令和2(あ)343 準強姦被告事件
令和3年5月12日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 福岡高等裁判所
原審が被告人質問を実施したが,被告人が黙秘し,他に事実の取調べは行われなかったという事案につき,第1審が無罪とした公訴事実を原審が認定して直ちに自ら有罪の判決をしても,刑訴法400条ただし書に違反しないとされた事例
2枚だけの判決文でした。事実認定を見ます。
1 本件公訴事実の要旨は,被告人は,平成29年2月5日,福岡市内の飲食店において,被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ,同人と性交をした。
本件の争点は,被害者が抗拒不能であったか,被告人にその認識があったかの2点であると確認した。
被告人に本件認識があったことには合理的な疑いが残るとして,被告人に無罪の言渡しをした。
ここだけを見ると、被告は被害者は自分がどういう状態か自覚していると主張していたようです。
2 原審は,公判期日前の打合せで,検察官及び弁護人に対し,被告人において,被害者が抗拒不能状態にないと誤信するような事情や,被害者が性交に同意したと誤信するような事情がなかったかについて質問する必要があるので,職権による被告人質問を実施する見込みであると述べて質問順序や質問時間を告げ,検察官及び弁護人はこれを異議なく了承した。第1回公判期日には,被告人が出頭し,職権による被告人質問が実施されたが,弁護人は質問を行わず,検察官及び裁判官の質問に対して,被告人は黙秘した。そして,原審は,他に事実の取調べを行わず,結審した。
何ですかそれ?!黙秘権は認められています。黙秘していた部分について裁判で触れられなかったと?
原判決は,訴訟記録及び第1審において取り調べた証拠に基づき,被告人は被害者が飲酒酩酊のため眠り込んでいる状態を直接見て,これに乗じて被害者と性交したから,本件認識があったことは明らかであり,第1審判決が,本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないとしたのは論理則,経験則に反し,同供述は,本件認識があったことに合理的な疑いを生じさせるものとはいえないとして,事実誤認により第1審判決を破棄し,被告人を有罪として懲役4年に処した。
弁護士の質問がない、黙秘していても、1審では他の証拠に基づいて有罪判決が出ました。
3 このような事情の下では,原審は,争点の核心部分について事実の取調べをしたということができ,その結果が第1審で取り調べた証拠以上に出なくとも,被告事件について判決をするのに熟していたといえるから,第1審が無罪とした公訴事実を認定して直ちに自ら有罪の判決をしても,刑訴法400条ただし書に違反しないというべきである。
物的証拠はじめほかの証拠が挙がっているのであれば、黙秘だろうが否認であろうが、有罪になるのは当然のことですよね。これが争点になったことの方が驚きです。
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也
令和3年5月12日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 福岡高等裁判所
原審が被告人質問を実施したが,被告人が黙秘し,他に事実の取調べは行われなかったという事案につき,第1審が無罪とした公訴事実を原審が認定して直ちに自ら有罪の判決をしても,刑訴法400条ただし書に違反しないとされた事例
2枚だけの判決文でした。事実認定を見ます。
1 本件公訴事実の要旨は,被告人は,平成29年2月5日,福岡市内の飲食店において,被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ,同人と性交をした。
本件の争点は,被害者が抗拒不能であったか,被告人にその認識があったかの2点であると確認した。
被告人に本件認識があったことには合理的な疑いが残るとして,被告人に無罪の言渡しをした。
ここだけを見ると、被告は被害者は自分がどういう状態か自覚していると主張していたようです。
2 原審は,公判期日前の打合せで,検察官及び弁護人に対し,被告人において,被害者が抗拒不能状態にないと誤信するような事情や,被害者が性交に同意したと誤信するような事情がなかったかについて質問する必要があるので,職権による被告人質問を実施する見込みであると述べて質問順序や質問時間を告げ,検察官及び弁護人はこれを異議なく了承した。第1回公判期日には,被告人が出頭し,職権による被告人質問が実施されたが,弁護人は質問を行わず,検察官及び裁判官の質問に対して,被告人は黙秘した。そして,原審は,他に事実の取調べを行わず,結審した。
何ですかそれ?!黙秘権は認められています。黙秘していた部分について裁判で触れられなかったと?
原判決は,訴訟記録及び第1審において取り調べた証拠に基づき,被告人は被害者が飲酒酩酊のため眠り込んでいる状態を直接見て,これに乗じて被害者と性交したから,本件認識があったことは明らかであり,第1審判決が,本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないとしたのは論理則,経験則に反し,同供述は,本件認識があったことに合理的な疑いを生じさせるものとはいえないとして,事実誤認により第1審判決を破棄し,被告人を有罪として懲役4年に処した。
弁護士の質問がない、黙秘していても、1審では他の証拠に基づいて有罪判決が出ました。
3 このような事情の下では,原審は,争点の核心部分について事実の取調べをしたということができ,その結果が第1審で取り調べた証拠以上に出なくとも,被告事件について判決をするのに熟していたといえるから,第1審が無罪とした公訴事実を認定して直ちに自ら有罪の判決をしても,刑訴法400条ただし書に違反しないというべきである。
物的証拠はじめほかの証拠が挙がっているのであれば、黙秘だろうが否認であろうが、有罪になるのは当然のことですよね。これが争点になったことの方が驚きです。
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也