読書日和

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「アキハバラ@DEEP」石田衣良

2008-10-25 21:51:41 | 小説
今回ご紹介するのは「アキハバラ@DEEP」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
「ここに12億円の小切手がある」
「世界最高のサーチエンジンを作ってほしい」

     :
これは盗難のみでなく、情報生命体の誘拐であり、著作権の盗用であり、輝かしい未来の強奪であった。
この戦いの記録はアキハバラ戦争として、クルークの聖典のひとつとなって残されている。
偉大なる父たちは、その瞬間ほんとうの意味で戦士として、目覚めたのである。
     :

社会からドロップアウトした5人のおたく青年と、コスプレ喫茶のアイドル。
彼らが裏秋葉原で出会ったとき、インターネットに革命を起こすeビジネスが生まれた。
そしてネットの覇権を握ろうとする悪の帝王に、おたくの誇りをかけた戦いを挑む!
TVドラマ、映画の原作としても話題の長編青春電脳小説。


-----感想-----
5人のおたく青年とコスプレ喫茶のアイドル、この6人はみな変わった特徴があります。
それぞれ悩みを抱えながら生きてきました。
そんな6人が、ある人を介して出会い、「アキハバラ@DEEP」という会社を作ります。
そしてこの6人がインターネットに革命を起こすような素晴らしいソフトを開発するのですが、このソフトは同時に波乱も呼び込んでしまいます。
インターネットに革命を起こすほどとなれば、その影響力は絶大。
世界中に広がっていくはずです。
当然そこには莫大な利益の可能性があります。
そして人間の醜い部分として、大抵の場合それを奪い取って自分のものにしようとする人が出てきます。
現実の世界では、中国が勝手に日本の商品を商標登録して、問題になったのが記憶に新しいです。
この小説でもそういったことが起きました。


その会社の名はデジタルキャピタル
パソコン関係の書籍販売などで成長してきた会社です。
関連会社が700社もあり、社員の総数も9000人を誇る巨大企業グループ。
このグループの王様こそが、ネットの覇権を握ろうとする悪の帝王なのです。
「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」という考え方をした男で、欲しい物は手段を選ばず手に入れようとします。
この悪の帝王のやり口はかなり悪質で、読んでいて憤りを感じました。
本当に手段を選ばない男で、金にものを言わせて平気で悪事を働きます。
気に入らない会社があれば無理やり買収したり、気にいらない人間がいれば暴行して脅しをかけたりと、まさに悪の帝王のような男です。
現実の世界にも、買収で大きくなったIT企業がいくつもあるので、ちょっと考えさせられました。
まさかこんな悪の帝王のような人はいないと、信じたいところですが。。。
「アキハバラ@DEEP」が作ったソフトがこの男に狙われてしまったために、物語は波乱の展開になっていきます。

この作品は全部で第十八章まであるのですが、私は第十一章「バンドウイルカの帰還」がとても良かったと思います
バンドウイルカが泳いでいるのは海ではなく、ネットの海です。
「アキハバラ@DEEP」の6人を巡り会わせた人にも関係のある話で、イルカが「帰還」したときは嬉しかったです
この小説の見せ場の一つだったと思います。

そして物語は熾烈な「アキハバラ戦争」につながっていきます。
聖夜に繰り広げられ、後に伝説にまでなるこの戦いは、「アキハバラ@DEEP」の6人にとって、絶対に負けられない自分たちの誇りをかけた戦いでもありました。
果たして悪の帝王が覇権を握るのを阻止出来るのか、ドキドキしながら読み進めていきました。
とても面白い作品なので、読んで良かったと思います


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