平成30(受)16 損害賠償請求事件
平成30年12月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 広島高等裁判所 岡山支部
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除(昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知に基づくもの)の額に相当する額を控除しないことが違法であるとはいえない
裁判所の事実認定から見ていきましょう。
1 生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの。以下 「法」という。)に基づく保護を受けていた被上告人が,同一世帯の構成員である 長男の勤労収入について法61条所定の届出をせずに不正に保護を受けた。
法78条は,不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受 けさせた者があるときは,保護費(保護の実施に要する費用をいう。以下同じ。) を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴 収することができると規定している。
(1) 門真市福祉事務所長は,平成17年10月26日,法7条本文に基づき, 門真市内に居住する被上告人を世帯主とし,その長男を世帯員として,保護の開始 を決定した。
(2) 被上告人の長男は,平成21年6月1日,賃金を翌月払とする条件で就労 を開始し,同年7月から同22年8月までの間に,合計233万9835円の勤労 収入(源泉徴収に係る所得税の額を控除した後のもの。以下「本件勤労収入」とい う。)を得た。
21年7月から同22年8月までの間に合計242万1640円の保護費(生活扶 助,住宅扶助及び一時扶助)が被上告人に支給された。
(3)被上告人の長男が本件勤労収入等を得ていたの に,その届出がなかったため不正受給額が生じたとして,平成24年2月7日付け で,被上告人に対し,法78条に基づき,費用徴収額を235万9765円とする 本件徴収額決定をした。上記金額には,本件勤労収入の全額に相当する額が含まれ ている。
(4)本件勤労収入に対応する基礎控除の合計額は,38万4080円である(以下 この額を「本件基礎控除額」という。)。
基礎控除分だけ余計に貰ったことになるので、保護費とその分を返せという趣旨のようです。
原審では、
本件勤労収入が適正に届け出られていれば,本件基礎控除額は被上告人の世帯の収入とは認定されていなかったはずであるから,これに相当する額についても保護費が支給されていたことになる。
最高裁の判断は
法78条も,保護の制度をその悪用から守ることを目的として,所定の徴収権を 付与する趣旨の規定と解されるから,被保護者がその収入の状況を偽って不正に保 護を受けた場合には,当該収入のうち被保護者がその最低限度の生活の維持のため に活用すべきであった部分に相当する額は,広く同条に基づく徴収の対象となるも のと解すべきである。
(2) 勤労収入は,本来,被保護者がその最低限度の生活の維持のために活用す べきものである。そして,基礎控除は,被保護者が勤労収入を適正に届け出た場合 において,勤労収入に係る額の一部を収入の認定から除外するという運用上の取扱 いであるところ,上記のとおり,保護は,保護受給世帯における収入,支出その他 生計の状況についての適正な届出を踏まえて実施されるべきものであるから,その ような届出をせずに,不正に保護を受けた場合にまで基礎控除の額に相当する額を 被保護者に保持させるべきものとはいえず,これを法78条に基づく徴収の対象と することが同条の上記趣旨に照らし許されないものではない。
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対 する法78条徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当 する額を控除しないことが違法であるとはいえないと解するのが相当である。
裁判長裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 林 景一 妥当
裁判官 宮崎裕子 妥当
というか、そもそもこの法律にペナルティが乏しいのが問題ですね。うっかりミスというにはどうなの?というレベルではないでしょうか。むしろこれは生活保護費を求めた詐欺罪として刑事告訴すべき案件ではなかったのでしょうか。
参考HP
生活保護問題対策全国会議
門真市での生活保護率全国平均3倍
平成30年12月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 広島高等裁判所 岡山支部
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除(昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知に基づくもの)の額に相当する額を控除しないことが違法であるとはいえない
裁判所の事実認定から見ていきましょう。
1 生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの。以下 「法」という。)に基づく保護を受けていた被上告人が,同一世帯の構成員である 長男の勤労収入について法61条所定の届出をせずに不正に保護を受けた。
法78条は,不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受 けさせた者があるときは,保護費(保護の実施に要する費用をいう。以下同じ。) を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴 収することができると規定している。
(1) 門真市福祉事務所長は,平成17年10月26日,法7条本文に基づき, 門真市内に居住する被上告人を世帯主とし,その長男を世帯員として,保護の開始 を決定した。
(2) 被上告人の長男は,平成21年6月1日,賃金を翌月払とする条件で就労 を開始し,同年7月から同22年8月までの間に,合計233万9835円の勤労 収入(源泉徴収に係る所得税の額を控除した後のもの。以下「本件勤労収入」とい う。)を得た。
21年7月から同22年8月までの間に合計242万1640円の保護費(生活扶 助,住宅扶助及び一時扶助)が被上告人に支給された。
(3)被上告人の長男が本件勤労収入等を得ていたの に,その届出がなかったため不正受給額が生じたとして,平成24年2月7日付け で,被上告人に対し,法78条に基づき,費用徴収額を235万9765円とする 本件徴収額決定をした。上記金額には,本件勤労収入の全額に相当する額が含まれ ている。
(4)本件勤労収入に対応する基礎控除の合計額は,38万4080円である(以下 この額を「本件基礎控除額」という。)。
基礎控除分だけ余計に貰ったことになるので、保護費とその分を返せという趣旨のようです。
原審では、
本件勤労収入が適正に届け出られていれば,本件基礎控除額は被上告人の世帯の収入とは認定されていなかったはずであるから,これに相当する額についても保護費が支給されていたことになる。
最高裁の判断は
法78条も,保護の制度をその悪用から守ることを目的として,所定の徴収権を 付与する趣旨の規定と解されるから,被保護者がその収入の状況を偽って不正に保 護を受けた場合には,当該収入のうち被保護者がその最低限度の生活の維持のため に活用すべきであった部分に相当する額は,広く同条に基づく徴収の対象となるも のと解すべきである。
(2) 勤労収入は,本来,被保護者がその最低限度の生活の維持のために活用す べきものである。そして,基礎控除は,被保護者が勤労収入を適正に届け出た場合 において,勤労収入に係る額の一部を収入の認定から除外するという運用上の取扱 いであるところ,上記のとおり,保護は,保護受給世帯における収入,支出その他 生計の状況についての適正な届出を踏まえて実施されるべきものであるから,その ような届出をせずに,不正に保護を受けた場合にまで基礎控除の額に相当する額を 被保護者に保持させるべきものとはいえず,これを法78条に基づく徴収の対象と することが同条の上記趣旨に照らし許されないものではない。
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対 する法78条徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当 する額を控除しないことが違法であるとはいえないと解するのが相当である。
裁判長裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 林 景一 妥当
裁判官 宮崎裕子 妥当
というか、そもそもこの法律にペナルティが乏しいのが問題ですね。うっかりミスというにはどうなの?というレベルではないでしょうか。むしろこれは生活保護費を求めた詐欺罪として刑事告訴すべき案件ではなかったのでしょうか。
参考HP
生活保護問題対策全国会議
門真市での生活保護率全国平均3倍