最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

督促状が形式不十分であっても場合によっては時効延長になる

2019-01-26 12:22:53 | 日記
平成29(オ)1725  請求異議事件
平成30年12月18日  最高裁判所第三小法廷  決定  その他
 最高裁判所は,民訴規則203条所定の事由があるとしてされた民訴法324条に基づく移送決定について,当該事由がないと認めるときは,これを取り消すことができる

たった2枚の判決文な上に、ニュースを探してもこの事件に関係するものと思われるものが出てきませんでした。判決文も法律の解釈だけで、事実認定も一切なしなので、想像を交えて検討していきます。

まず、民事訴訟法第324条(督促決定の記載事項)
1 督促決定には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
二 求める決定及び請求を特定するのに必要な事実
三 一定額の金銭の支払いを命ずる旨
2 第1項の督促決定には,債務者が督促決定の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは,職権により仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。

高松高裁は次のように判断しました。
債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合,当該申立てに係る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことになると解するのは相当でない。

この事件の想像です。
担保不動産競売の申立てをした債権者が当該競売の手続において請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく当該申立てを取り下げた場合について判断した。
ある会社Aが、競売で物件を落としましたが、満額はお金を払ってもらえませんでした。そこで督促しましたが、督促するのに民事訴訟法324条の条件を満たさなかったようです。これを楯にBさんは、督促を受けていないと主張しました。これについて、高松高裁は完璧に条件を満たしてはいなくても時効は消滅しない、つまり通常の督促が出されたのと同様に差し押さえができると判断しました。これは19年前に裁判になったそうです。

これに対して最高裁は民訴規則203条を根拠に異議を唱えました

第二百三条 法第三百二十四条(最高裁判所への移送)の規定により、上告裁判所である高等裁判所が事件を最高裁判所に移送する場合は、憲法その他の法令の解釈について、その高等裁判所の意見が最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反するときとする。

最高裁は
民訴法324条は,上告裁判所である高等裁判所は,最高裁判所規則で定める事由があるときは,事件を最高裁判所に移送しなければならない旨を定め,民訴規則203条は,法令等の解釈について当該高等裁判所の意見が最高裁判所等の判例と相反するときに上記事由があると定めている。そして,民訴法22条1項は,「確定した移送の裁判は,移送を受けた裁判所を拘束する。」と規定しているものの,その趣旨が主として第1審裁判所の間で移送が繰り返されることによる審理の遅延等を防止することにあることに照らせば,同法324条に基づく高等裁判所の移送決定が上記「移送の裁判」に含まれると解すべきではない。

ということで最高裁では受け付けられないという結論になりました。高裁の判断が確定したわけですね。

日本の民法は、貸主よりも借主の方が優遇されており、ごね得が通用する法体系になっています。その点からすると、この判決はしっかり払えよと間接的に言っているわけで妥当な判決だと言えます。
ただ、場合によるとしているのは法律がそう決めてしまっているからなのでしょうか。

裁判長裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 林 景一 妥当
裁判官 宮崎裕子 妥当