最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

破産手続き前に下請けが売掛金の代わりに物件回収は不法行為ではない事例

2024-01-16 12:28:29 | 日記
令和3(受)2001  損害賠償請求事件
令和5年10月23日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

マンションの建築工事の注文者から上記マンションの敷地を譲り受けた行為が、自ら上記マンションを分譲販売する方法によって請負代金債権を回収するという請負人の利益を侵害するものとして上記債権を違法に侵害する行為に当たらないとされた事例

報道がないようなので、確認していきます。

1 本件は、株式会社マーベラスからマンションの建築工事を請け負った被上告人が、上告人エー・アール・センチュリー有限会社においてマーベラスから上記マンションの敷地を譲り受けた行為が被上告人のマーベラスに対する請負代金債権及び上記マンションの所有権を違法に侵害する行為に当たると主張

悪文ですね。いかにも司法関係者らしいアホな文章です。
被上告人Aはマーベラスからマンションの建築工事を請け負った。
上告人エー・アール・センチュリー有限会社はAに土地を譲り渡した
Aが受け取ったのはマーベラスの所有権を侵害している
というもののようですけど、そもそもの所有者はどうなってるの?という疑問が出てきます。

(1)マーベラスは、松江市所在の4筆の土地にマンションを建築して分譲販売することを計画し、平成26年、本件敷地を合計6100万円で購入した上、平成27年6月、被上告人との間で、マーベラスを注文者、被上告人を請負人として、本件敷地にマンションを建築する旨の請負契約を締結した。
本件代金に係る債権は、10億1500万円とされ、その支払時期及び支払額は、契約後に5000万円、上棟時(平成28年6月末日)に1億5000万円、完了時(同年11月末日)に8億1500万円とされた。
(2)被上告人は、マーベラスから、本件代金のうち、平成27年8月までに5000万円の支払を受けたが、上棟時に支払われるべき1億5000万円の支払を受けることができなかった。・・・極度額を6000万円、債権の範囲を請負取引、債務者をマーベラス、根抵当権者を被上告人とする根抵当権の設定を受け、その旨の登記がされた。


工事代金が総額10億1500万円なのに10分の1しか払ってもらえまなかったわけです。抵当に入れた金額でも、6000万が上限て酷すぎますね。

(3)被上告人は、マーベラスから、本件代金について、平成29年2月15日までに遅延損害金を除いて合計6017万円余の支払を受けるにとどまった。・・・同月17日、本件マンションを自己の占有下に置き、マーベラスの関係者が本件マンションに立ち入ることを禁じた上、マーベラスに対して単独で本件マンションを分譲販売することを止めるように申し入れ、自ら本件マンションを分譲販売する方法によって本件債権の回収を図ることとした。被上告人が本件工事を中止した時点における本件工事の出来高は、本件工事全体の99%を超えていた。
(4)マーベラスは、Aに対し、本件マンションの引渡しを受けて引き続き分譲販売させてほしい旨要望したが、被上告人は、これに応じず、マーベラスについて破産手続開始の申立てをする旨の方針を決めた。


そりゃそうです。金額が大きいですからね。とは言えその後破産申請されたのは痛いです。

(5)上告人会社は、平成29年4月2日、マーベラスから本件敷地を譲り受けた(本件行為)。本件敷地について、マーベラスから上告人会社に対し、売買を原因とする所有権移転登記がされたが、Aは、マーベラスに本件敷地の対価を支払っていない。

動産は持って行ったもんがちですが、不動産はそうはいきません。

(6)被上告人は、平成29年4月18日、マーベラスについて破産手続開始の申立てをし、同年6月2日、上記申立てに基づき、破産手続開始の決定がされた。
(7)マーベラスの破産管財人は、平成29年9月、本件行為が破産法160条3項所定の行為に該当することを理由として、本件敷地について上告人会社に破産法による否認の登記手続を求める訴えを提起し、令和元年9月、上記破産管財人の請求を認容する旨の判決が確定した。


ただ破産手続き開始の前に行った手続きですよね。

最高裁は以下のように判断しました。

前記事実関係によれば、本件行為の当時、Aは、自ら本件マンションを分譲販売する方法によって本件債権の回収を図ることとしていたが、本件敷地についてはマーベラスが所有しており、また、Aにおいて、将来、本件敷地の所有権その他の敷地利用権を取得する見込みがあったという事情もうかがわれないから、Aが自ら本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売するためには、マーベラスの協力を得る必要があった。しかるに、マーベラスは、被上告人の意向とは異なり、Aから本件マンションの引渡しを受けて自らこれを分譲販売することを要望していたというのであるから、Aにおいてマーベラスから上記の協力を得ることは困難な状況にあったというべきである。

まあ潰すには嫌だ、買掛金は払わないとなれば従業員を守るためにAのやったことは当然ですね。

結論
本件行為は、上記利益を侵害するものとして本件債権を違法に侵害する行為に当たるということはできない。

裁判官岡正晶の反対意見
原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れないとの多数意見に賛同するものである。しかし、被上告人の上告人らに対する請求は、いずれも理由がないことが明らかであるとして、第1審判決中上告人らに関する部分を取り消し、上記請求をいずれも棄却するとの多数意見には賛同することができない。

結果は一緒だけど、出すべき判決文が違う、要するに使う条文が違うというものです。

敷地利用権付き区分所有建物として分譲販売する利益を有しており、この利益は、民法709条にいう法律上保護される利益と評価することが相当と考える。

⑥マーベラスは、同年3月に本件マンションの引渡しを受けて自社で敷地利用権とともに一棟売りさせてほしい旨要望したが、被上告人は、これに応じず、遅くとも同月22日でにはマーベラスについて債権者破産を申し立てる方針を決めたというのであり、
⑦Aは、マーベラスにつき破産手続を開始させた場合、その破産管財人との協議により、被上告人が本件敷地の譲渡を受けるなどして、本件マンションの敷地利用権付き分譲販売が可能になることが相当程度見込まれたことがうかがわれる


そういう状態でマーベラスができる訳がないですよ。通常の新築マンションでも即日完売なんてものはなく、半年から1年、場合によっては2年以上、その間の人件費ですっ飛びますし、ヤバイ状況の会社から買う客なんかいません。

本件行為の当時、信義則上、被上告人は、マーベラスとの関係において、本件マンションの所有権に基づき本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売する利益を有していたというべきであり・・・被上告人の本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売する利益は、単なる主観的な期待にすぎないというものではなく、
民法709条にいう法律上保護される利益と評価することが相当なものというべきである


うーんそれはいいように解釈しすぎている気もしますけど、

Aの本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売するという利益を直接的かつ積極的に妨害する意図で、マーベラスと上告人らが共同して行ったものであり、その結果、Aは、本件行為がなかったとすれば、マーベラスの破産管財人との協議を経て本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売することができたと見込まれる時期から、本件行為が同破産管財人の否認権行使によって覆滅され、現実に本件マンションの敷地利用権付き分譲販売を開始するまでの間、分譲販売の時期を遅延させられた。・・・Aの本件マンションを敷地利用権付きで分譲販売する利益が民法709条にいう法律上保護される利益と評価できる場合には、マーベラスと上告人らが共同で行った本件行為は、故意に、被上告人の法律上保護される利益を侵害した民法719条の共同不法行為に当たるということができる。・・・原審はこの点につき審理を尽くしていない。更に審理を尽くさせるため、本件は原審に差し戻すのが相当と考える。

そうですかねぇ、これは違うでしょう。

裁判官堺徹の反対意見
不法行為による損害賠償責任成立の要件としての「権利又は法律上保護される利益」について現に本件合意が成立していること、本件行為が行われた以降に予想外の事態が発生したと認めるべき事情がうかがわれないこと等にも照らせば、破産手続を利用した債権者の債権回収方法としては通常と異なるといえるものの、被上告人が本件敷地の所有権を得て債権回収のために本件マンションを分譲販売する道筋を作ることは、「単なる主観的な期待」にはとどまらず、客観的にも期待できるものであり法的に保護するに値する利益であると考えられる

先ほどの岡正晶裁判官と真っ向から対立しますね。一方で
原審が適法に確定した事実関係によれば、上告人らは、本件行為において、登記原因を「売買」としているものの、真実は売買契約はないのであって、虚偽の登記の申請をし、登記簿原本(登記記録)に不実の記録をさせたというのであるから、刑罰法規に触れる可能性もある。

原文を読んでも虚偽云々の話は出てきません。これは事実認定されていないことから、この裁判官の感想にすぎないでしょう。

被上告人は、令和元年11月、本件マンションの販売価格を合計1億7281万円余も下げて分譲販売を開始したにもかかわらず、原審口頭弁論終結時点(令和3年6月15日)においても、わずか5戸を売り上げたにとどまっているというのである。このように、大幅に値下げしても販売が困難な状況にあることに照らしても、本件行為による本件マンションの価格落ちは著しく、原審が判示するように、損害額の立証が極めて困難であることから、民訴法248条を適用して損害額を認定すべきであると考えられる。

かなり努力しましたね。これが破産更生かほかの手段をやったところで、裁判中の物件なんぞ売れる訳がありません。5戸も売れたほうが奇跡です。
全体としても妥当な判断じゃないでしょうか。

第一小法廷
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 山口 厚
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶 今一つ
裁判官 堺 徹