世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

「たったひとりのあなたへ~『蟹工船』 小林多喜二の伝言~」

2010年02月24日 23時59分25秒 | Weblog
会社のロビーに生けられた今週の花。
私の大好きなピンク色のガーベラだ。

昼休み、ロビーに設置された自販機に行く際、写メでパチリ☆
そんな私に、他部署のオサーン社員たちは、
「よ!今日も元気そうだね」
などと声を掛けたりする。

喫煙所では先輩紳士がまたもや不思議な煙草を吸ってらした。

先日はカフェオレフレーバーの煙草だった。
レアな煙草…いったいどこで購入するんだろう。


ちょこっと残業をし、帰宅。
NHK歴史秘話ヒストリア」という番組で、小林多喜二が特集されていた。

私が初めて人の遺体を写真で見たのは、社会の教科書に載っていた小林多喜二のものだ。
拷問の末に亡くなった彼の死体を多くの仲間が取り囲んで見ているあの写真。
白黒の悲しい写真だった。

大学時代の夏休み、ゼミのレポート提出にあたって彼の作品「蟹工船」を読むことになった。重くて苦しい内容だった。その年の夏はずっと暗いものになってしまったのを覚えている。暫くは家にあるカニの缶詰を見る度に「プロレタリア…」と呟いてしまうぐらい、あの頃、お気楽極楽な学生生活をしていた私には強烈すぎる作品だった。

発表から80年が経過した今、雇用情勢の悪化に伴って「蟹工船」が再びブームになっているらしい。
昨年は映画にもなった。

今日の番組では多喜二の生い立ちから死に至るまでと、今、なぜ「蟹工船」がベストセラーになっているのかということを取上げていた。
思想弾圧の中、自分の主張を曲げることなく社会的弱者を救うために書き続けた多喜二。
酌婦との悲恋話や母子の絆、拓殖銀行のエリートバンカーだったこと、そして社員旅行で楽しそうに写っている多喜二の様子など、大変興味深く観た。そして、号泣。

最近は部長交代があり、だいぶ社風も変わったが、でも自分は会社に宦官されたんだと僅かながらに感じることがある。
社長の言うことは絶対で、「労働者の権利云々なんて考えていません。働けるだけありがたいです」というように、権力に過剰に服従。まるで中国の宦官を施された官吏の精神で働いているところがある。
私に宿っているそんな精神を差し引いても、会社に反旗を翻すことは恐らくこの先、ないと思う。仕事は大変だけれども、ロビーに生けられている花を愛でたり、喫煙所で紫煙をたゆらせながら談笑をする生活が私はやっぱり好きなのだと思う。イヤナコトとイイコトの均衡が上手くとれている毎日だ。給与面では同僚たちと「少ないですよねえ」と話しながら、でも心の中でどこか諦めている。「自分に何ができる?」と自問すると、まあこんなもんかなあ、と。

「蟹工船」を意識せずに生きられることに、感謝せねばならない。
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