上砂理佳のうぐいす日記

やっと秋らしくなりましたが、まだまだ日中は陽ざしがきついです。寒暖差で風邪をひかないように★

「ノマドランド」★

2021-07-18 | うぐいすよもやま日記
フランシス・マクドーマンドがアカデミー主演女優賞を受賞した「ノマドランド」。
4月の緊急事態宣言直前に、滑り込みで観ました。
感想を書きそびれていたので今ここで!

緊急事態宣言の影響もあるでしょうが、お客さんが一桁とは悲しい。
みんなもっと「文芸モノ」見ません?(「文芸モノ」という括りが適切じゃないけど)
漫画原作のアクションばかりでなく。
前評判通りカメラワークが素晴らしく、アメリカの荒涼とした大自然の描写に圧倒されました。
またそんな「荒涼とした大地」=「僻地」に、A⚪azonの巨大倉庫があったりして、モクモクと働く人たちの描写。とても現代的。
主人公の中年女性ファーンも、日雇いや季節労働でお金を稼ぎながら、トレーラーで移動します。「家は車」で、定住しないのです。
周りはそんなトレーラー仲間ばかりで、スペアのタイヤや工具もしっかり持ち、物や情報を交換しながら、アッサリとした絆でつながっています。「またどこかで会えたらいいね」ぐらいの。

ファーンには先輩格の女性の友達が出来ます。
もう、70歳過ぎ?ぐらいの「旅の達人」みたいなしっかりした人ですが(俳優でなく一般の人が演じているというから驚きます)、病に犯されながらも一人くじけず、孤高の境地に居ます。
夫を亡くし、思い出の故郷も振り捨ててきたファーンは、この先輩女性に大切な何かを学んでいるようでした。

また、トレーラー仲間の一人で何かとモーションをかけてくる?初老の男性の、入院をサポートしてあげたことがきっかけで、「僕と一緒に住まない?」と誘われます。
彼はその風貌から、あてどないホームレスかと思いきや、息子の立派な邸宅に自分の部屋も持ち、可愛い孫と遊ぶ「そこそこ裕福で幸せな人」でした。
家に招かれたファーンが美味しい手料理でもてなしを受けたり、彼と息子でピアノの連弾を楽しんだりしてるシーンで、レベルの高い生活を送ってきたことがよくわかる。
家族関係も良好で、息子一家は老いた父のガールフレンドを、温かく受け入れてくれようとしてます。
根なし草のファーンは、この男性から言わばプロポーズされているのに、黙って立ち去り、自分のトレーラーに戻ってしまいます。
かっこいい風来坊に見えた彼が、病気もあったからか「保守的な好好爺」になっちゃって、ちょっぴり幻滅したのか。
このまま一緒に暮らしたらわたし、この赤ん坊のお守りに付き合わされるのよね。。。(自分の孫でもないのに)
息子さん一家に気を遣いながら、ね。
ファーンの微妙な心理、わかるようなわからないような、いやわかる。

また、ファーンはトレーラーの故障でまとまった現金が必要になり、実の姉の家にお金を借りに行きます。
姉は優しくお金持ちで、「一緒に住みましょう」と熱心に言ってくれますが、ファーンは断固拒否。
また一人、あてのない旅に出てしまいます。

困った時に手を差しのべてくれる人がいて、自分でお金を稼ぐ力も持っていて、時々遊ぶ余裕も持っている。
束縛がなく気ままで良い人生に見えるけれど、ご主人も自宅も住んだ街も全て無くしたファーンの、底冷えがするような孤独が突き刺さります。
大晦日に小さな花火を買って振り回しながら、一人で「ハッピーニューイヤー」と唄うところなんか、涙が出てしまう。

マクドーマンドは映画監督のコーエン兄弟のお兄さん、ジョエル・コーエンの奥さんということで、これもオスカーを受賞した「ファーゴ」で面白い女警官を演じていました。
ファーゴ、めっちゃ傑作です。癖になるコメディ+サスペンスです。見て!
昔は美人女優だったのかもですが、オバサンの今は、さしづめ高畑淳子みたいな立ち位置なのでしょうか。
確か、「バーバー」にも脇役で出てたと思いますが、何の役でも、必ず「いい味出してる」印象的な人。
マクドーマンド一人の場面が続き他の人物の描写が弱く、ドラマの厚みに欠ける感じがし、正直「アカデミー賞?うーん?」ですが、最近のオスカーはエンタメより社会風刺作品に傾いてますもんね。こういう傾向、続きそう。

若者の時は「ノマド的」=「定住しない」生き方も楽しいけれど、身体に故障が出てくる中高年にはキツいわあ。
そんな現実的な感想が先に出てしまうなんて、自分が情けないというか(笑)。
見る人の年齢や状況によって、印象が全く違うであろう映画のひとつでした★
コメント
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