昨年の暮に広島県の呉で、人形作家おぐらとうこのアトリエで撮影した写真の続き。カメラはGFX50Sだが、使ったレンズはいずれも前世紀のRokkor 58mm f1.4とElmar90mm f2.8だ。絞りはほとんど開放付近を使い感度Autoで手持ち撮影。室内の光は家庭用のタングステン電球だったが、色を濁らせるためホワイトバランスはデイライトに固定し、フィルムシュミレーションはプロネガスタンダード。富士のデジカメの良いところは、このフィルムシュミレーションを選択出来るので後処理がとても楽。好きなフィルムシュミレーションは、プロネガスタンダードとクラシッククロームだ。以前、依頼撮影仕事で色を正確に出さないとダメな時はきっちりとホワイトバランスを取っていたが、今はそういう撮影を受けないので常にカメラの設定はデイライトに固定。RAW現像時に若干補正する時もあるが、あえて正確な色再現を求めてないので無視する時の方が多い。
フィルムで撮影していた頃の私はコダック派だったので、指定がない限りずっとコダックのフィルムを使っていた。当時、とある出版社の仕事では、富士のフィルムを支給され現像も指定の現像所を使うのが条件だった事もあったが、色がクリアできれいすぎて馴染めなかった時代が長かった。そして、上海に事務所を置いてからもデジカメに切替える前まで、ずっとコダックのフィルムを使い続けてきた。日本で仕事をしていた頃、私が一番好きなフィルムはエクタクローム64の70mmフィルムだった(中版だがパーフォレーションの穴がある)。このフィルムは120や4x5のエクタクローム64とはまったくの別物で、フィルムテストをしなくてもまったく色の偏りがなく一番安定していたフィルムだったが、切現出来ないのと対応出来る現像所が限られていた。
前世紀の事だが、オーストリアロケでアグファのリバーサルフィルム4x5とコダックのエクタクローム64の4x5を同じ現場で使い、現地で両方のフィルムをアグファ専用処理で現像した事があるが、アグファの色は恐ろしいくらいにアンバー色が強くて脳震盪を起こしそうになった事がある。そして、そのアグファの未現像フィルムを日本に持ち帰りコダックの純正処理E-6で現像しても現地現像より色抜けは良いが、やはりアンバー色が強かった。コダックのフィルムの色をノーマルとすると、富士フィルムの色は彩度が高くてやや派手でヌケが良く天気が悪い時などの悪条件でも色が濁らないので当時重宝された。そして、当時アグファのフィルムを使っている人は日本では皆無だったと記憶している。
人間の目の色の違いで同じ色を見ても見え方が違うと私は思っているが、今ではデジカメのホワイトバランスを取れば色が数値で見える時代なので世界共通の色に仕上がる。はたして、青い目の人達はその世界共通の色を見てどう思っているのかちょっと聞いてみたい。
☆Fuji GFX50S+Rokkor 58mm f1.4+Elmar90mm f2.8