私の大好きな建物のひとつ、いや一番好きな建物である、
象設計集団が設計した「名護市庁舎」のコンペの趣旨を偶然ネットで見つけました。
(かくれんぼ建築設計室のblog。かくれんぼ建築設計室の方、ありがとうございます)
これが、とても素晴らしいので、みなさんにも紹介します。
そして、象設計集団がこの趣旨に見事に応えている。
【目的と意義】
本競技の目的は、次のとおりである。
すなわち、沖縄の地域特性を体現し、かつ要求される諸機能を果たすことが出来るとともに、
市のシンボルとして良く市民に愛される市庁舎を建設するための基礎となる案、および敷地全体計画のすぐれた構想案を求めることにある。
また、本競技を公開にすることの意義は、「沖縄における建築とは何か」、「市庁舎はどうあるべきか」という問いかけに対して、
それを形として表現し、実体化しうる建築家とその案を広く求めることにある。
従って、すでに十分な実績を残している建築家はもとより、これから頭角を現すであろう気鋭の建築家で、
地域の建築について志を同じくする方々の積極的な提案を期待するものである。
【沖縄の地域特性と市庁舎建築】
沖縄は亜熱帯に属し、多くの島々と周辺海域によって成り立ち、日本でも特異な自然環境に置かれている地域である。
古来、人々はこの自然に生き、人と自然、人と人との長い関わりの中から独特の風土が形成され、
地域の個性的な感性と建築様式が生まれてきた。
しかし、現在の沖縄の建築は、このような歴史過程の結果として存在しているだろうか。
建築の型、合理性、美しさは受け継がれているだろうか。
ことは建築のみに尽きるのではない。
機械技術の革新を背景とした近年の産業主義は、速やかな伝達手段を媒介として、著しい社会変容をもたらし、
風土はすでに収奪の対象となるかあるいは歴史遺産として保護されるべきものとなった。
地域文化が破壊していくのも、理由のないことではない。
このような状況にあって、主催者が市庁舎を建設するにあたってまず求めることは、
沖縄の特異な自然条件とその風土を再考し、その上に立って沖縄を表現しうる建築家の構想力である。
市庁舎の建築にあたって、風土が問題にされる背景には、地域が自らの文化を見すえ、
それを中央文化との関係のなかで明確に位置づけてこなかったという問題があろう。
地域が中央に対決する視点を欠き、行政が国の末端機構としてのみ機能するような状況にあっては、
地域はその自立と自治を喪失し、文化もまた中央との格差のみで価値判断がなされることになるだろう。
しかし、地域に生きる市民は、すでにこのようなあり方に訣別を告げるべきだと考えている。
従って、主催者の期待している新しい市庁舎は、地域の人々が自ら確認し、
かつ自らを主張していくための活動の拠点となり、地域の自立と自治を支える拠点としての庁舎である。
主催者は、今回の競技において、沖縄の風土を確実に把え返し、地域の自治を建築のなかに表現し、
外にむかって「沖縄」を表明しうる建築をなしうる建築家とその案を求めるものである。