平成28(受)1050 クロレラチラシ配布差止等請求事件
平成29年1月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所
よく新聞の折り込みに入っているクロレラのチラシについて、薬事法問題があるのではないかと訴えた意見です。
通販新聞では薬事法の話がでていませんが、ECのミカタのコラム記事では、元検事が書いているので、そちらを引用します。
サプリメントを販売する際に医薬品的な効能効果を謳うと薬事法違反になりますので、このチラシは問題があるのではないかと思ったのですが、チラシには具体的な商品名の記載がなく、特定のサプリメントについて効能効果を謳ったとは言えなかったため、直ちに薬事法違反で摘発するのは難しい状況でした。
その後、新聞の折り込みに「解説特報」を見かけなくなったと思っていたところ、今年の1月21日、京都地方裁判所で、サン・クロレラ販売に対する適格消費者団体からの差止請求を認める判決が出たというニュースが流れました。
この訴訟では、日本クロレラ療法研究会の名義で配布されていた新聞の折り込みチラシの説明が、サン・クロレラ販売の「サン・クロレラA」などに関する優良誤認表示に当たるとして、景表法に基づくチラシ配布の差止めが認められました。
日本クロレラ療法研究会のチラシには、クロレラに関して、「病気と闘う免疫力を整える」「細胞の働きを活発にする」「排毒・解毒作用」・「高血圧・動脈硬化の予防」「肝臓・腎臓の働きを活発にする」などの薬効があると記載されていました。
ある食品や栄養成分の研究会を立ち上げて、その効能効果について研究したり、研究結果を公表したりすることは何ら違法ではありません。しかし、それが特定のサプリメントの広告とみなされる場合には、広告しているサプリメント自体が「医薬品」とみなされ、未承認医薬品の広告として、薬事法違反になります。
薬事法上、効能効果の記述が特定の商品の「広告」となるためには、以下の3つの要件が必要だとされています。
①顧客を誘因する意図が明確であること
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③一般人が認知できる状態にあること
日本クロレラ療法研究会のチラシには、サン・クロレラ販売のサプリメントの商品名は掲載されていませんでした。チラシの効能効果に興味を持った消費者が研究会に問い合わせをすると、サン・クロレラ販売のカタログが同封された封筒が送付されてきて、初めてチラシの効能効果と特定の商品が結びつくという手法が採られていました。
そのため、形式的には、研究会のチラシは、広告3要件のうちの①と②が欠けており、薬事法上の「広告」には該当しないとの主張が可能でした。こうした研究会のチラシは、長年にわたって、薬事法のグレーゾーンとして、当局の摘発を免れてきました。
サプリメントの場合、ほとんど効能を謳っているとしか言いようがない物ばかりですが、クロレラの場合はよく目立つのでやり玉に挙がった可能性があります。胡散臭いサプリが結構ありますからね。
判決では、たとえチラシの紙面に商品名の表示がなくとも、消費者がチラシの説明に誘導されて特定の商品の購入に至る仕組みがある場合には、景表法違反に該当すると判断されました。
まずは事実認定から始めます。
1 消費者団体がクロレラのチラシが消費者契約法でいうチラシを4条1項の抵触するとして差し止めを求めました。
4条1項 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
2 平成25年8月21日,クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするなどの効用がある旨の記載や,クロレラを摂取することにより高血圧,腰痛,糖尿病等の様々な疾病が快復した旨の体験談などの記載がある本件チラシを,京都市内で配達された新聞に折り込んで配布した。
3 本件チラシは,平成27年1月22日以降,配布されていない。
4 原審は,法12条1項及び2項にいう「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ,本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであるから上記の「勧誘」に当たるとは認められないと判断して,上告人の上記各項に基づく請求を棄却した。
これについて最高裁は以下のように判断します。
消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条),事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより,消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には,当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで,5条)。
確かに、交渉力に限らずチラシの配布の資金力からすれば、薬であるかのような印象を与えることが可能になりますね。
事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。
そして結論として
事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。
二重否定しているので、「勧誘である」と認定しています。まあそうでしょうね。
ところが、
前記事実関係等によれば,本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできないから,上告人の上記各項に基づく請求を棄却した原審の判断は,結論において是認することができる。
へ?という感じです。クロレラの販売会社は、自主的にチラシを控えているのであって、調停または裁判によって決まったわけではないのです。ここまで叩かれたのだから、もうやらないだろう的な考えなのかもしれませんが、それにしてもちょっと表現に疑問を感じます。
第三小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
平成29年1月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所
よく新聞の折り込みに入っているクロレラのチラシについて、薬事法問題があるのではないかと訴えた意見です。
通販新聞では薬事法の話がでていませんが、ECのミカタのコラム記事では、元検事が書いているので、そちらを引用します。
サプリメントを販売する際に医薬品的な効能効果を謳うと薬事法違反になりますので、このチラシは問題があるのではないかと思ったのですが、チラシには具体的な商品名の記載がなく、特定のサプリメントについて効能効果を謳ったとは言えなかったため、直ちに薬事法違反で摘発するのは難しい状況でした。
その後、新聞の折り込みに「解説特報」を見かけなくなったと思っていたところ、今年の1月21日、京都地方裁判所で、サン・クロレラ販売に対する適格消費者団体からの差止請求を認める判決が出たというニュースが流れました。
この訴訟では、日本クロレラ療法研究会の名義で配布されていた新聞の折り込みチラシの説明が、サン・クロレラ販売の「サン・クロレラA」などに関する優良誤認表示に当たるとして、景表法に基づくチラシ配布の差止めが認められました。
日本クロレラ療法研究会のチラシには、クロレラに関して、「病気と闘う免疫力を整える」「細胞の働きを活発にする」「排毒・解毒作用」・「高血圧・動脈硬化の予防」「肝臓・腎臓の働きを活発にする」などの薬効があると記載されていました。
ある食品や栄養成分の研究会を立ち上げて、その効能効果について研究したり、研究結果を公表したりすることは何ら違法ではありません。しかし、それが特定のサプリメントの広告とみなされる場合には、広告しているサプリメント自体が「医薬品」とみなされ、未承認医薬品の広告として、薬事法違反になります。
薬事法上、効能効果の記述が特定の商品の「広告」となるためには、以下の3つの要件が必要だとされています。
①顧客を誘因する意図が明確であること
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③一般人が認知できる状態にあること
日本クロレラ療法研究会のチラシには、サン・クロレラ販売のサプリメントの商品名は掲載されていませんでした。チラシの効能効果に興味を持った消費者が研究会に問い合わせをすると、サン・クロレラ販売のカタログが同封された封筒が送付されてきて、初めてチラシの効能効果と特定の商品が結びつくという手法が採られていました。
そのため、形式的には、研究会のチラシは、広告3要件のうちの①と②が欠けており、薬事法上の「広告」には該当しないとの主張が可能でした。こうした研究会のチラシは、長年にわたって、薬事法のグレーゾーンとして、当局の摘発を免れてきました。
サプリメントの場合、ほとんど効能を謳っているとしか言いようがない物ばかりですが、クロレラの場合はよく目立つのでやり玉に挙がった可能性があります。胡散臭いサプリが結構ありますからね。
判決では、たとえチラシの紙面に商品名の表示がなくとも、消費者がチラシの説明に誘導されて特定の商品の購入に至る仕組みがある場合には、景表法違反に該当すると判断されました。
まずは事実認定から始めます。
1 消費者団体がクロレラのチラシが消費者契約法でいうチラシを4条1項の抵触するとして差し止めを求めました。
4条1項 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
2 平成25年8月21日,クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするなどの効用がある旨の記載や,クロレラを摂取することにより高血圧,腰痛,糖尿病等の様々な疾病が快復した旨の体験談などの記載がある本件チラシを,京都市内で配達された新聞に折り込んで配布した。
3 本件チラシは,平成27年1月22日以降,配布されていない。
4 原審は,法12条1項及び2項にいう「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ,本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであるから上記の「勧誘」に当たるとは認められないと判断して,上告人の上記各項に基づく請求を棄却した。
これについて最高裁は以下のように判断します。
消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条),事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより,消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には,当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで,5条)。
確かに、交渉力に限らずチラシの配布の資金力からすれば、薬であるかのような印象を与えることが可能になりますね。
事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。
そして結論として
事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。
二重否定しているので、「勧誘である」と認定しています。まあそうでしょうね。
ところが、
前記事実関係等によれば,本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできないから,上告人の上記各項に基づく請求を棄却した原審の判断は,結論において是認することができる。
へ?という感じです。クロレラの販売会社は、自主的にチラシを控えているのであって、調停または裁判によって決まったわけではないのです。ここまで叩かれたのだから、もうやらないだろう的な考えなのかもしれませんが、それにしてもちょっと表現に疑問を感じます。
第三小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥