最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

微妙判決 取り調べの録音録画を根拠に公判を短縮できない

2020-01-27 20:56:50 | 日記
平成29(あ)2073  詐欺,窃盗,詐欺未遂被告事件
令和2年1月23日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書

マスコミでの報道がないので事実関係から確認していきます。
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(1)平成27年5月とする窃盗1件,詐欺1件,詐欺未遂3件については被告人を有罪とし,懲役2年6月,4年間執行猶予に処した。
(2)平成28年6月28日付け起訴状記載の各公訴事実(詐欺3件。以下「本件公訴事実」という。)については無罪を言い渡した。
手口はいずれも家電量販店において,
(1) 不正に入手したAを被保険者とする健康保険被保険者証及びA名義のクレジットカードを使用してAになりすましてクレジット機能付きポイントカードをだまし取ろうと考え,入会申込端末を使用して,氏名入力画面に「A」と入力するなどし,カード発行手続業務等の業務委託を受けている会社の社員に対し,Aになりすまし,Aを被保険者とする健康保険被保険者証及びA名義のクレジットカードを提出するなどして,クレジット機能付きポイントカードの交付を申し込み,同ポイントカード1枚の交付を受け,
(2) 上記家電量販店店員に対し,Aになりすまし,上記ポイントカードを提示して財布2個等4点の購入を申し込み,その交付を受け,
(3) 同店店員に対し,Aになりすまし,上記ポイントカードを提示してゲーム機1個の購入を申し込み,その交付を受け,それぞれだまし取った


随分せこい事件ですね。

2 原判決は,全ての事実について犯人ではないから無罪であるとする被告人の主張を排斥し,本件公訴事実について,第1審判決は,被告人の犯人性を推認させ,又はその推認力を補強する間接事実の推認力や第1審関係証拠の証明力の評価を誤った上,これらを分断的に評価し,適切な総合評価を行わなかった結果,被告人が犯人であったとするには合理的な疑いが残るとの結論を導いたもの

小難しいことを書いていますが、被告は犯人は自分じゃないと主張しているが、証拠がある。判決の一部で無罪になった事件について証拠とされたものは証拠能力が乏しいと裁判所が誤認している。という趣旨のようです。高裁では、この理由に基づいて判決を破棄しました。

被告人に対し,無罪を言い渡した場合に,控訴審において自ら何ら事実の取調べをすることなく,訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって,直ちに公訴事実の存在を確定し有罪の判決をすることは,刑訴法400条ただし書の許さないところとするのが最高裁判例(昭和26年(あ)第2436号同31年7月18日大法廷判決・刑集10巻7号1147頁,昭和27年(あ)第5877号同31年9月26日大法廷判決・刑集10巻9号1391頁。以下,両者を併せて「本件判例」という。)であると言及しつつ,同条ただし書に関する本件判例の解釈は,今日においては,その正当性に疑問があるとした。

要するに高裁でちゃんと取り調べをしないで、地裁の審議で取り上げられた証拠だけで判断したのは駄目でしょうという訴えのようです。刑事訴訟法400条の但し書きも
「但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によって、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。」
と明らかに調べなおす必要がない場合、調べようがない場合を除いては例外的にやっていいよというレベルです。

3 昭和31年7月18日大法廷判決は,事件が控訴審に係属しても被告人は,憲法31条37条等の保障する権利は有しており,
昭和31年の判決は、裁判を受ける権利と矛盾してませんよというものです平成29(あ)2073  詐欺,窃盗,詐欺未遂被告事件
令和2年1月23日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書

「本件の如く,第1審判決が被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した場合に,控訴裁判所が第1審判決を破棄し,訴訟記録並びに第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって,直ちに被告事件について犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をすることは,被告人の前記憲法上の権利を害し,直接審理主義,口頭弁論主義の原則を害することになるから,かかる場合には刑訴400条但書の規定によることは許されないものと解さなければならない。」として原判決を破棄し,事件を第1審裁判所に差し戻した。そして,上記昭和31年9月26日大法廷判決も同旨の判断をした。

それで今回も過去の判例に従って判断したとしています。

原判決は,判例変更をすべき理由として,刑訴法の仕組み及び運用が大きく変わり,第1審において厳選された証拠に基づく審理がされ,控訴審において第1審判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に指摘できる場合に限って事実誤認で破棄されること,起訴前国選弁護制度や取調べの録音録画の実施により被告人が黙秘権を行使することも多くなっていること,本件判例に抵触しないために検察官から請求された証拠を調べるとすると,取調べの必要性も第1審の弁論終結前に取調べを請求できなかったやむを得ない事由も認められない証拠を採用することになること等を挙げ,

取り調べ方法も、取り調べの録音録画があるのだから、そもそも従前の判例に従う必要がなくなったではないかと言っています。

殊に第1審において,犯罪事実の存否及び量刑を決する上で必要な範囲で充実した審理・判断を行い,公判中心主義の理念に基づき,刑事裁判の基本原則である直接主義・口頭主義を実質化しようとするものであって,同じく直接主義・口頭主義の理念から導かれる本件判例の正当性を失わせるものとはいえない。そうすると,本件判例は,原判決の挙げる上記の諸事情を踏まえても,いまなおこれを変更すべきものとは認められない。

なんかよく分かりませんね。裁判は公判でちゃんとやらなければならず、取り調べの録音録画は公判の代替にはならないよと言っているようです。
私は、刑事裁判を最初から最後まで見たことはないので実際どんなものなのか分かりません。取り調べでの録音録画と同じことを法廷で再度やるのですか?単に反論の機会を求めたとこだけでもいいんじゃないでしょうか。
こういっては何ですが、こういう事件の場合はそれほど裁判に時間はかかりませんが、かなり複雑かつ大きな事件の場合は1審で5年近くかかるものもあります。最近はかなり早くなったとはいえ、こういうところで迅速化してもいいんじゃないでしょうか。今回の判断はもっと効率を考えてもいいんじゃないでしょうか。

第一小法廷
裁判長裁判官 山口 厚 微妙
裁判官 池上政幸 微妙
裁判官 小池 裕 微妙
裁判官 木澤克之 微妙
裁判官 深山卓也 微妙