![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/12/b2a3701bf9195f85f1a23f8634b6abfc.jpg)
舞台には大がかりなセットはなく、キャストが演じる後ろに音楽を演奏するオーケストラが配置されている。何も予備知識なしに見て驚いた、冒頭にレインコートを着て登場するのが作曲者ミシェル・ルグランその人だったからだ。凄いことだ、この作品の全曲がルグラン自らの指揮によって演奏されるのだ。かつてそんな機会があっただろうか。贅沢である。ということで最初から画面に引き込まれた。
物語は映画と同じように進行するが、出演者は映画のイメージとだいぶ違って見える。特にロラン・カサール氏の風貌はかなり高齢に思える(それは見ていただければわかる!)。しかし全員の歌唱力は素晴らしく聞き入ってしまった。また映画の各場面をステージでどのように見せるのか期待したが、観客の想像力を借りるシンプルなセットで見事に表現していた。印象深かったのは最後のガソリンスタンドの場面。映画の演出と違って、外出から戻ってきたマドレーヌがジュヌビエーヌの姿を、ジュヌビエーヌがマドレーヌの姿を垣間見る(ように見える)シーンがあった。これによって最後の余韻が全く違って感じられた。
ところで、1960年制作のジャック・ドゥミ初の長編映画「ローラ」の音楽をルグランが担当しており、「夢見るロラン・カサール」という曲をいくつかのCDで聴くことができる。その曲がシェルブールのカサール氏が歌う曲(後のWatch What Happens)と全く同じなのである。この映画の詳細もわからないため不思議に思っていたのだが、本作品の中でカサール氏が過去を告白する時に、かつてローラという好きな女性がいた、というフレーズがあるのにようやく気がついた。両作品は関連があると思われるがどうなのだろうか。
日本盤でないので字幕はフランス語と英語のみである。しかし、ルグラン氏の元気な姿が見られただけでも元が取れる作品である。