ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

スティーヴ・ハケット新作ライブ盤が到着!Live At Hammersmith

2013年10月30日 | プログレ
 ハケット先生の新作ライブ盤が到着した。確かリリースが今月20日頃なので、1週間と少しで本国UKから届いたことになる。思ったより早く手にすることができた。なぜUKに注文したかと言うと、プレ・オーダーでハケット先生の直筆サインが頂けるからであった。現物を見ると確かに外側ケースの上部に、白字でサインが書かれている。

 さて、本ライブ盤はCD3枚+DVD2枚の豪華5枚組である。今年5月に行われたロンドンのハマースミスでの公演がフルに記録されている。実に収録時間2時間41分20秒。CDはこれを3枚に分割。DVD(5.1サラウンド音声あり)では一気に見ることができるのだが、ステージに上がり、降りるまで曲間も含めてノーカットで収録されていると思われる。従ってこの日のセットをそのまま体感できるのだ。さらに6月に私が行った川崎クラブチッタでの来日公演と違う点がいくつかある。
1ステージ上に3面のスクリーンがあり、曲に応じて映像が映されること。
2リードヴォーカルとギターにゲストミュージシャンが参加したこと。
3ジェネシスの曲ではなく、ハケット先生のソロ作であるShadow of the Hierophantが演奏されたこと。
4Eleventh Earl of Marが演奏されたこと(逆に日本では2日目のステージでギターソロのHorizonがセットリストに加わったのだが)。

 特にスタジオ盤と同じゲストヴォーカリストを迎えてのステージが構成されたのはさすが地元での開催と言える。中でも、Afterglowにおけるジョン・ウェットンの歌唱力は少しも衰えを感じさせないほど素晴らしいものであった。また、The Lamiaでは、これまたスタジオ盤どおりにマリリオンのSteve Rotheryがギターで参加、なるほど終盤のギターソロはそういうことになっていたのかと、納得の場面であった。

 未視聴の方々のために、これ以上詳しいことは触れないが、実に見応え(聴き応え)のあるライブである。ただ一つ難点を挙げるとすれば、ヴォーカルのキーの合わない曲があり、LamiaでのNick KershawもメインのNad Sylvanも少々苦しそうな場面があること。とりわけEleventh~は本当に高い音程が必要でメロディが変わってしまっている。学生時代に私のバンドもこの曲をやり、ヴォーカルを担当した私自身が苦労したので実感するのだ。しかし、ハイライトのSupper’s Readyではオリジナルと寸分違わない演奏と、 Nad の頑張りで感動的だった川崎でのステージを思い出させてくれる。
 Behind the ScenesのDVDもついて、一粒で3度おいしい作品と言える。


エラリー・クイーン「ギリシャ棺の秘密」とダン・ブラウン「インフェルノ」

2013年10月11日 | ミステリー小説
 しばらく更新していなかったが、何冊か小説を読み続けていた。そのうちの一冊が「ギリシャ棺の秘密」である。私がエラリー・クイーン国名シリーズ第4作目であるこの作品を最初に読んだのは、遙か昔の中学生の頃、井上 勇訳による創元推理文庫版であった。当時大変面白かったということと、真犯人が誰であるか(それはあまりに意外であったので)を鮮明に覚えていた。だが、なぜ面白かったのか、即ち話の内容は全く覚えていない。そんな状況の中、このほど刊行された角川文庫版新訳にてこの作品を再読した。
 ということで、今回私は犯人がだれであるかを知りながら物語を追うことになったわけだが、結局その者を犯人だと決める確証と説明を見いだすことができなかった。見事に手がかりがカモフラージュされているのだ。それなのに、解決編を読むとなるほどと思わされるのである。真犯人を導く作者クイーンのロジックと犯人を隠蔽する巧妙なレトリックに改めて気づかされた。まあ、私の頭がついていけないからというのもあるのだろうが。
 そして、初読の時になぜ面白いと感じたのか、まずこの物語の事件発生舞台が墓地であることが、怪奇趣味とまではいかないがゴシック的雰囲気を醸しだしていること、場面も次々移り変わりサスペンス性が込められている。若き青年のエラリーとその失敗(そのためそれ以降は全貌が確定するまでいっさい犯人の名前は言わないという原則が生まれる)が描かれ、いくつかの仮の解決も用意されている。さらにヒロイン的な人物が登場し、重要な役回りを演じるからである、ということが改めて分かった。そうした要素はここまでの3作品と異なっていて、後味も違う。さらに、恒例の面白解説によると、作品のある部分に作者の謎かけが仕込まれていて、…なるほど!というわけで全く気づかなかった。
 角川版のこの新訳はやはり読みやすい。

 さて、もう一冊はギリシャとは全く関係のないダン・ブラウンの最新作Infernoである。「ダ・ヴィンチ・コード」で有名なロバート・ラングトン教授の4作目でもある。私はこの本をアメリカ合衆国在住である大学の大先輩から頂戴した。重厚な装丁のハードカバーである。その作りが大変素晴らしい。翻訳が来月下旬に登場するようだが、ほんの少し早く読むことができた。と言ってもまださわりの方である。いつもの意味深なプロローグの後、冒頭突然ラングトンが病院で目を覚ますところから始まりすでにサスペンス感がいっぱいである。大先輩によるとモチーフはダンテの「神曲」で、イタリア語による文章が所々出てくるそうだ。PFM(イタリアのプログレ・ロックバンド)の歌詞しか知らない私にはそこは難関だ。(ただし、日伊辞典は持っているし、スペイン語は勉強したことがあるので何とかなるかも…!?)英書でこの長編を読み切るにはかなりの時間を要しそうなのだが、今のところはストーリーを追うことができている。各チャプターが短いので読みやすいとは思うが、翻訳が登場するまでに読み切れるだろうか、それとも…。


E・クィーン角川文庫版新訳「エジプト十字架の秘密」とあかね書房「少年少女世界推理文学全集」

2013年10月01日 | ミステリー小説
 角川文庫版新訳のエラリー・クィーン、「エジプト十字架の秘密」が刊行された。この国名シリーズの新訳、こちら角川文庫版は何と昨年10月以降約3ヶ月毎に刊行されている。ほぼ1年で5冊が登場。かなり速いペースではないだろうか。越前敏弥氏と作品毎にパートナーが変わっているが二人がかりで翻訳にあたっているのもそれと関係しているのだろうか。そういえば、作者エラリー・クィーンも実は従兄弟二人によるペンネームで、作品も彼らの合作であった。

 ここまで再読してみるとこれら(ローマからギリシャまで)は本当にロジックで論じられた作品であると実感する。文庫で最初に読んだのが中学生の頃だったから当時はそれほど感じなかったかもしれない。その意味で今とても面白く読める。複雑な密室や怪奇趣味は一つもないが、いわゆる本格ものの醍醐味を味わっている。

 ところで、角川版は飯城勇三氏の解説が毎回面白い。今回はあかね書房の「少年少女世界推理文学全集」における「エジプト十字架の秘密」についても触れている。それによるとこのジュニア向けにリライトされた同書によりクィーンを初めて知った作家がけっこういるというのだ。新井素子氏や有栖川有栖氏などの著名人が上げられている。そして作家ではないが私もその一人である。何とも彼らに親近感を持ってしまう。このブログで紹介するのは3回目となるのだが、自分が中学生くらいに買った同書写真を再度掲載する。そして、横尾忠則氏が挿絵を描いているということにはこの解説を読むまで気がつかなかった。よく見ると確かに小さく名前が載っている。監修者として川端康成の名前もあるので、当時としては大変ハイセンスな全集だったと言える。そういえば先日某オークションにこの全20巻が一括で出品され、何と12万円台で落札された。一冊あたり約6000円である。根強いファンがいるのだなぁと思う。子どもの頃リアルタイムに書店で買ったのは3冊のみであった私自身も機会があれば集めようと思い、たまにオークションに参加するのだが低価格ではなかなか落とせない。現在はようやく半分の10冊である。

 さて、角川文庫版国名シリーズは一息ついた後、今後後半が刊行されるようだ。創元推理文庫版新訳も追随すると思われる。かつて創元版では本来国名シリーズではない「間の扉」という作品が「ニッポン樫鳥の謎」として出版されているが今回の扱いはどうなるのだろうか。それも含めて後半の作品群の再読を楽しみにしていようと思う。