ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

スティーヴン・ウィルソン新作 “To The Bone” ブルーレイ盤

2017年08月30日 | プログレ

 スティーヴン・ウィルソンの5枚目のソロアルバム。本ブルー・レイ盤にはアルバムのハイレゾ96/24ステレオ・ミックス、同じく96/24ステレオのインストルメンタル・ミックス、そして5.1サラウンド・ミックス音源が収録されている。さらにビデオ素材としてはメイキングのドキュメンタリーとSong of I、PariahのPVを見ることができる。前作のブルーレイにあったmp3等ファイルのダウンロード・コードは今回は付属していない。
 さて、新作として11曲が収録されている。私は彼の全てのアルバムを聴いているわけではないが、今回もSWらしい曲が揃っていると思う。1曲目のTo The BoneからSW節全開で、後半のプログレ的な展開に早速のめり込むことができた。特に耳を引いたのはPermanatingで、とてもポップなアレンジの曲である。ビートルズ的な、いやビートルズの遺伝子を持つジェフ・リン的なサウンドでとても印象に残った。その他一度聴いただけで気に入った曲が多数あり、安心してSWワールドに没頭することができる。歌詞の内容を紐解きながら、繰り返し聴きたくなるアルバムだ。

 ドキュメンタリーでは録音の様子が記録されている。スタジオと思われる場所には楽器や、アンプ、エフェクターなどが山積みになっており、自ら楽器を弾く者にとっては興味を引かれるはずである。ドラマーのJeremy Staceyがスネヤ類が置かれている部屋を見て、とんでもないビンテージが揃っている!と驚く場面もあった。小綺麗なスタジオではなく、機材が散乱している普通の家のような場所でこのような作品が生まれたと思うと、とても不思議な感じがする。宅録をしている者にとっては励みになるのではないだろうか。

 なお、5.1サラウンドがブルーレイ購入の目的だったが、それほど派手な音の移動等は聞かれず、必要最低限の空間作りという印象である。まだ1度しか聴いていないので今後新たな発見があるかもしれない。

<追記>
 CDの方も購入し、さらに何度も聴いた。最初は気がつかなかったが、ハーモニカの音が随所“攻撃的”な音処理で入っており、このアルバムの特色のひとつであろう。ロック調だが想定外のコード進行がプログレする People Who Eat Darkness, 静かで美しい Detonation, ミサのような合唱が効果的な Song of Unborn などは頭から離れなくなった。それ以外の曲も含め、全曲が素晴らしい。完全にヘビーローテーションになっている。

念願の「フェンダー・テレキャスター2017アメリカン・プロフェッショナル・バタースコッチブロンド」を購入(その3)

2017年08月17日 | ギター

 それでは、実際にレビューしてみよう。届いた箱から出すと黒いギターケースが。ボディ材はアッシュなのだがメキシコ製テレキャスと比較して「軽い!」というのが第一印象。バタースコッチブロンドではあるが完全に木目が見える色合い。そして、さすが光栄堂選抜の一本、ケースから出してすぐに弾けるよう調整されており、茨木店長氏が言う「生きた振動系の存在感」は生音でもきれいに音が響く。さらにアンプに繋げて弾くと、これがエレキギターには完全に素人の私でも感じることのできる良い音なのだ。新開発のV-Modピックアップは全くノイズが発生しない。弾いていて気持ちが良いというのはまさにこのことだろう。ちなみに他のギターもアンプに繋げて弾いてみると、その場にいた息子が、音が全然違う!と驚いていた。これがFender USA+光栄堂厳選の底力なのだろう。

 音的には大満足のギターだが、辛口を少々。まずはヘッドロゴの変更が残念。表面にCAと入れるのならばUSAの文字を入れて欲しかった。単に日本人としての希望に過ぎないが。もう一点、ナロートールのフレットが意外と弾きにくい。スライドして弾くと指とぶつかる感じがして違和感がある。前述のGuitar magazine誌では、「スムーズな運指を実現する」「ハイポジションでの和音などでもより正確なピッチを実現する」等と説明されているので、それなりに理由があってのことだろうが、私としては慣れるまでに時間がかかりそうだ。

 この期に及んで高額な買い物をしてしまった私。しかし、こちらのギターには2年にわたる輸入元の正規保証と光栄堂楽器さんの無料調整が付いているので安心感が強い。かつてリッケンの新品620は色や形の美しさからほとんど観賞用になってしまったが、このテレキャス、2年保証を大いに活用し元を取るために、そして何よりも脳の活性化のために、一生懸命練習しようではないか。

<追記>
 ナロートールのフレットについては慣れるにつれて問題を感じなくなった。逆に、強く押したり弱く押すことで左手だけでのビブラートが可能であることを知った(笑)。それにしても、このギターはどこのポジションを押さえても良い音が返ってくることを日ごとに再認識。まさにセレクテッド・バイ・光栄堂である!

念願の「フェンダー・テレキャスター2017アメリカン・プロフェッショナル・バタースコッチブロンド」を購入(その2)

2017年08月16日 | ギター

 ギターマガジン2017年5月号の「フェンダー新時代。」で伝統と進化の邂逅と題し、まさにこのアメリカン・プロフェッショナル・モデルの紹介をしている。それによると、全モデルに共通するアップデートとして次の点が挙げられている。

・ピックアップ〜ピックアップ・エンジニアの巨匠ティム・ショウ氏が新たに開発したV-Modシングルコイル・ピックアップを搭載。
・ネック・シェイプ〜Modern "C"シェイプと"U"シェイプの中間のModern "Deep C"シェイプに変更。裏の塗装もサテン仕上げとなっている。
・フレット〜フレットサイズがミディアム・ジャンボからナロートールに変更。幅が狭く、高さのあるフレットになっている。
・Treble Bleed Circuit〜ボリュームを絞った際の高音域の減衰を抑えるトレブル・ブリード・サーキットを搭載。小さな音量でもきらびやかなトーンを確保。
・ナット〜人工骨から牛骨に変更。
・ブリッジ・プレート〜ヴィンテージモデルより高さの低い左右のエッジに変更。
・バック・コンターの廃止〜2012年以降のアメリカン・スタンダード・テレキャスターに施されているボディ・バック・コンターを無くし、ヴィンテージ同様の見た目に。
・ヘッドロゴ〜従来のMADE IN USA表記がカリフォルニア州コロナを意味するCORONA, CAに変更。
・テレキャスターのブリッジ・サドルがヴィンテージモデルのテレキャスターと同様のブラス製の3連ブリッジ・サドルに変更。

 その他、カラーも全9色、計11種ラインナップされている。実売価格も20万円弱というのは少し無理をすれば何とかなりそうな範囲ではないか。やはり30万も40万もするのは完全に腰が引ける。ではあるが、もちろん今回の購入は清水の舞台から飛び降りる覚悟であった。(続く)


念願の「フェンダー・テレキャスター2017アメリカン・プロフェッショナル・バタースコッチブロンド」を購入(その1)

2017年08月15日 | ギター

 前回紹介したフェンダー・ジャパン製ストラトキャスターの出番が今後なくなりそうな訳は、とうとう念願が叶ったからだ。息子にフェンダー・メキシコ製テレキャスターを譲渡して以来、自分のテレキャスが欲しかったがチャンスがなかったのは前回の記述のとおり。それはもちろん経済的な理由が大きいが、加えて「欲しい一品」の決断がつかなかったこと。

 以前こちらで書いた小樽の光栄堂楽器は入荷する楽器には必ず事前の店長選抜をすることで定評がある。同じギターでも個体ごとに鳴りの違いがあり、振動を基本に見極めるそうだ。結果としてここで売る楽器にはハズレがない。そのことは札幌の狸小路商店街にある店舗にて直接店長氏からレクチャーを受け実感していた。そしてこの度、新規選抜を受け入荷した中にこのアメリカン・プロフェッショナル・テレキャスター・バタースコッチブロンドがあった。店のサイトで写真を見たら、「私を買って」と久しぶりに呼びかけている声が聞こえた。そして今それが手元にある。

 アメリカン・スタンダードのフルモデル・チェンジとしてフェンダー社から今年登場したのがアメリカン・プロフェッショナル。過去の伝統と未来を見据えた革新性を持つモデルという位置づけでの新製品である。新品でエレキギターを購入するのはリッケンバッカー620以来2本目。実は新品を買うつもりはなく、中古のテレキャスを物色していた。それも必ずしもフェンダー製ではなくナッシュのギターも良さそうだったし、場合によってはフジゲンの古いのでも充分そうだった。何せ、たいした弾けないのだから(いや、現在練習中と言っておく)。しかし、一度は持ってみたかったフェンダーUSA。それが本音だったのも事実。そのような時に登場してきたのがアメプロである。(続く)

ストラトキャスター ST57-58US フェンダー・ジャパン製

2017年08月14日 | ギター

 2年ほど前にストラトキャスターを買った。フェンダー・ジャパン製で2000年代前半に製造されたもの。イシバシ楽器 WEBSHOP(U-BOX)で見つけたサンバーストの一本。息子にフェンダー・メキシコのテレキャスターを譲渡して以来、USA製のテレキャスを、と思っていたのだが予算的に難しく、実現するまでの間はストラトでと考え3万円台の中古で購入。しかし、ジャパン製と言っても外見はUS57年製と同じ仕様。ボディはアルダーでメイプルネック&指板、スパゲティロゴ、3way セレクターと当時の仕様が再現されている。また、本器にはUS ヴィンテージピックアップが搭載されており、「誰もが思い描くストラトサウンドを出力」というのが売り言葉であった。
 
 到着した時には中古でありながらピカピカに磨かれており、イシバシ楽器さんの心意気を強く感じたものだ。そして指板もなめらかな感触で、大変弾きやすいと感じた。チューナーもしっかりしておりアーミングを試してみても音が狂わない。(昔のギターは一瞬で狂っていたので。)残念ながら日常的にはアンプに繋げずただ弾いているのみなので、ピックアップの恩恵が今ひとつ感じられないのだが、たまに音出しするとファットな音。セレクト・スィッチによって変わる音に、これがストラト風かと納得。練習用のメインギターとして身近に起きつつ、いろいろ試してみようと思い早2年が経過。しかし、今後このギターの出番はあまりないかもしれない。というのも…(続く)。

<追記>
 (続く)の後はアメリカン・プロフェッショナルのテレキャスの話につながるのだが、ここで本ストラトについて追加記載する。その後アンプに繋げて頻繁に弾くことになり感想を。やはりエレキギターはアンプから音を出さねばダメだということを実感した。USヴィンテージピックアップの音が素晴らしい。若干のノイズを感じるが、いざ音を出すとマイルドというか、テレキャスとは違う暖かみのある音がする。ピックアップのセレクターをいろいろいじると変わる音色はどれも心地良い響き。アームを触っても相変わらずチューニングが狂わないのが凄い。エレキ歴が浅いのでサウンドをどう形容したらよいのかわからないのだが、購入して2年も経ったが改めて気に入った。コンパクト・エフェクターをいろいろ繋げてみるが、コンプなど必要最低限を加味するだけで充分だと思った。(それはバラード系のメロウな曲だけを弾くからかもしれないが。)「出番はあまりないかも」どころではない、今後も弾き込んでいくことに決まった。

ジョン・ディクスン・カー「曲がった蝶番」「テニスコートの殺人」読後感

2017年08月07日 | ミステリー小説
 先日購入したカーの作品のうち2冊を読了。読後感をつれづれになるままに。

●「曲がった蝶番」:自分が子どもの頃読んだのが偕成社の「踊る人形の謎(世界科学・探偵小説全集)」だということを後ろの解説を見て思い出した。だがその内容は全く覚えていなかったので、今回本文庫新訳版にて初めて読んだに等しい。自殺のようにしか見えない殺人のトリックについては確かに伏線や手がかりとなる表現が事前に示されているのだが、かなり想像力がないとわからないだろうという気がした。どちらの人物が本物かというサスペンス、自動人形のおぞましさ、そして若干のラブロマンス。ストーリーとしても一気に読ませる面白さが十分にあった。こなれた新訳の効果もあると思う。ただ、現場の状況が、外国の家ということでわかりづらかった。推理小説特有の見取り図があれば助かったのだが(単に想像力が不足しているだけか!)。

●「テニスコートの殺人」:これは完全に初読作品だが、大矢博子氏の解説ではこの作品を「現代的でテンポのいいサスペンス」と表現していて、実は私も全く同じ感想を持った。前半はサスペンス小説である。実際にはやっていない殺人の嫌疑を逃れるため主人公の男女が画策する。二人は愛し合っているし、殺された人物がイヤな奴なので必然的に読者は主人公の立場になって手に汗を握る、そんな流れである。カーってこんな小説も書いていたのか、と思ったのは大矢氏と同じ。そうした行動に出ざるを得ない理由は、犯人と思われる者の現場への足跡がないというテニスコートの密室化があるためだ。後半はその謎の解明に焦点が当たる。作者カーの「読ませる」筆力の高さを改めて知った作品だが、新訳の力も大きいと思う。そして、この作品には推理小説特有の見取り図が載っている。こうした図の有無で購入意欲が沸く私である。(それにしても「四阿」は推理小説でよく見る漢字だが「あずまや」と読ませるのが難しいといつも思う。)