最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

市有地土地売却は決算委員会で否決されても市議会で通れば問題ない

2018-12-15 19:41:41 | 日記
平成29(行ヒ)226  違法公金支出損害賠償請求事件
平成30年11月6日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  広島高等裁判所
1 普通地方公共団体の財産の譲渡又は貸付けが適正な対価によるものであるとして議会に提出された議案を可決する議決が地方自治法237条2項の議会の議決といえる場合
2 普通地方公共団体の財産である土地の譲渡が適正な対価によるものであるとして議会に提出された議案を可決する議決につき地方自治法237条2項の議会の議決があったとされた事例


毎日新聞の報道です。
広島県大竹市が市有地を不動産鑑定評価額より不当に安く売却したとして、住民が市に対し、入山欣郎市長に損害賠償請求するよう求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は6日、市敗訴とした広島高裁判決を破棄し、住民の請求を退けた。住民逆転敗訴が確定した。
 上告審では、売却を承認した市議会の議決が有効かどうかが争点になった


事実認定を見ていきます。
1 市有地について、地方自治法237条2項にいう適正な対価なくしてされたにもかかわらず,同項の議会の議決によるものでないことなどから違法であるとして,同法242条の2第1項4号に基づき,上告人を相手に,当時市長の職にあった者に対して損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟である。


237条2項
2 第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。

とあるので、本来議会で承認されなければならないのに、市長が勝手に売却したので適正価格の差額を払えという裁判のようです。


(1)市は,平成3年,市の財産である,市内の大願寺地区に所在する原判決別紙物件目録記載の土地から大竹港埋立ての土砂を採取し,跡地を住宅団地とする計画を立てた。
平成10年12月,本件土地の宅地造成事業を開始したが,同15年,需要が少ないとの理由から上記事業を断念した。
市は,平成20年2月,学校を統合して大願寺地区に移転し,本件土地を住宅地とする計画を表明した。


思いっきりバブルのノリで計画した市の造成計画ですが、バブルがはじけて誰も買ってくれないだろと目が覚めたようです。

(2) 市は,本件土地を売り払うこととし,平成20年10月17日,本件土地につき,不動産鑑定士による同月1日時点の鑑定評価額と同額である10億5400万円を予定価格として公表し,一般競争入札に付したが,申込みをした者はいなかった。その後,市は,同年11月14日,本件土地につき,予定価格を非公公表とし,再度一般競争入札に付したが,申込みをした者はいなかった。


最初に計画を立てた奴は誰なんだよと言いたくなりますね。売却計画を立てましたが、だれも見向きもしません。地図で見ると厳島神社はじめ景観を重視する地域のようです。計画の段階で反対運動が起きなかった方が不思議です。そういうところに建物を建てるとなると、今からでは小規模公共施設ぐらいしかできそうにありませんね。

ということで、
(3)ア 大願寺地区には,平成25年4月までに小中学校を移転することとされていたところ,市議会においては,防犯や児童生徒の安全のため,同地区に小中学校を移転するまでに本件土地が住宅地とされている必要があるという意見があった。
販売方法を大幅に見直して、再入札をはかる事にしました。
ウ 市不動産評価審議会は,平成22年9月,本件土地の現在の価格として,その評価額を4万㎡につき5億0566万円とした


一応、応札はあったけども希望価格より10%以上低く、近所に大きな土地の売りが出たので、応札を撤回されてしまいました。
更に、再募集したところさらに面積は小さく低い値段でしか応募がなかったのです。

エ 市長であったA(以下「A市長」という。)は,平成23年12月5日,市を代表して,エポックワンらとの間で,大竹市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(昭和39年大竹市条例第19号。以下「本件条例」という。)3条の規定による市議会の議決を得ることを停止条件として,本件土地全体を3億5000万円(以下「本件譲渡価格」という。)で譲渡する旨の土地売買仮契約(以下「本件仮契約」といい,これによる本件土地の譲渡を「本件譲渡」という。)を締結した。

ああやっちまった!って感じですね。何としてでも売りたかったのでしょう。30年間売れ残った土地とは言え、この市長の責任でもないでしょうに。
(5)ア 市は,平成23年12月8日,議員全員協議会において,市大願寺地区造成土地売払い事業の事業実施者にエポックワンらを選定し,本件土地全体を3億5000万円で売却する予定であることを説明した。・・・生活環境委員会において,本件土地の鑑定評価額が7億円であること,本件予定価格が3億3777万8342円であることを説明し,同委員会は,本件議案を可決する議決をした。

(6)決算特別委員会は,本件決算を不認定とする議決をしたものの,市議会は,平成24年12月14日,本会議において,本件譲渡による収入3億5000万円を含め,本件決算を賛成多数により認定する議決(以下「本件決算議決」という。)をした。


原審は決算特別委員会では不可としたのに、市議会で通ってしまったのは地方自治法237条2項の議会の議決があったということはできないとしました。


これに対して最高裁は、
当該譲渡等が適正な対価によるものであるとして普通地方公共団体の議会に提出された議案を可決する議決がされた場合であっても,当該譲渡等の対価に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され,両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡等を行う必要性と妥当性について審議がされた上でこれを認める議決がされるなど,審議の実態に即して,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを認める趣旨の議決がされたと評価することができるときは,同項の議会の議決があったものというべきである。

これは極めて実務的な発想だと思います。民間であれば30年も放置してある土地を持っていたら、その固定資産税だけでも大変な事なりますし、借り入れを起こしているはずなので倒産するでしょう。市有地なのでそれはないですが、金銭感覚のなさが責められても仕方ないでしょう。

本件譲渡議決に関しては,市議会において,本件譲渡価格に加えて平成23年鑑定評価額を踏まえた上で,本件譲渡が適正な対価によらずにされたものであったとしてもこれを行う必要性と妥当性についても審議がされており,審議の実態に即して,本件譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを行うことを認める趣旨でされたものと評価することができるから,本件譲渡議決をもって,地方自治法237条2項の議会の議決があったということができる。
更に
A市長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したことをうかがわせる事情は存しない。


当然ですね。何代前の市長か知りませんが、その尻拭いをさせられており、何度も売却やら計画変更やらやってもダメでした。決算委員会で異論が出たけども、議会で認めたわけですので仕方ないことですよね。

裁判官山崎敏充と裁判官宮崎裕子の補足意見
2度の入札に失敗、さらに不動産鑑定士により7億円超の値段がついたものの、実際には3億4千万弱の値段で売却した。そもそもこの7億円の評価が正しかったのか?と疑問を呈しています。

裁判長裁判官 山崎敏充 素晴らしい
裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 素晴らしい

全くその通りです。総工費はいくらかかったのでしょうか?取り戻したい気持ちは分かりますが、失敗は失敗です。
裁判の競売物件を見ても思いますが、最低入札にこんな物件に値段がつくの?というようなものがあります。実際に応札がなくて流れる物件もあります。不動産鑑定士が、きちんと判断しているのか?と思うような判断をしたことからこの事件が起こったように思えてなりません。