散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

ベルギー最古の街

2006-09-10 22:54:43 | 移動記録


相棒が一週間ほど休暇をとったというので、ちょっとベルギーまで脚を伸ばしてみることにした。
本当は仕事場引越しのカオスをもう見たくないという気持ちもあったかもしれない。
兎に角、朝日はいかにも気持ちよく、たっぷりの朝食を済ませ、いざ中世へ。

ところが30分ほど走ると前方に怪しい雲が見え隠れしているのだ。
どんどん霧が厚くなる。
濃い霧の中に風景が色味を失ってゆく。
霧の粒は少し重たくなって窓ガラスが水滴で埋まって行く。
あ~あ。
旅行気分も湿気にやられてしんなり茹ですぎのホウレン草のようになってしまうじゃないか。

とは言え、美術館巡りだけでも充分だし、ベルギーには美味しいチョコレートもあるしね。
気を取り直して鼻歌を歌っていると、間もなく空の色が少しずつ明るくなってきて、なんとお天道様のお出ましだ。

 そしてこの青空。 

                                    
                              
ところで行き先はフランス国境に程近い、ワロン地方エノー州のTournaiという人口67,000人ほどの市である。
何故トゥルネーに向ったかといえば、そこがベルギー最古の街であり、芸術の街と栄えた歴史を持っている街だという話を読んだからだった。
この街は幾度もの略奪占領の歴史を経て1830年にベルギー王国成立でベルギー領と落ち着いた。
タベストリー生産で15~6世紀に華やかに賑わったであろう事はいまだに街並みからうかがえる。

 
                                     
1110年から1325年に建立された、ノートルダム寺院は世界遺産に登録されている。美しい5本の搭が目印である。世界遺産とはいえ、修復にはお金もかかるし、黒いプラスティックの椅子が並んでいるのは経費節減か? 
この街には世界遺産はもう一つあって、それは鐘楼である。72mの高みから街を見下ろして見るのも一興だが、去年ゲントで鐘楼にいい気になって昇り、降りる段になって体力不足に冷や汗をかくという経験を思い出して、外から眺めるだけに留まった。

カテドラルから少し南に下がると、贅沢な気持ちの良い、光の溢れる空間をもつ美術館がある。アールヌーヴォーの巨匠ヴィクトル・オルタの手になる美術館だ。パリのオルセー美術館の印象と似ている。
歩き回って疲れた脚を心持引きずりながらも展示を一つ一つ見てまわる。筋肉痛はもう避けられない。カメラと財布しか入っていない鞄でさえ、私にはもう重さが倍になっている。

ロベール・カンパン、ファン・デル・ウェイデン、ゴッサール、ブリューゲル、スネイデル、ルーベンス、ヨルダーンス、ワットーといった17~18世紀の大画家、マネ、モネ、スーラ、ゴッホなどの印象派その他が展示されていて、こんなに歩き疲れていなければ、優雅な気分にしばらく浸れそうなものだが、何しろこの数日アチコチ歩き回っているのだ。
疲れが溜まっている。神経が足裏や脚のつま先にどうしても集中してしまうのがなんとも悔しい、しかしそこを何とかぐっと耐えて目の前にあるブリューゲルに集中の努力を試みる。やっぱり素晴らしいね。

外に出て空を仰げば、時折雲がぐんぐんと湧いてきて空模様には退屈する事が無い。
青空、太陽歓迎ではあるけれど、暗い雲の塊が教会の搭にひっかかったり、覆いかぶさったりするのはむしろ抜ける青空よりもこの街並みには良く似合う。

日が暮れて冷たい風が吹き始めると、そろそろ夕飯の時間が近い。
目をつけていた感じの良い小さなレストランが残念にも休業で、仕方なく隣の店に流れて晩飯にありついた。
気のよさそうな老夫婦が営んでいる店で、ムール貝とポテトの看板も出している。他に取り立てて目当てもないのでプロヴァンス風トマト味と白ワイン蒸しとを注文してみる。
ムール貝のシーズンは9月から3月なので、これからが楽しみだな。
    腹ごなしに夜の街角を眺めながらあてなく散歩するのもなかなか良い。薄闇の中では中世の夢に踏み込むのも容易だ。

ベルギーの古い街はいつも街中が石畳の道である。車の騒音はかなりなものだ。
ホテルの窓は直接車道に面しているわけでもないのに、なかなか賑やかで、夜中もかなりの通行量なのだ。
ガガガガゴゴゴゴゴと車が通り過ぎる音を数えているうちに眠りについた。

                                    
ちなみに、街の人が薦めるケーキ屋は流石に客も多く、ショウケース沿いの行列に並びながら、脇に並ぶ美しいケーキを眺めて検討しているうちに順番が来る仕掛けだ。
どれも美味しいケーキだったので満足だ。

中世への散歩はまだ続く。。。

中世散歩Ⅰ
中世散歩II
中世散歩III