、フルートそして女声スキャットが紡ぐラテン的バンドの音がとても心に残った。正確にはコリア名義のアルバムがR.T.F.だったそうだ。が、パーマネントなグループ活動となり次作のLight As A Featherもとても良かった。このアルバムでは特にタイトル曲が好きだが、作曲はスタンリー・クラークだと今アルバムジャケットを見て気がついた。彼のベース・プレイは光るものがあるが、作曲家としても才能を現していた。そしてドラマーとしてレニー・ホワイトやギタリスト、ビル・コナーズを迎えた新編成でロック色が強くなり、その後超絶ギタリストのアル・ディメオラが加入してアルバムNo MysteryやRomantic Warrior(ロマンの騎士)を出す。特にタイトル曲「ロマンの騎士」はテクニカルな奏法と美しさを持つ曲で、大好きだった。このテクニカルさによって、アルバム全体がプログレと言っても良いくらいだ。この4人バンドが散会したのは残念だったが、続くMusic Magicは自分が持つLPジャケットの中で一二を争うくらい美しいと思うアートワークで、曲も演奏も良い。チックの奥方であるゲイル・モランのヴォーカル(オルガンでも参加)が魅力的。
R.T.F.としては以上だが、ソロも好きな作品が続く。妖精、My Spanish Heart、そしてThe Mad Hatter。My Spanish...の1曲目Love Castleも大好きな曲で、G・モランのスキャットが美しい。このアルバムにはヴァイオリンのジャン・リュック・ポンティが参加している。妖精も良かったが、なんと言っても私はMad Hatterが気に入っている。発売当時にLPを買ったが、その後紙ジャケCDも揃えた。チックやスティーヴ・ガット、そしてゲスト参加のハービー・ハンコックなどの演奏は言うまでもなく、心に残る旋律、不思議の国のアリスをモチーフにしたトータル性が私のハートにドンピシャリだったのだ。今回改めて聞き直して、やっぱり良いアルバムだと思った。
そして私は過去に2回、チックの演奏を生で聴いている。最初は78年6月10日渋谷公会堂でのライブで、AN EVENING WITH CHICK COREA FEATURING GAYLE MORAN WORLD TOUR・13 PIECE BANDというタイトル。どんな曲を演奏したのか覚えていないのだが、弦とブラスが加わった圧倒的なサウンド、G・モランがほぼ中央にオルガンを前に鎮座していたこと、そしてチックがドラム・スティックを自分の鼻と唇の間に挟みながら登場するなど、最初からおどけた仕草をして会場内が大いに沸いたことはよく覚えている。
2回目はアル・ディメオラ期4人編成Return To Foreverの再結成ライブである。これは83年の札幌厚生年金会館。期待したライブだったが、何となく4人の息が合っていないような印象で、消化不良に終わってしまった。その後LIVE UNDER THE SKYに登場したライブがテレビやFMで放送されたのだが、その印象は変わらなかったのが残念である。
最後は少々辛口になってしまったが、シンセサイザーも巧みに使いこなし、私の人生において充分楽しませてもらったチック・コリアの音楽。手元の音源を並べてみた。LPもCDも処分してしまったのが何枚かあるのだが、逆に言うと外せない作品が残った。この中でlight as a featherのCDは2枚組で、別ヴァージョンの演奏テイクが収録されていて今も愛聴盤である。いつまでも心に残る音楽をありがとう、チック・コリア。Rest in peace.
ようやくスティーブン・ウィルソンの新作のカセットテープ・ヴァージョンが届いた。
こちらは第一印象、とてもシンプルな作りである。写真のとおり、本体は白地のプラスチックに黒の印字。ジャケットも表はジャケ写と曲名、裏側はクレジットがあるだけで写真や歌詞はなし。昨年3月に予約を入れた時の価格は1300円台と安価だったので、あまり凝った形を意図してはいなかったのかもしれない。実は昨年末、竹内アンナ新作「AT4」もカセット版を出し購入したのだが、最近のテープは昔当たり前だったドルビー・ノイズ・リダクションのマークがない。その処理がなされていないようだ。これも時代の流れか。アナログ盤と同じA面6曲、B面3曲の構成である。「裏面にひっくり返す」ことを楽しみながら、改めて聴いてみよう。
アルバムタイトルであるTHE FUTURE BITES とはどういう意味なのだろうか。FOLLOWERという曲中に、Future bitingとの歌詞が出てくるのだが、まだしっかり読んでいないので解釈ができない。SW氏の歌詞はいつもはそれほど難解ではない気がするのだが、今回は難しい。そこで今回はサウンドに注目。
アルバムは全9曲でトータル42分程度。CD中心の時代は各アーティスト60分くらいの尺が多かったものだが、今回はLPの長さに合わせたのか短め。それでもいろいろなタイプの曲がある。第一印象は、打ち込みリズム風の曲が増えていること。何か80年代のテクノ・ポップを聴く感じだ。だが、クレジットにプログラミングとの表記は多いのだが、ドラムスの録音も確かに行われているようだ。打ち込みとバンド・サウンドの中間的な音楽だ、と理解しておこう。
1曲目の1分少々のUNSELFからSELF、KING GHOSTと続く3曲はメドレーのように繋がっている。特にKING GHOST は妖しげで美しいアルペジオが独特の雰囲気を与えるSWらしいサウンドと曲調である。前述のPERSONAL SHOPPERやEMINENT SLEAZEも繰り返しのフレーズが耳に残る中毒性を持った曲だ。一方、12 THINGS I FORGOTはストレートなポップ・ソングで、FOLLOWERはバンド風ロック・ミュージック。そして、MAN OF THE PEOPLEは私好みの叙情性に満ちた曲だ。と、こうして聞いていくと今回も飽きさせない曲構成になっていると思う。ただ何か物足りなさを感じるのは短い曲が多いせいか。全体が42分程度なので必然的にそうなるのだろうが、PERSONAL SHOPPERが10分弱、ラストのCOUNT OF UNEASEが6分強であとは4分代の曲が多い。コンパクトにまとめた感じだ。それでもこのアルバムは到着後からヘビーローテーションである。コンパクトゆえ続けて繰り返し聴くことになってしまう。さすがSTEVEN WILSON、今回も楽しませてもらっています。あとはカセットテープの到着を待つのみ。
2021年初頭の音楽的マイ・ブームはSteven Wilson の新作THE FUTURE BITESである。私はこれを予約したのは昨年の3月だったと思う。その後の新型コロナの関係だろうか待つこと約1年、ようやく先日発売になった。昨年後半くらいから動画サイトにPVがいくつかアップされていたが、あえてそれには触れず、到着を待っていた。ということで、今回は完全なる第一印象を記してみる。
私が購入したのは通常のCDとアナログ盤である。今回はボックスセットのヴァージョンもあるようで、SWがどのようなパッケージ戦略で新作を発売するのか少し興味を引かれた。その中、アナログ盤はブラック・ビニールに加えてレッド盤とホワイト盤があるという。最近のアナログ盤は高価なイメージがあるが、こちらは3千円台でポイントを使うと2千円台で購入できることがわかり、どのようなアートワークが見られるのかと今回は食指が動いた。注文したのはホワイト盤で、こちらも先日到着。さらに、今回はカセットテープでのリリースがあるのだ。今やレトロというか、オシャレ心を誘うまでに至ったカセットテープでの発売をするとはSW氏、なかなか消費者(=私)の心をくすぐるではないか。というわけで、実はこれも昨年3月に予約注文をしていた。だがこれだけまだ発売となっておらず、届くまでもう少し時間がかかりそうである。
さて、CDは紙製の外カバーに真っ白なプラスティックのケースが収納されている。透明ではないところが新鮮だ。そして正面に記載されている暗号のような表記。これはちょっと考えるとすぐにわかるだろうが、アーティスト名とアルバムタイトルだ。中のブックレットは黒白赤の3色(今回のレコード色と同じ)のみで構成されていて、通信販売の商品紹介のような写真が載っている。PERSONAL SHOPPER という曲があるのが関係するのだろうか。アナログ盤の方もCDと同じ装丁で紙のケースに見開き型のジャケットが挿入されている。ブックレットも全く同じ(もちろん大きさは数倍)。そして真っ白なディスクは溝があまり見えない。久しぶりに新譜のアナログ盤を買ったが、ジャケットが大きい(厚い)ので、これはなかなかの存在感だ。(続く)
(Instagramより)
エディのギター・テクニックは当時まねのできる者は周りにはいなかった。でも今は当たり前のように演奏するアマチュアもいるのが驚きだ。そのテクニックの中で、訃報に関する報道ではライト・ハンドのタップ奏法について触れているのが多かったが、実はGenesisのギタリスト、スティーヴ・ハケットがいち早く披露していたことはあまり知られていない。どっちが先かということではない。実力のあるギタリストは自分の楽器の可能性を追求し、様々な奏法を工夫するのだなと改めて感じたのである。
エディは65歳だったことを今回のニュースで知った。私とたった2歳違い。Rest in peace, Eddie.
以前このブログで大絶賛した竹内アンナのアルバム"MATOUSIC"のアナログ盤が今月リリースされた。大変ミーハーな話で恐縮だが、発売元のテイチクで購入するとLPレーベル部分に本人の直筆サインが貰えるというので、迷わず予約した。さらに、そのサイン会がオンラインで生中継されるという。なかなか面白い企画である。
今月8月8日に開催されたインターネットサイン会では、サインしながらのいろいろな話が聞けた。まずは私が一番気に入った3曲目のI My Me Myselfのアコギソロがとても難しかったと言っていたのが興味深かった。カッコイイが確かに難易度高そうなフレーズである。何度もトライしたそうだ。もう一つは、カセットテープでも出したいと言っていたこと。これはぜひ実現してほしい。ラジカセ主流の青春時代を送った私としてはカセットテープは外せないアイテムなのである。
そして現物が届いた。帯なしだったのが少し残念ではあったが、大きなジャケットとレコード特有のサウンドでMATOUSICを再体験でき、大変嬉しく思った次第である。
(下の写真は載せて良いのかとも思いましたが、良い思い出なので掲載させていただきます。)
これは今風に言えばとってもヤバいアルバムだ。
竹内アンナ。息子が住む京都に在住の大学生ミュージシャンということで、時々チェックしたことがある。その時はアコギを抱えながらアンニュイな声で歌う女の子シンガーソングライターという印象だった。だが、今や完全に化けた。3月にリリースされた初のフルアルバムはとんでもなく素晴らしい。私としては久しぶりに家でもWALKMANでもヘビーローテーションの一枚である。
ではその魅力とは?
(1)全11曲どれもキャッチーなメロディを持つ名曲ばかり。特に私はM3の I My Me Myself という曲にぶっ飛んだ。その他 M1 の RIDE ON WEEKENDはWOWOWドラマのテーマソングになっているそうだが、他のどの曲もドラマに採用されておかしくないほどのクオリティがある。
(2)その曲を生かすアレンジが絶妙。M3はKIRINJIの「AIの逃避行」を聴いた時以来の衝撃。クレジットを見ると、アレンジャーとしてTakeshi Namuraという名が読める。
(3)歌声がキュートであることに加え、時々ラップが混じり、英語の発音もネイティブ並み(アメリカ産まれだそう)で心地よい。ラップはあまり好きでないのだが、彼女の曲は抵抗感なく聞ける。
(4)歌詞を紡ぐ日常的な言葉でさえも詩的な要素があり、文学部出身の私としてはとても楽しめる。時々毒のある言葉を吐くのも良い。
(5)アコギの演奏が素晴らしい!特にスラップ奏法を加味したソロは秀逸。
さらに加えると、PVでは機材を駆使してひとりライブを実演している。ここでもミュージシャンとしての才能が垣間見られる。
MATOUSICは全11曲。だが、購入者のみが味わえる秘密が含まれている。
若き才能あふれる竹内アンナ。さらに聴く人が増えてほしいと思うアーティストであり、今後が楽しみだ。
YouTube site: I My Me Myself by 竹内アンナ
YouTube site: 【Studio Live】竹内アンナ / ALRIGHT 〜 Free! Free! Free!【Digest】
カーペンターズとしては17年ぶりの新譜である。当初このアルバムの情報は、過去に録音されたカレンの声に兄のリチャードが再編曲したオーケストラ・サウンドを新たに加味するというような内容だったので、声はそのままだけれどバックが違う別物作品としてリリースされるのだと思っていた。しかし実際に聴いてみるとそれは早とちりであった。曲のアレンジは基本的に変わらず、ストリングスやオーケストラの編成を大きくしたという。これはリチャードが当初抱いていた理想の仕上がりを実現したものだ。
リチャードがこのアルバムをあえて制作した意図は、付属のリーフレットに明記されている。「オリジナルの録音で重要な楽器が少し音が狂っていたり、曲によっては終わりの方でテンポが速くなっている」部分の修正、「CD化で目立ってしまった録音時に発生した雑音」「とりわけカレンのリード・ヴォーカルに紛れた空調音」などの除去、そして「長年温めてきた追加アレンジのアイデアを形にした」という。国内盤にある村岡裕司氏の解説では、オリジナル録音当時あまり予算がなくストリングス・プレーヤーの数にも制限があった実情が紹介されている。だからこそ今回のバックのサウンドはとてもゴージャスである。写真を見ても実に多くのプレーヤーが演奏に参加しているのがわかる。
マルチトラックのテープから音源を取り出し、デジタル処理により不要なノイズ等を除去しながらミックスし直すというのはビートルズのサージェント・ペッパーや最近のホワイト・アルバム、そしてスティーヴン・ウィルソンによる5.1チャンネル・サラウンド化されたキング・クリムゾンやイエスなどのアルバムなどがある。それらは録音されたオリジナルの素材音源を生かしている。しかし、このアルバムは演奏自体が差し替えられている(どの部分がそうなのか細かいところまではわからないけれども)ので、オリジナル・バージョンを聞き慣れた身としては、所々違和感を感じるところもあったが、我が息子によると、バスドラのもたつきがなくなっている(Top Of The World)とか、変なタムのフィルインがなくなっている(Close To You)など、ブラッシュアップされたカーペンターズの名曲を改めて聴くことができる。しかし何と言ってもカレンの歌が素晴らしい!過度なリバーブがなくなり、よりクリアになったその歌声は、まるで目の前で彼女が歌っているかのような気分になってしまう。カーペンターズは来年2019年にデビュー50周年を迎えるけれど、このカレンの歌声は永遠に残り続けるだろう。年末、ヘビーローテンションで聴いている一枚である。