とてもさわやかな本を読みました。
今回ご紹介するのは「神去なあなあ日常」(著:三浦しをん)です。
-----内容-----
高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村(かむさりむら)。
林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。
先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。
しかも村には秘密があって……
林業にゆる~くかける青春!
-----感想-----
物語は主人公・平野勇気が神去村に住み始めて1年が経過したところから始まります。
横浜の高校に通っていた勇気は、卒業を迎えたその日、突然三重県の神去村に行くことになりました。
担任教師と母親で結託し、仕事に就くあてのなかった勇気を神去村で林業に従事させることにしたのです。
人手不足の林業には、林業に就業することを前提に国が助成金を出している「緑の雇用」制度というのがあり、どうやら勝手にそれに応募されていたようでした。
特にやりたいこともなく、適当にフリーターで食べていこうと思っていた勇気にとって、それはまさかの出来事でした。
半ば強引に神去村に送り込まれ新たな生活がスタートしました。
1年間のことを振り返る手記のような感じで、物語は進んでいきます。
今回は文章が砕けた感じになっていて「俺」の一人称でした。
「~だったんだ」や「~ちゃったりする」など、感情を直接文章にした感じの書き方は、三浦しをんさんの小説では初めて見ると思います。
主人公が高校を卒業したばかりの10代の青年なので、この書き方は合っていました。
作品ごとに題材も作風も変幻自在に変えられて、本当にすごい作家さんだと思います。
読み始める前は林業が題材で面白い小説が書けるのだろうか…と思ったのですが、読んでみるとそんな心配は杞憂に終わりました。
登場人物に明かるい人が多いこともあり、とても読みやすかったです。
砕けた感じの書き方が作品に明るさや若々しさを持たせてくれていたと思います。
舞台が山奥の村ということで、人と人との関わり合いも密接でした。
神去村の人たちはみんな顔見知りのような感じで、気軽に会話を交わします。
勇気がお世話になっている中村林業株式会社の社長・中村清一さんが村の中心的存在で、みんなからは親方さんと呼ばれています。
村で祭りがあるときなどにはみんなで親方さんの家に集合して、色々と話し合ったりします。
基本的にみんな宴会が好きなようです。
桜の花見をするときに、村中の人々が弁当を持ち寄って、みんなでおかずを交換し合ったりする場面がありました。
都会だとなかなかこうはいかないと思います。
人と人とのつながりが深く、みんなが仲良く触れ合えるというのは、実は幸せなことなのかも知れません。
反対に村特有の「よそ者排除主義」的な考え方をする人もいました。
村の行事に勇気を加えたくないようです。
こういった考え方は非常に古いですし、せっかく外から来てくれた人を排除してしまっては、村の衰退に拍車をかけてしまうと思います。
ただ全員が良い人ではなく、一部こういった人がいるのは実際の村の姿をリアルに描いていると思います。
途中からは勇気のことを認めてくれるようになりましたし、根っから意地悪な人でもなかったようです^^
また、今回は神秘的なことも起こりました。
神去山には「オオヤマヅミさん」という神様がいると信じられています。
この神様が時々少しだけ姿を現したりしました。
神がかり的なことが起こるのは、『白いへび眠る島』を思い起こさせるものがありました。
ただ今回は題名のとおり「なあなあな日常」がテーマであり、神がかり的なことは日常を彩るスパイスのような位置づけでした。
「なあなあ」は神去村の人々がよく使う言葉で、「ゆっくり行こう」や「まあ落ち着け」という意味を持っています。
そんなゆっくりとした日常の物語、とても面白かったです。
最近は人と話すときすっかり「私」を使うようになった私にとって、終始「俺」で通した勇気には若さを感じました。
私も10代の頃は「俺」を使っていましたが、いつの間にか大人の言葉使いになったのだなと思います。
そんなことをふと考えさせられる、さわやかな物語でした
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今回ご紹介するのは「神去なあなあ日常」(著:三浦しをん)です。
-----内容-----
高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村(かむさりむら)。
林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。
先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。
しかも村には秘密があって……
林業にゆる~くかける青春!
-----感想-----
物語は主人公・平野勇気が神去村に住み始めて1年が経過したところから始まります。
横浜の高校に通っていた勇気は、卒業を迎えたその日、突然三重県の神去村に行くことになりました。
担任教師と母親で結託し、仕事に就くあてのなかった勇気を神去村で林業に従事させることにしたのです。
人手不足の林業には、林業に就業することを前提に国が助成金を出している「緑の雇用」制度というのがあり、どうやら勝手にそれに応募されていたようでした。
特にやりたいこともなく、適当にフリーターで食べていこうと思っていた勇気にとって、それはまさかの出来事でした。
半ば強引に神去村に送り込まれ新たな生活がスタートしました。
1年間のことを振り返る手記のような感じで、物語は進んでいきます。
今回は文章が砕けた感じになっていて「俺」の一人称でした。
「~だったんだ」や「~ちゃったりする」など、感情を直接文章にした感じの書き方は、三浦しをんさんの小説では初めて見ると思います。
主人公が高校を卒業したばかりの10代の青年なので、この書き方は合っていました。
作品ごとに題材も作風も変幻自在に変えられて、本当にすごい作家さんだと思います。
読み始める前は林業が題材で面白い小説が書けるのだろうか…と思ったのですが、読んでみるとそんな心配は杞憂に終わりました。
登場人物に明かるい人が多いこともあり、とても読みやすかったです。
砕けた感じの書き方が作品に明るさや若々しさを持たせてくれていたと思います。
舞台が山奥の村ということで、人と人との関わり合いも密接でした。
神去村の人たちはみんな顔見知りのような感じで、気軽に会話を交わします。
勇気がお世話になっている中村林業株式会社の社長・中村清一さんが村の中心的存在で、みんなからは親方さんと呼ばれています。
村で祭りがあるときなどにはみんなで親方さんの家に集合して、色々と話し合ったりします。
基本的にみんな宴会が好きなようです。
桜の花見をするときに、村中の人々が弁当を持ち寄って、みんなでおかずを交換し合ったりする場面がありました。
都会だとなかなかこうはいかないと思います。
人と人とのつながりが深く、みんなが仲良く触れ合えるというのは、実は幸せなことなのかも知れません。
反対に村特有の「よそ者排除主義」的な考え方をする人もいました。
村の行事に勇気を加えたくないようです。
こういった考え方は非常に古いですし、せっかく外から来てくれた人を排除してしまっては、村の衰退に拍車をかけてしまうと思います。
ただ全員が良い人ではなく、一部こういった人がいるのは実際の村の姿をリアルに描いていると思います。
途中からは勇気のことを認めてくれるようになりましたし、根っから意地悪な人でもなかったようです^^
また、今回は神秘的なことも起こりました。
神去山には「オオヤマヅミさん」という神様がいると信じられています。
この神様が時々少しだけ姿を現したりしました。
神がかり的なことが起こるのは、『白いへび眠る島』を思い起こさせるものがありました。
ただ今回は題名のとおり「なあなあな日常」がテーマであり、神がかり的なことは日常を彩るスパイスのような位置づけでした。
「なあなあ」は神去村の人々がよく使う言葉で、「ゆっくり行こう」や「まあ落ち着け」という意味を持っています。
そんなゆっくりとした日常の物語、とても面白かったです。
最近は人と話すときすっかり「私」を使うようになった私にとって、終始「俺」で通した勇気には若さを感じました。
私も10代の頃は「俺」を使っていましたが、いつの間にか大人の言葉使いになったのだなと思います。
そんなことをふと考えさせられる、さわやかな物語でした

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