「滅びの笛」 西村寿行 光文社カッパ・ノベルズ 夜叉神峠(山梨県)を登っていた男女のハイカーが人間の白骨死体を発見した。その死体は鼠に喰われたものと推論された。農林省の右川竜造博士の話では、70年に一度というクマザサがいっせいに開花し、鼠が異常繁殖の兆候をみせているという。環境庁の沖田克義はその対策を上司に迫るが、一蹴された。その間にも鼠の群れは東方へと移動を続け、つぎつぎの犠牲者が出て、 . . . 本文を読む
「三島屋変調百物語七之続 魂手形」 宮部みゆき 角川書店 「火焔太鼓」語り手は若い勤番武士。国許では、火の見櫓に小さな盥ほどの太鼓がぶら下げてある。その太鼓を火事場に持ち出せば、どんな火事も収まってしまうと言う。太鼓は一種の神器だったが、大きな秘密があった。ある時、その太鼓が損なわれ、大変な事が起きる。「一途の念」三島屋の富次郎が気に入って通う、団子屋の屋台。営むのは16歳の娘、おみよだったが . . . 本文を読む
「ヨルガオ殺人事件」 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫 上・下巻 MOONFLOWER MURDERS 山田蘭・訳『カササギ殺人事件』から2年。クレタ島でホテルを経営する元編集者のわたしを、英国から裕福な夫妻が訪ねてくる。彼らが所有するホテルで8年前に起きた殺人事件の真相をある本で見つけた──そう連絡してきた直後に娘が失踪したというのだ。その本とは名探偵〈アティカス・ピュント〉シ . . . 本文を読む
「母性」 湊かなえ 新潮文庫 女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母 . . . 本文を読む
「塞王の楯」 今村翔吾 織田信長に攻められ陥落した一乗谷。父母と妹と暮らしていた匡介(きょうすけ)は、飛田源斎に助けられ近江に行く。源斎は近江の石垣職人集団、穴太衆(あのうしゅう)の飛田屋の頭で、匡介も石積みを学び跡取りに指名されるまでになる。匡介には石の声が聞こえ、適格に石を使って行くことが出来た。近江には技能を売りにする者が多く、穴太衆の他に、諜報や工作を請け負う甲賀衆、鉄砲を生産する国友 . . . 本文を読む
「流砂」 ヘニング・マンケル 東京創元社 KVICKSAND 柳沢由実子・訳2014年1月8日。ヘニング・マンケルは深刻ながんと診断される。かなり進行したがんで、転移も見られる。マンケルは延命治療を受けながら、6か月、このエッセイを執筆する。「いままで生きてきた自分と、いま生きている自分。私の命、私の人生」書くことのよって気持ちを落ち着けていたのだろうか。書かれている事はどれも興味深く . . . 本文を読む
「忘れられた巨人」 カズオ・イシグロ 早川書房 The Buried Giant 土屋政雄・訳アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士……さまざまな人々に出会いながら、雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとは――。 失われた記憶 . . . 本文を読む
「真夜中の密室」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 THE MIDNIGHT LOCK 池田真紀子・訳〈ロックスミス〉と名乗る男が夜のニューヨークに跳梁していた。男は厳重に鍵のかかった部屋に侵入し、住人に危害を加えることもなく、破った新聞紙に書いたメッセージを残して去った。犯人はいかにして短時間で錠を破ったのか。犯行は無差別なのか、それとも被害者を結ぶ線があるのか。そして何より、この . . . 本文を読む
「裏切り」 シャルロッテ・リンク 創元推理文庫 上・下巻 DIE BETROGENE 浅井晶子・訳スコットランド・ヤードの女性刑事ケイト・リンヴィルが休暇を取り、生家のあるヨークシャーに戻ってきたのは、父親でヨークシャー警察元警部・リチャードが何者かに自宅で惨殺されたためだった。伝説的な名警部だった彼は、刑務所送りにした人間も数知れず、彼らの復讐の手にかかったのだろうというのが地元警 . . . 本文を読む
「ファイナル・ツイスト」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 THE FINAL TWIST 池田真紀子・訳流浪の名探偵コルター・ショウは父の秘密を探っていた。大学教授だった父は、民間諜報企業ブラックブリッジが政界をもとりこんで進めている〈都市部活用構想〉なるプロジェクトを調査するうちに不可解な事故死を遂げた。父が遺した手がガリを追うコルターは、ブラックブリッジの秘密を追う者が次々に変死 . . . 本文を読む