令和2(許)37 訴訟行為の排除を求める申立ての却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
令和3年4月14日 最高裁判所第二小法廷 決定 破棄自判 知的財産高等裁判所
弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為について,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできない
特許権については、なかなか報道されないので岩田合同法律事務所の解説を見ます。
コピーができない設定になっているので、直接そちらを見てください。
Xは許可を得て特許を使わせてもらっています。が、特許権者Yが不法行為をしたとの訴えです。
①YがXに対して損害賠償請求をしていますがそれを取り下げろ
②Xの弁護士Zが出てきているが、Yは不法行為をしていないので損が賠償請求を取り下げろ
③Xは使用許諾時から今までの分をZに使用確認をしろ
Zは弁護士で、弁護士倫理規定に反しているという訴えのようです。
(1)基本規程57条は,本文において,共同事務所の所属弁護士は,他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む。)が,基本規程27条1号の規定により職務を行い得ないものとされている「相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件」等については,職務を行ってはならないと定め,ただし書において,職務の公正を保ち得る事由があるときは,この限りでないと定めている。
第五十七条所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む)が、第二十七条又は第二十八条。規定により職務を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
第二十七条弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
利益相反事件っぽいですね。
(2)特許の特許権者である相手方らが,抗告人によって上記特許に係る特許権が侵害されている旨主張して,抗告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めるものである。
(3)Z弁護士は,平成20年から相手方塩野義製薬株式会社に組織内弁護士として所属し,平成30年2月から令和元年10月までの間,本件訴訟の提起のための準備を担当していた。Z弁護士は,同年12月31日,相手方塩野義製薬を退社し,令和2年1月1日,阿部弁護士らの所属する阿部国際総合法律事務所に入所した。
(4)阿部弁護士らは,抗告人から令和2年1月8日付け委任状の交付を受けて本件訴訟の訴訟代理人となった。
(5)相手方らは,令和2年2月7日,東京地方裁判所に対し,本件事務所の所属弁護士であるZ弁護士は基本規程27条1号の規定により本件訴訟につき職務を行い得ないのであるから,本件訴訟において阿部弁護士らが抗告人の訴訟代理人として訴訟行為をすることは,基本規程57条に違反すると主張して,阿部弁護士らの各訴訟行為の排除を求める申立てをした。なお,Z弁護士は,同月10日,本件事務所を退所した。
わお!というしかありません。教科書レベルの利益相反です。塩野義さんは裁判する前に懲戒請求して叩きのめしておいた方が良かったんじゃないでしょうか。これが最高裁まで争われる意味が分かりません。Z弁護士のメンツだけで争った?
原審は
(1)弁護士法25条1号に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。
(2)相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解するのが相当である。
(3)本件訴訟における阿部弁護士らの各訴訟行為について,職務の公正を保ち得る事由があるものとは認められず,同各訴訟行為は基本規程57条に違反する。
ごもっともに見える判断です。
ところが、最高裁は
基本規程は,日本弁護士連合会が,弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため,会規として制定したものであるが,基本規程57条に違反する行為そのものを具体的に禁止する法律の規定は見当たらない。
つまり倫理規定は所詮努力義務だから、違法性はないと言っているようです。
基本規程57条に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできないというべきである。
よく言う「良き法律家は悪しき隣人」を地でいっている判断です。最高裁判事も手の甲で意図的にお尻を触っても痴漢の要件を満たさないから無罪だといっているわけです。やらしいですね。
裁判官草野耕一の補足意見
これは阿部弁護士らがA弁護士の採用を見合わせることなく本件訴訟を受任したことが弁護士の行動として適切であったという判断を含意するものではない。
そりゃそうでしょう。
日本弁護士連合会がこの負託に応え,以って弁護士の職務活動の自由と依頼者の弁護士選択の自由に対して過剰な制約を加えることなく弁護士の職務の公正さが確保される体制が構築され,裁判制度に対する国民の信頼が一層確かなものとなることを希求する次第である。
こういうのは裁判所に持って来ないで弁護士会でやれよと言ってます。
そりゃそうですけどね、弁護士会は単なる互助会であってちゃんと倫理を守らせる会になっているとは思えません。以前に、法律事務所のパートの人妻に手を出して、元プロボクサーがぶん殴って性器を切り落とした事件がありましたが、当該弁護士はお咎めなしで済ませました。こんな弁護士会に期待できますか?
裁判長裁判官 草野耕一
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美
令和3年4月14日 最高裁判所第二小法廷 決定 破棄自判 知的財産高等裁判所
弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為について,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできない
特許権については、なかなか報道されないので岩田合同法律事務所の解説を見ます。
コピーができない設定になっているので、直接そちらを見てください。
Xは許可を得て特許を使わせてもらっています。が、特許権者Yが不法行為をしたとの訴えです。
①YがXに対して損害賠償請求をしていますがそれを取り下げろ
②Xの弁護士Zが出てきているが、Yは不法行為をしていないので損が賠償請求を取り下げろ
③Xは使用許諾時から今までの分をZに使用確認をしろ
Zは弁護士で、弁護士倫理規定に反しているという訴えのようです。
(1)基本規程57条は,本文において,共同事務所の所属弁護士は,他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む。)が,基本規程27条1号の規定により職務を行い得ないものとされている「相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件」等については,職務を行ってはならないと定め,ただし書において,職務の公正を保ち得る事由があるときは,この限りでないと定めている。
第五十七条所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む)が、第二十七条又は第二十八条。規定により職務を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
第二十七条弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
利益相反事件っぽいですね。
(2)特許の特許権者である相手方らが,抗告人によって上記特許に係る特許権が侵害されている旨主張して,抗告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めるものである。
(3)Z弁護士は,平成20年から相手方塩野義製薬株式会社に組織内弁護士として所属し,平成30年2月から令和元年10月までの間,本件訴訟の提起のための準備を担当していた。Z弁護士は,同年12月31日,相手方塩野義製薬を退社し,令和2年1月1日,阿部弁護士らの所属する阿部国際総合法律事務所に入所した。
(4)阿部弁護士らは,抗告人から令和2年1月8日付け委任状の交付を受けて本件訴訟の訴訟代理人となった。
(5)相手方らは,令和2年2月7日,東京地方裁判所に対し,本件事務所の所属弁護士であるZ弁護士は基本規程27条1号の規定により本件訴訟につき職務を行い得ないのであるから,本件訴訟において阿部弁護士らが抗告人の訴訟代理人として訴訟行為をすることは,基本規程57条に違反すると主張して,阿部弁護士らの各訴訟行為の排除を求める申立てをした。なお,Z弁護士は,同月10日,本件事務所を退所した。
わお!というしかありません。教科書レベルの利益相反です。塩野義さんは裁判する前に懲戒請求して叩きのめしておいた方が良かったんじゃないでしょうか。これが最高裁まで争われる意味が分かりません。Z弁護士のメンツだけで争った?
原審は
(1)弁護士法25条1号に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。
(2)相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解するのが相当である。
(3)本件訴訟における阿部弁護士らの各訴訟行為について,職務の公正を保ち得る事由があるものとは認められず,同各訴訟行為は基本規程57条に違反する。
ごもっともに見える判断です。
ところが、最高裁は
基本規程は,日本弁護士連合会が,弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため,会規として制定したものであるが,基本規程57条に違反する行為そのものを具体的に禁止する法律の規定は見当たらない。
つまり倫理規定は所詮努力義務だから、違法性はないと言っているようです。
基本規程57条に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできないというべきである。
よく言う「良き法律家は悪しき隣人」を地でいっている判断です。最高裁判事も手の甲で意図的にお尻を触っても痴漢の要件を満たさないから無罪だといっているわけです。やらしいですね。
裁判官草野耕一の補足意見
これは阿部弁護士らがA弁護士の採用を見合わせることなく本件訴訟を受任したことが弁護士の行動として適切であったという判断を含意するものではない。
そりゃそうでしょう。
日本弁護士連合会がこの負託に応え,以って弁護士の職務活動の自由と依頼者の弁護士選択の自由に対して過剰な制約を加えることなく弁護士の職務の公正さが確保される体制が構築され,裁判制度に対する国民の信頼が一層確かなものとなることを希求する次第である。
こういうのは裁判所に持って来ないで弁護士会でやれよと言ってます。
そりゃそうですけどね、弁護士会は単なる互助会であってちゃんと倫理を守らせる会になっているとは思えません。以前に、法律事務所のパートの人妻に手を出して、元プロボクサーがぶん殴って性器を切り落とした事件がありましたが、当該弁護士はお咎めなしで済ませました。こんな弁護士会に期待できますか?
裁判長裁判官 草野耕一
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美