◆ 自動で働くプログラムと思考
私たちは日常のさまざまな場面で、無意識のうちに行動を起こしている。朝起きて、顔を洗い、服を着替える。朝食を食べて、歯磨きをし、通勤する。考えなくても、できるようにプログラムが自動的に働いている。それはそれでよいことがたくさんある。一つひとつの動作に考えを巡らせていては、動けないし、疲れてしまう。しかし、そればかりだと自分を見失ってしまいかねない。自動プログラムの状態でいろいろなストレスにさらされ、やるべきことが上手くできないと、ついネガティブな思考になってしまうことがある。マイナスの感情が大きくなるからだ。個人個人によってその特徴は異なるが、ネガティブ思考も自動で湧いてくるから厄介。ネガティブ思考は人間にとって必要なものだが、大き過ぎたり偏りが強すぎたりすると、自分で自分を苦しめたり、他人を傷つけたりすることになる。
◆ 自分とは別のものを感じる
そこで、自分を取り戻すために少し行動や意識を変えてみる。例えば、朝食で食べるヨーグルト。ヨーグルトそのものをじっくり眺め、香りをかぎ、スプーンで舌の上に運び滑らかさを感じながら喉から食道に流し込む。その一つひとつに意識を集中させる。自分の感覚を研ぎ澄まし最大限に活かす。それを繰り返すと次第に、その一瞬一瞬に新鮮な感覚がよみがえってきて、時にありがたいというか感謝の念がわいてくる。感謝の念がどう湧いてくるのかわからないが、本来もっている人間の感情なのかもしれない。
そうするとプログラムが自動に働いていたときとは少し違う自分になっていることが感じられる。周りのモノや他人、状況が自分と一体のものではなく、別であることがわかる。モノはモノ、他人は他人、自分は自分。自分以外との関係や距離がつかめ客観的なものの見方が少しできてくる。実際はどうなのか、事実は何か、自分はどう思っているのか、心地よいのか悪いのか、100 点満点で何点か。ネガティブな方向に自動的に働く思考のクセを止めてみるのだ。
朝のヨーグルトでなくても、何でも構わない。食材でなくても、呼吸でもいい。鼻から空気を吸って、肺に入る。肺で酸素を取り入れ、手足の末端まで血液で運ぶ。末端からは二酸化炭素を運び、肺で酸素と交換し、鼻から吐く。ミクロの単位で目視できるわけではないが、そうイメージして自分の活動、生命を感じる。
自分を取り戻し、ネガティブな思考を自動的に発動させないために、今起きていることに集中する時間をもってみてはどうだろうか。