読書日和

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「ニート」糸山秋子

2009-07-04 15:10:39 | 小説
今回ご紹介するのは「ニート」(著:糸山秋子)です。

-----内容-----
もちろん人に対してどうでもいいなんて言うのはとんでもなく失礼なことだけれど、どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった。(「ニート」より)
現代人の孤独と寂寥(せきりょう)、人間関係の揺らぎを描き出す傑作短編集。

-----感想-----
2004年ごろから聞くようになった「ニート」という言葉。
もともとは「教育を受けていず、雇用されておらず、職業訓練を受けていない」という意味のようです。
日本では「学校にも行かず、働く気もなく、引きこもっている人」という意味で捉えられることが多いかと思います。

この作品は短編集で、その中に「ニート」という話があります。
そこに出てくるニートの青年は食事は一週間に三食くらいしか食べられなく、一食は具の入っていないインスタントラーメンで、あとの二食は調味料だけで作るチャーハンという荒んだ生活をしていました。
全財産は三千円を切っていて、食事のない日は水だけ飲んでしのいでいるようです。
ずっと部屋に閉じこもり、インターネットのサイトの更新だけをしています。
そんなニートの青年を「キミ」と呼び、何かと手を貸すのが「私」。
「私」のほうもかつてはニートだったようですが、今では作家となって成功し、生活にもある程度余裕が出てきました。
「私」は「キミ」にお金を貸して、何とか荒んだ生活を改善させたりしようとします。
しかしそこにあるのは期待というより諦めのような感じでした。
お金も返ってくるとは思っていないようです。
この二人は付き合っているわけではないものの、何とも言えない微妙な空気がありました。
それは気まずさかなと思います。
「キミ」のほうも、お金をもらうのは躊躇していましたし。

一般にニートについて、否定的な意見を持つ人は多いと思います。
私的にもずっと引きこもっているのはどうかと思います。
ただこの作品の「キミ」は、怠けているというより虚無感に苛まれているように見えました。
何もする気が起きないのかも知れません。
「私」の存在は「キミ」にとって、なくてはならないというほどではないのかも知れませんが、お互いの虚しさを分かり合える存在ではあったようです。
そこが唯一の救いかなと思いました。


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