平成30(し)76 再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
令和3年4月21日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 福岡高等裁判所
新証拠による旧証拠の証明力減殺が,他の旧証拠の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえず,それらの再評価を要することになるものではないとされた事例
いわゆる飯塚事件の事のようです。
小学校に登校中のⅤ1(当時7歳)及びV2(当時7歳)を認め,両名が未成年者であることを知りながら,自己の運転する普通乗用自動車(以下「事件本人車」という。)に乗車させ,通学路外に連れ出して,未成年者である両名を略取又は誘拐し,同市内又はその周辺において,殺意をもって,両名の頸部を手で絞め付け圧迫し,両名をいずれも窒息により死亡させて殺害し,同県甘木市内の国道沿いの山中に,両名の死体を投げ捨てて遺棄したというものである。
ロリコン殺人です。被告は無罪を主張しました。
①S1らの目撃供述によれば,本件犯行に犯人が使用したと疑われる車両は,M1製の紺色ワゴンで,後輪がダブルタイヤであり,リアウインドウにフィルムが貼ってあるなどの特徴を有しており,犯人は被害者両名の失踪場所等に土地鑑を有する者であると推測されるところ,事件本人は前記車両と特徴を同じくする事件本人車を所有し,かつ,前記失踪場所等に土地鑑を有すること,②被害者両名の着衣から発 見され,被害者両名が犯人使用車両に乗せられた機会に付着したと認められる繊維片は,事件本人車と同型のWに使用されている座席シートの繊維片である可能性が高いこと,③事件本人車の後部座席シートからⅤ1と同じ血液型(ABO式。以下同じ。)であるz1型の血痕と人の尿痕が検出されているところ,被害者両名ともに殺害された時に生じたと認められる失禁と出血があり,事件本人が犯人であるとすれば,前記血痕及び尿痕の付着を合理的に説明できること,④警察庁科学警察研究所(以下「科警研」という。)が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定によれば,V2の遺体付近にあった木の枝に付着していた血痕並びに被害者両名の膣内容物及び膣周辺付着物の中に,犯人に由来すると認められる血痕ないし血液が混在しており,仮に犯人が1人であるとした場合には,その犯人の血液型はz2型,MCT118型はm1-m5型であり,いずれも事件本人の型と一致していること,⑤事件本人は,本件当時,亀頭包皮炎に罹患しており,外部からの刺激により亀頭から容易に出血する状態にあったから,事件本人が犯人であるとすれば,被害者両名の膣内容物等に犯人に由来すると認められる血液等が混在していたことを合理的に説明できること,⑥被害者両名が失踪した時間帯及び失踪場所は,事件本人が申立人を通勤先に事件本人車で送った後,事件本人方に帰る途中の時間帯及び通路に当たっていた可能性があり,他方で,事件本人にアリバイが成立しない 。
①は状況証拠にすらならないと思いますが、②以下は真っ黒ですね。
本件再審請求は,①のS1の目撃供述の信用性が否定され,また,新証拠である筑波大学社会医学系法医学教室本田克也教授の鑑定書等によれば,④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできない
④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできないから,以上の新証拠は確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせる。
完全に技術的な話になりました。
ア 旧証拠のうち,科警研が実施したHLADQα型鑑定並びに帝京大学法医学教室石山昱夫教授が実施したミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定は,本田教授の鑑定書等によって証明力が減殺された科警研のMCT118型鑑定と立証命題が有機的に関連しているのであるから,前記3つの鑑定についてそれらの証明力を再評価しなければならない。イ そこで,HLADQα型鑑定の証明力を再評価すると,Ⅴ1の膣内容物(資料(2)),同人の膣周辺付着物(資料(3)),V2の膣内容物(資料(4))及び同人の膣周辺付着物(資料(5))から,科警研の血液型鑑定でz2型が検出され,MCT118型鑑定でm1型及びm5型が検出されているところ,確定判決は,これらの型は犯人由来の型であるとして,資料(2)から(5)までの全てに犯人の血液が混入していたと認定しているのであるから,HLADQα型鑑定においても,資料(2)から(5)までの全てから犯人由来の型が検出されるはずである。
これに対して
HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,確定判決が説示するとおり,鑑定資料のDNA量や状態の不良,更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって,MCT118型鑑定の証明力減殺が,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえないから,それらの再評価を要することになるものではない。以上によれば,原々決定がこれらの鑑定の証明力を再評価しなかったことに誤りはない旨判示した原決定の判断は正当である。
技術的なことは全く分かりませんが、他の証拠でも十分有罪な気がします。
裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之
裁判官山口 厚
裁判官 深山卓也
2人殺して死刑です。妥当だと思います。
令和3年4月21日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 福岡高等裁判所
新証拠による旧証拠の証明力減殺が,他の旧証拠の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえず,それらの再評価を要することになるものではないとされた事例
いわゆる飯塚事件の事のようです。
小学校に登校中のⅤ1(当時7歳)及びV2(当時7歳)を認め,両名が未成年者であることを知りながら,自己の運転する普通乗用自動車(以下「事件本人車」という。)に乗車させ,通学路外に連れ出して,未成年者である両名を略取又は誘拐し,同市内又はその周辺において,殺意をもって,両名の頸部を手で絞め付け圧迫し,両名をいずれも窒息により死亡させて殺害し,同県甘木市内の国道沿いの山中に,両名の死体を投げ捨てて遺棄したというものである。
ロリコン殺人です。被告は無罪を主張しました。
①S1らの目撃供述によれば,本件犯行に犯人が使用したと疑われる車両は,M1製の紺色ワゴンで,後輪がダブルタイヤであり,リアウインドウにフィルムが貼ってあるなどの特徴を有しており,犯人は被害者両名の失踪場所等に土地鑑を有する者であると推測されるところ,事件本人は前記車両と特徴を同じくする事件本人車を所有し,かつ,前記失踪場所等に土地鑑を有すること,②被害者両名の着衣から発 見され,被害者両名が犯人使用車両に乗せられた機会に付着したと認められる繊維片は,事件本人車と同型のWに使用されている座席シートの繊維片である可能性が高いこと,③事件本人車の後部座席シートからⅤ1と同じ血液型(ABO式。以下同じ。)であるz1型の血痕と人の尿痕が検出されているところ,被害者両名ともに殺害された時に生じたと認められる失禁と出血があり,事件本人が犯人であるとすれば,前記血痕及び尿痕の付着を合理的に説明できること,④警察庁科学警察研究所(以下「科警研」という。)が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定によれば,V2の遺体付近にあった木の枝に付着していた血痕並びに被害者両名の膣内容物及び膣周辺付着物の中に,犯人に由来すると認められる血痕ないし血液が混在しており,仮に犯人が1人であるとした場合には,その犯人の血液型はz2型,MCT118型はm1-m5型であり,いずれも事件本人の型と一致していること,⑤事件本人は,本件当時,亀頭包皮炎に罹患しており,外部からの刺激により亀頭から容易に出血する状態にあったから,事件本人が犯人であるとすれば,被害者両名の膣内容物等に犯人に由来すると認められる血液等が混在していたことを合理的に説明できること,⑥被害者両名が失踪した時間帯及び失踪場所は,事件本人が申立人を通勤先に事件本人車で送った後,事件本人方に帰る途中の時間帯及び通路に当たっていた可能性があり,他方で,事件本人にアリバイが成立しない 。
①は状況証拠にすらならないと思いますが、②以下は真っ黒ですね。
本件再審請求は,①のS1の目撃供述の信用性が否定され,また,新証拠である筑波大学社会医学系法医学教室本田克也教授の鑑定書等によれば,④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできない
④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできないから,以上の新証拠は確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせる。
完全に技術的な話になりました。
ア 旧証拠のうち,科警研が実施したHLADQα型鑑定並びに帝京大学法医学教室石山昱夫教授が実施したミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定は,本田教授の鑑定書等によって証明力が減殺された科警研のMCT118型鑑定と立証命題が有機的に関連しているのであるから,前記3つの鑑定についてそれらの証明力を再評価しなければならない。イ そこで,HLADQα型鑑定の証明力を再評価すると,Ⅴ1の膣内容物(資料(2)),同人の膣周辺付着物(資料(3)),V2の膣内容物(資料(4))及び同人の膣周辺付着物(資料(5))から,科警研の血液型鑑定でz2型が検出され,MCT118型鑑定でm1型及びm5型が検出されているところ,確定判決は,これらの型は犯人由来の型であるとして,資料(2)から(5)までの全てに犯人の血液が混入していたと認定しているのであるから,HLADQα型鑑定においても,資料(2)から(5)までの全てから犯人由来の型が検出されるはずである。
これに対して
HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,確定判決が説示するとおり,鑑定資料のDNA量や状態の不良,更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって,MCT118型鑑定の証明力減殺が,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえないから,それらの再評価を要することになるものではない。以上によれば,原々決定がこれらの鑑定の証明力を再評価しなかったことに誤りはない旨判示した原決定の判断は正当である。
技術的なことは全く分かりませんが、他の証拠でも十分有罪な気がします。
裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之
裁判官山口 厚
裁判官 深山卓也
2人殺して死刑です。妥当だと思います。