最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

拘置所で大暴れしたのを伝えず弁護士と面会させないのは違法

2018-12-04 17:15:35 | 日記
平成29(受)990  接見妨害等国家賠償請求事件
平成30年10月25日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  福岡高等裁判所

 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人又は弁護人となろうとする者からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不安定であることなどにより同事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がない限り,未決拘禁者及び弁護人等の接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
(補足意見がある。)


最近は有料記事になるのが随分早いですね。この時期まで全文で読める物がRKBぐらいしか見つかりませんでした。
訴えていたのは、2009年に刑事事件で福岡拘置所に勾留されていた男性とその弁護士です。
2人は、「男性が騒いで保護室に収容されたことを理由に、弁護士からの接見の申し出を伝えず面会を許可しなかったのは違法だ」として国に損害賠償を求めていました。
1審の福岡地裁と2審の福岡高裁は「拘置所の措置に違法性はない」と判断し、男性らの訴えを退けていましたが、最高裁は、きょう2審判決を破棄し審理を福岡高裁に差し戻しました。
池上政幸裁判長は「精神的に著しく不安定であるなどの事情がない限り、接見の申し出を伝えないことは接見交通権の侵害となる」と指摘しています。


事実認定を見ていきましょう。
(1)上告人X1は,平成20年6月,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件で起訴され,福岡拘置所に被告人として勾留された。
(2) 上告人X1は,平成21年7月23日,福岡拘置所において,「獄中者に対する暴行を謝罪せよ。」などと大声を発し,同拘置所の職員から再三にわたり制止を受けたが,これに従わず,同様の発言を繰り返して大声を発し続けたため,刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容された。


X1は犯罪を犯して逮捕拘留されました。その期間中に大暴れをしたようで、保護室に収容されました。

(3)上告人X1の弁護人であった上告人X2は、面会を申し入れましたが、保護室に収容中であるために面会は認められない旨を告げられました。
(4)逮捕拘留中の被告と弁護人は、面会させなかったのは法に反するとして慰謝料を請求しました。


保護室に収容されている被告人との面会の申出が弁護人からあった場合に,刑事施設の長が保護室への収容を継続する必要性及び相当性を判断する前提として,上記申出があった事実を被告人に告げるか否かは,その合理的な裁量に委ねられており/,この事実を告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない措置がとられた。として、原審では賠償は退けられました。

これに対して最高裁は
(1) 刑訴法39条1項によって被告人又は被疑者に保障される接見交通権は,身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が弁護人又は弁護人となろうとする者の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものである。
さらに、刑事収容施設法31条も,未決拘禁者の処遇に当たっては,未決の者としての地位を考慮し,その防御権の尊重に特に留意しなければならないものとすべき。

まずは裁判を受ける権利ですよね。そのときに弁護士を付ける権利があるので、接見させる権利が認められていると言っています。


(2) もっとも,刑事施設においては,その施設の目的や性格に照らし,未決拘禁者を含む被収容者の収容を確保し,その処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持する必要がある(刑事収容施設法1条,73条参照刑事収容施設法79条1項2号)・・・保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあったとしても,その許否を判断する時点において未決拘禁者が同条1項2号に該当する場合には,刑事施設の長が,刑事施設の規律及び秩序を維持するため,面会を許さない措置をとることができることを前提としているものと解される。

逝っちゃって大暴れしているのもおり、現にこの逮捕拘禁された人は、他に拘束されている人を焚きつけて大騒ぎを起こしています。到底治安維持が難しい状態だったわけです。こういうときのために保護室があるので、そこも加味しなければならないと言っています。

保護室に収容されている場合において面会の申出が弁護人等からあったときは,未決拘禁者が極度の興奮による錯乱状態にある場合のように,精神的に著しく不安定であることなどにより上記申出があった事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかな場合を除き,直ちに未決拘禁者に同事実を告げなければならず、これに対する未決拘禁者の反応等を確認した上で,それでもなお未決拘禁者が同号に該当するか否かを判断し,同号に該当しない場合には,同条4項により直ちに保護室への収容を中止させて刑事収容施設法115条等により未決拘禁者と弁護人等との面会を許さなければならないというべきである。

要するに、大暴れするなら面会させないぞと本人に言え、さらにその事を弁護士にも言えと言っているようです。
まあそうですね。一応手続きは踏まないと。

同拘置所の職員は,本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったものである。
上告人X1は,本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが,当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく,意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ,本件申出があった事実を告げられれば,上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず,


うーん、言ったか言わなかったかなんて難しいですよね。これはICレコーダーでも用意して伝えたかどうかの証拠でも用意しなければならないのでしょうか。今回は、収容施設職員の勇み足が原因だったのでしょうか。

池上政幸の補足意見
1 刑事収容施設法73条2項は,刑事施設の規律及び秩序の維持という目的を達成するために執られる措置は必要な限度を超えてはならないとする比例原則を規定したものと解され,・・・・被収容者が著しく不安定な精神状態にある場合に限られるものではなく,被収容者が意図的に抗議行動として大声等を発するなどしており,状況に応じてその行動を自制することができる場合であっても,現に同号イからハまでのいずれかに該当し,刑事施設の規律及び秩序を維持するため上記高度の必要性があるときは,保護室に収容する措置を執ることができるものと解するのが相当である。
2 他方,未決拘禁者が刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている場合であっても,面会の申出が弁護人等からあったときは,刑事施設の長は,保護室収容中の未決拘禁者の中には,上記1のように弁護人等と面会するためであれば大声等を発するなどの行動を自制することが可能な状態にある者も含まれることをも考慮に入れて面会の許否を判断しなければならない。そのため,刑事施設の長は,未決拘禁者が,上記申出があった事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がある場合を除き,直ちに未決拘禁者に上記申出があった事実を告げなければならないと考えられる。


おっしゃる通り。こいつは精神異常か?と疑うことはあっても施設長も弁護士も医師資格を持っていない限り診断できないので、精神異常を理由とする事は無理でしょう。

今回の判決
第一小法廷
裁判長裁判官 池上政幸  ごもっとも
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

保護室からでも接見できるように建物を改造できないものでしょうか。そこで判断してもらえれば問題は無くなるでしょうに。