最高裁判所裁判官の暴走を許さない

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精神病患者の自殺、メールでの対応は問題ない

2019-04-16 15:05:50 | 日記
平成30(受)269  損害賠償請求事件
平成31年3月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

統合失調症により精神科の医師の診療を受けていた患者が中国の実家に帰省中に自殺した場合において,上記医師に上記患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務がないとされた事例

概要はこちらです。ニュースでの扱いがないようなので、事実関係から見ていきます。

統合失調症により精神科の医師である上告人の診療を受けていた患者が,中国の実家に帰省中に自殺した。これについて日本国内で治療した医師が適切な処置を講じなかったとして慰謝料を請求した事件です。

(1)X1は,平成6年9月,本件患者と婚姻し,本件患者との間に被上告人X2及び同X3をもうけた。
(2)平成10年1月,統合失調症を発症し,その頃,医院を受診し,上告人の診療を受けた。この医師が独立したので、上告人との間で診療契約を締結して本件クリニックに通院し,平成16年4月以降,上告人から抗精神病薬等を処方されるようになった。
(3)本件患者は,被上告人X1らと共に,平成19年8月頃,長野県b市に転居した。上記の転居後,本件患者は,自身で本件クリニックを訪れることは少なくなり,主として被上告人X1が本件クリニックを訪れ又は電話をかけるなどして上告人に本件患者の症状を伝え,上告人から抗精神病薬等を処方されるなどしていた。


国際結婚したはいいけど、相手が統合失調になってしまいました。統合失調は症状を薬で抑えるのが精いっぱいで、落ち着かせるのが限界で完治することはありません。いわゆる寛解という状態だそうです。

(4) 本件患者には,平成22年3月,幻聴が現れるようになり,同年8月には,ベルトを持って徘徊するなど自殺企図もみられるようになった。本件患者は,同月▲日,B大学医学部附属病院(以下「B大病院」という。)を受診し,医療保護入院となり,自殺企図又は自傷行為が切迫している状態にあるとして隔離された。

これはかなり重症ですね。出来事とその意味との統合がなされない、つまり他者との意味を共有することができない状態になります。カウンセリングが通用しない状態です。
現在の制度では、こういう状態が続いてもなるべく薬で抑えて、退院させるようになっています。

(5) 本件患者は,平成22年11月から平成23年1月までの間,月1回,本件クリニックを訪れ,上告人との対面による診察を受けた。上告人は,B大病院で処方されていた抗精神病薬等が多種類かつ多量であったため,その服薬量を減量する必要があると考え,本件患者及び被上告人X1にその旨を説明した。

ここまで重症化するとかなりの薬を飲むことになるでしょう。ところが、少しでも調子が良くなると患者は、治ったと勘違いして断薬してしまい、また症状が悪化して以前より酷くなることが多々あるそうです。精神系の薬は効き始めるのに1カ月以上かかりますから、その間に色々やらしてしまう可能性があります。自傷行為だけならまだしも、他害をする可能性がありますからね。

(6)被上告人X1は,平成23年2月,上告人に対し,本件患者の服薬状況を報告するとともに,この数日間は幻聴がひどくなる頻度が減っており,本件患者が
しばらく中国の実家に帰省する旨を電子メールにより伝えた。
本件患者は,同年3月▲日,被上告人X1と共に本件クリニックを訪れ,上告人との対面による診察を受け,翌▲日,1人で中国の実家に帰省した。


この状態で配偶者が一人で国に返しますか?あり得ないでしょう。

(7) 本件患者は,平成23年4月以降,抗精神病薬の服薬量を漸次減量したが,幻聴が悪化し,被上告人X1に対し,マンションの6階にある実家から飛び降りたいという衝動があるなどと述べるようになった。


その後1ヶ月以上、一緒に過ごしたようです。その後

「ここ数日,夕方になると,幻聴が激しくなり,また,眼球上転もでているようです。今日は希死念慮がかなりつよくでていて,『これからは3人で生きて下さい』との言葉もありました。危険なので,義母に監視を頼み,セレネースを11mgに戻すようにいいました。」,「減薬の先に何があるのか,その見通しを示して下さい。」などの記載が含まれる電子メール(以下「本件電子メール」という。)を送信した。
(9) 本件患者は,平成23年6月▲日,幻聴を訴え,同月▲日,マンションの6階にある実家から飛び降りて自殺した。


問題はメールベースでのコミュニケーションが原因だったようです。
同年5月▲日頃,本件患者に希死念慮が強く出ていて危険である旨を記載した部分がある本件電子メールを読んだものの,本件患者の具体的な言動としては,本件患者が「これからは3人で生きて下さい」と発言した旨が伝えられたにすぎない。

せん妄状態であれば、普段から言動がおかしいのでその意味するところは、実際のところ何を意味するのかは家族でもわからないでしょう。

結論です。

被上告人X1からの本件電子メールの内容を認識したことをもって,本件患者の自殺を具体的に予見することができたとはいえない。したがって,上告人に,本件患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務があったとはいえないというべきである。


裁判長裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 当然

というか、そもそもメールベースで症状を聞いて、薬を処方していいのでしょうか?そこに触れていないのでおそらく合法なのでしょう。となると、これはどう見ても正当な判決でしょう。
配偶者もメールで問い合わせていますが、時間に合わせて電話することもできたはずですよね。それを医師だけに責任を追及するのはおかしいでしょう。

よく言われる言葉ですが、
外科医は何が原因かはわからないが治せる
内科医は何が原因か分かるが治せない
精神科医は、何もわからないし治せもしない

これは某大学医学部勤務の先生がぽろっと言ってた言葉ですが、プロたちはこのように見ているようです。
敢えて言うならば、中国に帰るときに紹介状の一つ書いてやっても良かったのではないのかなという気がしなくもないですが、医師の資格制度も違いますし、お守り程度の意味しかないかなぁという気もします。