■ 抱え込ませない、被害を拡大させない
ハラスメント対策研修の対象といえば、まず管理職を考える。それは外せないのだが、一般社員にも一般社員向けの研修が必要だ。
一般社員は、ハラスメント被害者となる割合が多い。某広告代理店の1年目の社員がパワハラもあり過労自殺した事件はご存じの方も多いだろう。若手社員は、経験不足から自分の限界がわからず、無理なことも抱え込んで自ら心身ともに追い込んでしまい、その結果、メンタルヘルス不調にいたることもある。職場でも自分の気持ちを表現したり、相談したりすることが大事だと教える。その行動を起こさせるためにも、そもそもハラスメントとは何か、どういう状態かをきちんと理解させる。相談窓口があることも周知する。もちろん、窓口設置だけではなく、上司や会社側が面談の機会をもち、引き出す工夫も実施して欲しい。
被害者ではなくても、被害を受けている場面を見たり、相談を受けたりした場合も、防止対策に協力する必要がある。ハラスメントが見過ごされれば、第2、第3と被害が広がっていく。一般社員一人ひとりの協力が欠かせない。労働施策総合推進法にも、従業員の責務として対策への協力が規定されている。
■ 思い違いをさせない
その一方、最近、なんでもかんでも「それパワハラですよ」と主張する者がいるという話をよく聞く。きちんと理解せず、誤ったパワハラ主張を続ければ、指示命令違反や逆パワハラになりかねない。思い違いをさせてはいけない。
組織の中で働くというのは、指示命令を受けながら業務に携わり、生産性をあげ、企業を発展させる、その義務がある。苦手なこと、プラスαのことや新しいことも担わなければならないことがあるので、多少の負荷はかかる。あたり前のことだが、この社会人・組織人教育という観点も含めて教えていかなければならないのが現代だ。
また、同僚間でもハラスメントは起きることも理解させなければいけない。無視や仲間外れなどで働きにくい職場を生み出しているのであれば、ハラスメントとして認定される可能性がある。
社員も人間なので好き嫌いの感情はある。しかし、嫌いという感情の赴くままに、例えば無視などの精神的な攻撃行為は、職場では許されない。職場は働く場であって、嫌いに対するストレスを発散する場ではない。したがって、嫌いと感じる相手にもどのようにコミュニケーションをとればよいかを身につけさせる必要がある。
さらに、一般社員でもハラスメントと認定されれば、懲戒処分を受け、信頼を損ねるなどのダメージを受けてしまいかねない。この点も理解させておかなければならない。