あえて「普天間飛行場の5年以内の運用停止」に絞って、記す。
琉球新報の最新ニュースを読んで、あらためて暗澹とした。
仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に必要な埋め立てを承認したことを受け、基地問題を所管する県知事公室は、知事が17日に安倍晋三首相に求めた「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の実現に向け、来年1月以降に安倍政権に再度要請行動などを展開していく方向で検討に入り、「実現に向けて働き掛けを強めていく方針を固めた」というのだ。
報道では、県は安倍首相の発言を事実上の「約束」と捉えているとしている。なのに「実現に向けて」とは、どういうことだ。確かに、仲井真知事と安倍首相は彼らの最後の会談に於いて、「5年以内の運用停止」について「認識を共有している」とは言っているが、具体的には何も示していない。
きちんと「約束」できているのだったら、「会談内容などを精査した上で、基地対策課や地域安全政策課を中心に県としての見解をあらためてまとめる予定」という、その「精査」「見解をあらためてまとめる」「実現に向けて働き掛けを強めていく」の必要など、ないはずではないか。
「約束」とは相互にするものだ。対等な相手との「約束」なら、政府の側からも「果たさねばならない」と考えるべきである。明らかにおかしい。しかし、「そういうものだ」として報道されている。
安倍総理との間には「裏取引」さえできていない。知事は普天間の「5年以内の運用停止」について「安倍晋三首相の確約を得ている」としていたが、ただの口約束としか思えない。何の担保も確証もない。
仲井真知事は、辺野古移設について「時間がかかり困難だ」とし、「普天間を5年以内に運用停止」するには「県外移設しかない」としてきたはずだ。その選挙のさいから示してきた「公約」を、「破っていない」とし、本当に普天間基地の「5年以内の運用停止」が実現したとしよう。つまり、その場合、五年以内に「どこかに移し、普天間基地がなくなる」という結果が約束されているわけだ。
だが、今からどこかに新基地が建設されたとして、とくにそれが海を埋め立てて住民が反対しているなら、その基地は五年以内に完成するはずがない。つまり、五年以内に、国内か海外どこかの基地に、普天間基地の機能が移るというわけだ。
仲井真知事と安倍首相の「約束」がそうだとして(その移転先が了承するかどうかそれが正しいことかどうかの問題はさておき)、そんなことが可能なら、そのままそこに普天間基地の機能を置き続ければいいわけであって、辺野古に新たな基地を作る必要はない、ということになる。
どこをどう見ても、「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の「5年以内」が、「辺野古に新基地が完成してから5年以内」とは読めない以上、そう考えるしかない。
つまり、「新たな基地を作ることなく、普天間基地の閉鎖は可能である」ということだ。ならば、はじめからそうすればよかっただけのことだ。
「普天間飛行場の5年以内の運用停止」が「承認」の「条件付け」でもなく、リンクもしていないのであったら、そう考えるしかない。子どもにもわかる理屈だ。
知事のいう「県外移設の公約と、辺野古移設は併存する」という理屈が通るなら、辺野古に対しては、ただ「沖縄県内に高機能の新基地を作ることを認めた」というだけのことになる。
そのことを「約束」して、沖縄は何を得られるのか。「カネと引き替えに」という表現も散見されるが、空港や大学の費用も盛り込んだ振興策関連予算は「大盤振る舞い」などでない。
仲井真知事は埋め立て「承認」の理由として「現段階で取り得る環境保全措置が講じられ(公有水面埋立法の)基準に適合している」と言ったが、専門家や有識者で構成される環境監視等委員会(仮称)を設置することも、「認めさせるため」の処置であることが明白な以上、実効性は期待できないし、現段階でアセスの結論を覆す根拠はどこにも示されてない。
知事は会見で「普天間の現状を見ろ」と何度もすごんだが、名護市民に対しては何も言わない。名護も沖縄県なのにだ。
名護市の稲嶺市長は、知事承認後の会見で「こういう形になるとは、夢にも思わなかった。辺野古に(新基地を)造ることは、絶対に認めるわけにはいかない」「はっきりと名護の民意は(容認とは)違うんだと示すことが、やるべきこと」と言った。
自衛隊までも動員した政府による2004年の辺野古沖のボーリング調査では、名護の市民が体を張って止めた。
政府が今年、急いで「特別秘密保護法」を決議し、「刑事特別法」を成立させたのは、そうした「困難」を取り除くためである。安倍・仲井真会談を受けて政府は、「辺野古での普天間基地代替施設建設に対する妨害を排除するため」に、米軍施設・区域への侵入を禁じる「刑事特別法」を適用する方針を固めたとしている。建設場所のキャンプ・シュワブ沿岸部は「立ち入り制限海域」であり、同法の適用を可能とし、海上保安庁と沖縄県警を積極投入して、妨害を厳正に取り締まると宣言したわけだ。
シュワブ沿岸部に2本の滑走路をV字形に建設する計画に変わったのは、それまでの一本案の沖合でのボーリング調査への会場での妨害の激しさを考慮した結果であるとされている。米軍の排他的使用のため常時制限されるシュワブ周辺海域から作業を進めていくと、海域に侵入した時点で刑事特別法の適用で即座に検挙できる。「威力業務妨害」を持ち出すよりも、「立ち入り」だけで取り締まれる「刑事特別法」の方が都合がいいということなのだ。
「刑事特別法」については今年9月、普天間飛行場への「無許可侵入」の適用例がある。政府は沖縄県警に道路交通法の適用で積極的に摘発させる方針だともいう。これが広げられていくと、高江でのオスプレイパット建設への反対運動にも関わってくる。
知事の「約束」の「普天間飛行場の5年以内の運用停止」に向かう部分は、これまで通り裏切られる可能性が高い。だが「沖縄県民を取り締まる」ことに向けた「承認」は、既に一人歩きを始めている。
「約束」は空疎であるにも関わらず、「承認」は逃れられない既成事実として存在する。
琉球新報の最新ニュースを読んで、あらためて暗澹とした。
仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に必要な埋め立てを承認したことを受け、基地問題を所管する県知事公室は、知事が17日に安倍晋三首相に求めた「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の実現に向け、来年1月以降に安倍政権に再度要請行動などを展開していく方向で検討に入り、「実現に向けて働き掛けを強めていく方針を固めた」というのだ。
報道では、県は安倍首相の発言を事実上の「約束」と捉えているとしている。なのに「実現に向けて」とは、どういうことだ。確かに、仲井真知事と安倍首相は彼らの最後の会談に於いて、「5年以内の運用停止」について「認識を共有している」とは言っているが、具体的には何も示していない。
きちんと「約束」できているのだったら、「会談内容などを精査した上で、基地対策課や地域安全政策課を中心に県としての見解をあらためてまとめる予定」という、その「精査」「見解をあらためてまとめる」「実現に向けて働き掛けを強めていく」の必要など、ないはずではないか。
「約束」とは相互にするものだ。対等な相手との「約束」なら、政府の側からも「果たさねばならない」と考えるべきである。明らかにおかしい。しかし、「そういうものだ」として報道されている。
安倍総理との間には「裏取引」さえできていない。知事は普天間の「5年以内の運用停止」について「安倍晋三首相の確約を得ている」としていたが、ただの口約束としか思えない。何の担保も確証もない。
仲井真知事は、辺野古移設について「時間がかかり困難だ」とし、「普天間を5年以内に運用停止」するには「県外移設しかない」としてきたはずだ。その選挙のさいから示してきた「公約」を、「破っていない」とし、本当に普天間基地の「5年以内の運用停止」が実現したとしよう。つまり、その場合、五年以内に「どこかに移し、普天間基地がなくなる」という結果が約束されているわけだ。
だが、今からどこかに新基地が建設されたとして、とくにそれが海を埋め立てて住民が反対しているなら、その基地は五年以内に完成するはずがない。つまり、五年以内に、国内か海外どこかの基地に、普天間基地の機能が移るというわけだ。
仲井真知事と安倍首相の「約束」がそうだとして(その移転先が了承するかどうかそれが正しいことかどうかの問題はさておき)、そんなことが可能なら、そのままそこに普天間基地の機能を置き続ければいいわけであって、辺野古に新たな基地を作る必要はない、ということになる。
どこをどう見ても、「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の「5年以内」が、「辺野古に新基地が完成してから5年以内」とは読めない以上、そう考えるしかない。
つまり、「新たな基地を作ることなく、普天間基地の閉鎖は可能である」ということだ。ならば、はじめからそうすればよかっただけのことだ。
「普天間飛行場の5年以内の運用停止」が「承認」の「条件付け」でもなく、リンクもしていないのであったら、そう考えるしかない。子どもにもわかる理屈だ。
知事のいう「県外移設の公約と、辺野古移設は併存する」という理屈が通るなら、辺野古に対しては、ただ「沖縄県内に高機能の新基地を作ることを認めた」というだけのことになる。
そのことを「約束」して、沖縄は何を得られるのか。「カネと引き替えに」という表現も散見されるが、空港や大学の費用も盛り込んだ振興策関連予算は「大盤振る舞い」などでない。
仲井真知事は埋め立て「承認」の理由として「現段階で取り得る環境保全措置が講じられ(公有水面埋立法の)基準に適合している」と言ったが、専門家や有識者で構成される環境監視等委員会(仮称)を設置することも、「認めさせるため」の処置であることが明白な以上、実効性は期待できないし、現段階でアセスの結論を覆す根拠はどこにも示されてない。
知事は会見で「普天間の現状を見ろ」と何度もすごんだが、名護市民に対しては何も言わない。名護も沖縄県なのにだ。
名護市の稲嶺市長は、知事承認後の会見で「こういう形になるとは、夢にも思わなかった。辺野古に(新基地を)造ることは、絶対に認めるわけにはいかない」「はっきりと名護の民意は(容認とは)違うんだと示すことが、やるべきこと」と言った。
自衛隊までも動員した政府による2004年の辺野古沖のボーリング調査では、名護の市民が体を張って止めた。
政府が今年、急いで「特別秘密保護法」を決議し、「刑事特別法」を成立させたのは、そうした「困難」を取り除くためである。安倍・仲井真会談を受けて政府は、「辺野古での普天間基地代替施設建設に対する妨害を排除するため」に、米軍施設・区域への侵入を禁じる「刑事特別法」を適用する方針を固めたとしている。建設場所のキャンプ・シュワブ沿岸部は「立ち入り制限海域」であり、同法の適用を可能とし、海上保安庁と沖縄県警を積極投入して、妨害を厳正に取り締まると宣言したわけだ。
シュワブ沿岸部に2本の滑走路をV字形に建設する計画に変わったのは、それまでの一本案の沖合でのボーリング調査への会場での妨害の激しさを考慮した結果であるとされている。米軍の排他的使用のため常時制限されるシュワブ周辺海域から作業を進めていくと、海域に侵入した時点で刑事特別法の適用で即座に検挙できる。「威力業務妨害」を持ち出すよりも、「立ち入り」だけで取り締まれる「刑事特別法」の方が都合がいいということなのだ。
「刑事特別法」については今年9月、普天間飛行場への「無許可侵入」の適用例がある。政府は沖縄県警に道路交通法の適用で積極的に摘発させる方針だともいう。これが広げられていくと、高江でのオスプレイパット建設への反対運動にも関わってくる。
知事の「約束」の「普天間飛行場の5年以内の運用停止」に向かう部分は、これまで通り裏切られる可能性が高い。だが「沖縄県民を取り締まる」ことに向けた「承認」は、既に一人歩きを始めている。
「約束」は空疎であるにも関わらず、「承認」は逃れられない既成事実として存在する。