しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「狐花 葉不見冥府路行」 京極夏彦

2025年01月17日 | 読書
「狐花 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)」 京極夏彦  角川書店   

作事奉行上月監物の1人娘の雪乃は墓所で見かけた、身が凍るばかりに美しい男に執着していた。
その者は淡い薄色の地に鮮やかな彼岸花が染め付けられていた。
お付きの女中、お葉と居る時に2度見るが、2度目の時お葉は指さして叫ぶなり倒れてしまう。
それ以来、お葉は憑りつかれたように伏せってしまっていた。
雪乃が女中のお松と出掛け3度目にその男を見かけた日、上月監物の屋敷に2人の男が呼ばれていた。
1人は江戸1番の材木問屋、近江屋源兵衛、もう1人は口入屋の辰巳屋棠蔵。
この2人と上月監物と御用人の的場佐平次の4人は、4人しか知らぬ忌まわしい秘密があった。
お葉が病んだ事と、そのことが何か繋がりがあるかも知れないと監物が言う。
なぜなら、お葉が「自分はもう死ぬ、その前に近江屋の登紀と辰巳屋の実祢に会いたい」と言っていると。
登紀と実祢はそれぞれの娘だったが、お互いの娘の繋がりもお葉との繋がりも一切知らなかった。
不審に思いながらも、3人をひっそりと会わせる。
3人は、1人の男を巡って知り合っていた。
それが彼岸花の柄の着物の男、萩之介だった。
お葉が萩之介を見たと聞いて2人は動揺し怒る。
なぜなら萩之介は3人で殺したからだった。






死人花、墓花、彼岸花、蛇花、幽霊花、火事花、地獄花、捨子花、狐花。
各章のタイトルについているのがすべて同じ花を指す。
自分は彼岸花が馴染みだが、曼殊沙華が一般的なのだろうか。
知らない呼び方もあったので、調べたらなんと1番別名のある花で、もっと色々あった。
ヒガンバナ科なので彼岸花が正式な呼び方なのだ。
物語はその彼岸花の柄の着物を着た萩之介が幽霊なのか、実在なのか。
自分たちで殺したと言う娘が3人。
殺したはずなのに、もしかしたら誰かが嘘を付いて助けたのかも知れない。
そんなお互いを疑いあう気持が、読んでい怖さがジワジワと伝わって来る。
人殺しの娘たちも怖いけれど、それ以上に怖い事をしている父親たちという仄めかしがある。
怖い話だが、真実を知るまで止められないと言う面白さ。
“憑き物落とし”として登場する武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋は、幽霊はその人が見る物で実在はしないと言う。
中禪寺洲齋は“京極堂”の中禅寺秋彦の曽祖父にあたる。
その中禪寺が探偵役になり、過去にあった出来事も明らかになる。
複雑に入り組んだ人間関係で、中禪寺洲齋の過去も分かると言う。
そんな都合良くと言うこともあるが、歌舞伎の舞台の為に書き下ろされたお話なので、こんな不思議があっても大丈夫かとも思える。
しかし仕掛けに関しては、それはちょっと無理なのではないかという事も。
1歩間違えたら全てが駄目になってしまうだろうに。
歌舞伎、見たかった。
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